嫌いな色(クレア視点)
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
アタシには嫌いな色がある。それは空と海、アタシの片目を染める青だ。一番嫌いなのは暗い青だ。夜の海ほどじゃないが、どこかに闇を湛える海の色。その色は、ちょうどエミリオの目の色と同じだ。
以前はそれほどじゃあなかったんだが、中二病野郎のせいで一気に嫌いになってしまった。同時に人間も嫌いになった。特に、アイツと同じ中二病野郎が。
今のようになるまではちょっとでも青が視界に入ると気分が、人間のことを聞くと機嫌が悪くなっていた。青はともかく人間、というより中二病野郎への態度はあまり変わっていないかもしれない。
それはそうだ。一時でも皆との関係も歪ませたあの野郎を、アタシは絶対に許せない。もしも目の前に現れたら、アタシは怒りのあまり雷を放ってしまうかもしれない。アイツがアタシ達にしたことを考えると自業自得だから、誰も文句を言いやしないだろうけど。
……いや、二匹くらいはいるかもしれないな。そのうち一匹はされたことを考えると、一番文句からかけ離れているっていうのに。アイツは、エミリオは「優しすぎる」んだ。会った時からその優しさは変わっていない。むしろ「悪化」している気さえする。
病的なほど優しいシャワーズは、その優しさのせいで傷ついている。どうしてエミリオがそこまで優しいのか、原因はわからない。わからないから困っている。傷ついている。
いや、本当はわかっている。わかっていないのは恐らく過去を知らないイツキとエミリオだけだ。アイツがああなってしまった原因を考えると、やはりアタシが一番嫌いなのは青だ。それも、暗めの青が。
それをエミリオに、皆に伝えるつもりは全くない。言ったらエミリオを嫌っていると思われてしまう。アタシはあの色が嫌いなだけで、エミリオ自身が嫌いなわけじゃない。
「クレア」
背後でアタシを呼ぶ声がした。振り返ると、そこにはアタシの嫌いな色がある。
「何だ、エミリオじゃないか。一体どうしたんだい?」