空の聖域

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毎日ハロウィン企画:16日目のお話
 ある日のこと。ゴビットとゴルーグは、誰かの声に呼ばれた気がしました。なんだろうと考えていると、勝手にスイッチが入ったかのように、覚えのない道を歩き始めました。導かれるように歩いていくと、やがて崖の上にやってきました。ここから先へは行けそうにありませんが、魂は空の方へ二匹を進ませようとします。ゴルーグは空を飛ぶことが出来ますが、ゴビットには出来ません。それに、雲一つない晴れ渡った空には、ポケモンが飛んでいる様子もありません。一体どこへ行けばいいのだろう。二匹はウロウロと立ち往生してしまいました。

そのうち通り雨が来て、水が苦手な二匹は木の下で雨宿りをしました。雨が過ぎ去っていくと、空にはキラキラと輝く大きな虹がかかり、ちょうど崖のところが根本になっていました。もしかしてと、ゴルーグが足をつけると、虹は地面のようにがっしりと固く、両足を載せてもビクともしません。ゴビットと顔を見合わせて、虹の上を歩いていくのでした。

いくつもの雲を超えた先に、神殿らしき建物が、地面ごとむしりとられたかのように宙に浮いていました。ここに何かがあると直感した二匹は、古さびた神殿に入っていくのでした。

神殿はぐちゃぐちゃに荒れていて、祭壇も崩れ落ちていました。
不思議なことに、ゴビットはいつもそうしているかのように掃除を始め、ゴルーグも瓦礫を片付け始めました。もちろんこんなに汚いままでは忍びないと思う気持ちもありましたが、身体の方が先に動いたのでした。壁を磨いていると、雨乞いの儀式や戴冠式の様子が浮かび上がってきました。ここは元々どこかの民族の祭事を司る場所だったようです。
それならますます綺麗にしなくては。ゴビットは気合いを入れて、床や天井を掃除しました。ゴルーグは柱や穴を補修し、祭壇を直します。配置など知らないはずなのに、きっちりと揃えることが出来ました。

ピカピカのツヤツヤ……とまではいきませんが、出来るだけのことはやりました。祭壇に火をつけて一礼をすると、ぼんやりと声が聞こえてきます。
「ありがとう、友よ。我らが歴史から消えて幾千年が経ち、覚えるものもなくなった。もはやこの星にいることもさえも叶わない。最後にせめてこの場所だけは、綺麗な姿のまま行きたかった。呼び声に応えてくれて感謝する。友よ、どうか君たちは……幸せに……」

声が消えると同時に、二匹は虹の消えた崖の上に戻されていました。
ふと、空を見上げると、さっきまでいた神殿が空を登っていくのが見えました。名残惜しそうに欠片をこぼしながら、すうっと消えてしまいました。ゴルーグは落ちてきた欠片を両方の手で受け止めて、ゴビットはもう戻ることのない神殿を想って悲しむのでした。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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