おいしいおそなえもの

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毎日ハロウィン企画:18日目のお話
 ハロウィンも近くなり、ボクレーとオーロットは、畑でせっせと収穫をしていました。
魂を吸った文字通りのおばけかぼちゃは、触るとふにふに柔らかく、怖い心を取り込んで成った赤い実は、割ると金切り声を上げます。うんうん、今年も良い出来だ。荷車に載せたら、オーロットが力を込めて引っ張ります。木製の車輪がカラコロ音を立てて、洋館までの道を進んでいきます。

そろそろ洋館のある森へ入るというところで、目をぐるぐる回して倒れ込んでいるボクレーを見つけました。白い体に赤い葉をつけた、珍しい色違いの子です。洋館のボクレーがゆさゆさと揺さぶり起こすと、色違いのボクレーはうーんと目を覚ましました。どうしてこんなところで倒れていたのかを聞いてみると、毎年この時期においしいおそなえものをしに、ニンゲンがくるのだけれど、最近こなくなってしまったのだそう。今年もこないものだから、しびれを切らして探しに出たはいいものの、どこへ行けばいいのかわからず、お腹が空いて倒れてしまったのだとか。オーロットは荷車から赤い実を一つ取り出して、色違いのボクレーに差し出しました

色違いのボクレーは、しゃくしゃくしゃくしゃく無言で食べて、けぷっと一息つきました。その間にオーロットは考えていましたが、荒らすやつならともかく、この森へおそなえものをするようなニンゲンなど、見たことも聞いたこともありませんでした。

そこへ、ふわりふわりと甘い匂いが漂ってきました。色違いのボクレーは、これこれ、これだよと匂いのする方へひゅーっと飛んでいきました。気になったので、洋館のボクレーとオーロットは後をついていくことにしました。飛んで行った先は、ぽつんと建った一軒家。煙突から、もくもく煙が出ています。窓からこっそり中を覗いてみると、子供が数人、きゃっきゃと楽しそうにおかし作りをしていました。見るに、クッキーを焼いている様子。

あれあれ!すっごいおいしいんだよと、色違いのボクレーは興奮気味にいいました。でも、どうやって手に入れよう? ドアを開けて入ったらびっくりされてしまうし、子供達とも面識はありません。どうしたものかと悩んでいると、家の中にいた子供達が、色違いのボクレーの方を見て、驚いた様子で指差しています。オーロットたちは見つかってしまったので逃げようとすると、子供達は窓を開けて手を招きます。

「ほんとにいたんだ!うそじゃなかったんだ!」
と、子供達もはしゃいでいます。焼き立てのクッキーをお皿に乗せて、ボクレーたちに差し出します。
「ひいおばあちゃんがいってたよ、もりでまいごになったとき、しろいボクレーにたすけてもらったって!」
「だからまいとしおれいにいってたんだよ」

ニンゲンの言葉はわかりませんが、好意的なことは伝わってきます。白いボクレーはクッキーを手にとって、ムシャムシャと美味しそうに食べると、嬉しさのあまりくるりと宙で一回転するのでした。ぼくもぼくもと、洋館のボクレーも食べてみました。素朴な味は、遠い過去にあったようなあたたかさを感じさせます。オーロットも一口食べて、無言で頷きました。

お皿いっぱいの量を三匹でたいらげて、家を後にするのでした。白いボクレーは満足したようで、助けてくれてありがとうとお礼をいって、すうっと夕焼け空に消えていきました。

結局あの子はなんだったんだろう? 森に帰ったボクレーとオーロットが洋館への道を進んでいると、脇に細い道があることに気がつきました。入っていくと、コケで覆われた小さな小さな祠があって、ボロボロになったお皿が置いてありました。その横に寄り添うように、白い大木が赤い葉をつけて根を下ろしているのでした。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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