episode7━1 反転世界への入り口

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「よーし、全員揃ったな」

時間は午後十一時。ガイラルは全員を集め、テス砂漠への入り口に集合した。

「…では、これから遺跡前へと向かう。歩いて向かっても三十分といった所だ。そして、十二時になれば…遺跡が現れる」

オノノクスは前に出て、全員が準備をして後ろに付く。
そんな中、エムリットの言葉を思い出してしまう。

━━大切な存在を失った人ほど、辛い目に合う世界さ。

それはどういう意味なのか。得体の知れない不安が頭の中をぐるぐると駆け巡る。

「おう、どうしたルト?ビビったカ?」
「しゃんとして下さいよ?リーダー」

その様子を見られたのか、シャルとミリアンがからかってきた。何だかバカらしくなり、思わず笑った。

「はっ、そんな訳無いさ。…行こう。二人とも」
「おおよ!」
「はい!」

その様子に、ガイラルは笑う。

「…肝が据わったみてぇだな。…オノノクス!頼むぜ」
「任せろ。行くぞ!」

オノノクスは砂漠へと歩き出し、全員が動き出した。

………

夜の砂漠は、肌にまとわりつくような寒さだ。昼間あれほど暑かった気温が嘘のようだ。
ザクザクと、歩く音だけが永遠と続く。…思った以上になにもない。途中、オアシスを見掛けたくらいだ。

「…キリキザンよ、そっちのミラウェルはどーだ?調子良いかよ?」

静寂に耐えかねたのか、ガイラルがキリキザンに話し掛けた。

「ああ。…副支部長のオーダイルが新人から中堅まで幅広く面倒を見ているお陰で、全体的に戦力が上がっている。…だが少し、荒っぽい奴が多いのがたまに傷か」
「オーダイルは面倒見が良いからな。兄貴肌というか…付いていきたいと思わせるような魅力がある。故に他の兵士も、性格が自然とオーダイルに似てきたのかもな」

呆れたように話すキリキザンに、ガブリアスが目を細めて笑う。
…せっかくの機会だ。俺もこの人達から話を聞いてみたい。

「あの、皆さんはどうやって仲間になったのですか?神殺しの成り立ちを知りたいんです」

…神殺しの話は、本になるほど有名な話だ。だが、本に書いてある内容はメンバーと大まかな冒険の話だけ。詳しくはわからない。

「…ああ、そういやルト達は詳しく知らないか。…時間はある。ルカリオ!話してやれよ」
「え?俺かよ」

ガイラルはルカリオに話を振り、ルカリオは驚く。

「お前が始めた事みたいなもんじゃねーか?この話が物語なら、お前が主人公だぜ」
「買い被りだろ…。まぁ、良いけどよ」

ルカリオは観念したかのように、咳をしてから話を始めた。

「始めは…そうだな、俺や兄さんと家族が住んでた村が、アルセウスに滅ぼされた時から始まった」

ルカリオは何処か遠い目をしながら、話を続ける。

「村が滅ぼされる前から兄さんはレジスタンスをやっていたが…」
「…ルカリオを一人にしてはおけず、一度その時反神の支配者は解散した。なんとか助かったルカリオを俺は孤児の面倒を見ている村、カルダに預けた。そこでルカリオはバシャーモと会ったんだ」

ガイラルも話に混ざり、同じく遠い目をしていた。

「それから数年後…復讐を誓った俺は、バシャーモと共にカルダを出た。それから直ぐにディメイロの街で出会ったのが…」
「私ですね。いやはや、懐かしい」

サーナイトが笑う。この人達からすれば、遠い昔の話なんだろう。

「ディメイロかぁ、懐かしいぜ。…そこで、初めて神の支配者の幹部と戦ったよな。いやー、誰とだったっけな?」
「…わざとらしい奴め。私だろう?」

バシャーモのとぼけた態度に、オノノクスが反応した。…そうか、オノノクスさんが初めての相手だったのか…。

「兄さんが助けに入ったお陰でその場はなんとかなったけどな。…その次は…あー、ここだな」
「ドラゴス、だな。そこで、俺が加わった」

次はガブリアス。ドラゴスにてジャローダ…もといアーリアと戦ったと話をしていた。

「全く腹立つよね。僕は結構強くなってたのに、ガブリアスったら涼しい顔をして対応するんだもん」
「強くなってたのはお前だけではない。それと、涼しい顔をしてるのはいつものことだ。ポーカーフェイスは俺のトレードマークだからな」
「ええ~、表情が固いだけで喜怒哀楽はっきりしてるじゃん…」
「…まぁ、否定はしない」

楽しそうに話を続ける神殺し達に、思わず笑ってしまった。
敵同士だったのに、今はこんなにも仲良くなっている。巡り合わせとは不思議なものだ。

「…で、アイスか。有名な魔術師であったゾロアークを仲間に引き入れ、そして…ベルセルクと戦った。…はっきり言って、恐ろしかったぜ」

ルカリオは苦い顔をしていた。
…もし、今俺達がこちらを殺しに来ているベルセルクさんと戦ったらどうなるか。…恐ろし過ぎて考えるのをやめた。

「あのときはまだ本気は出していなかったがな。…サーナイトの潜在能力に驚いて、一瞬だけ本気になったが」
「あ、あはは…光栄です」

…話を聞くと、追い詰められたルカリオさん達を助ける為に、サーナイトさん一人でベルセルクと渡り合ったという。優しいだけじゃなく、とても心の強いポケモンなんだな。

「…まだまだあるぜ。お次は…━━━━」

………

昔話に熱が入ったせいか、目的地に着いた時には時間が十一時五十分になっていた。

「話をしすぎたな。ギリギリだ」
「面目無い…。いざ話をすると楽しくてな」

懐中時計を手に怪訝そうな顔をするオノノクスに、苦笑いを浮かべながらルカリオが謝る。

「いえ!私が聞いたから…」
「いいさ。昔話ってのも悪くない。…さて」

ルカリオは笑って流し、目の前の場所を見た。
本当に遺跡があるのか、と疑問を浮かべるほどなにもない所だった。だが…何か、変わった雰囲気がする。ただでさえ寒いというのに、ここは更に気温が低く感じた。
同じ事を思ったのか、キリキザンがオノノクスに聞いた。

「本当にここなのか?」
「ああ。…見付けたのは本当に偶々だったが…この異様な雰囲気。間違いない」

オノノクスは肯定する。

「…反転世界に行く前に一つ。提案がある」
「なんだ?オノノクス」
「お前達が反転世界に行っている間、私はここで待機する。万が一お前達が戻ってこれなかったら…ミラウェルにとっては大打撃だ。私だけでも残ったほうが良いだろう。それと…」

オノノクスは息を吸い、言った。

「…ディザスタの連中がここに来る可能性も考慮しておいた方が良い。もしやってきたら、私が殲滅する」
「一人でかよ?お前の強さは良く分かるが、危険だろ」

とガイラルが反応する。オノノクスはその言葉に長考している時に、バシャーモが手を上げた。

「じゃ、俺も残るぜ。ディザスタと戦いになったとき、その勝利条件は追っ払う事、または殲滅。そして…皆が帰ってくるまでの時間稼ぎをすることだろ?全員が戻れば、勝てない敵は無い。で、時間稼ぎに最適なのは不死身と呼ばれたオノノクスと、タフな俺だろ」
「…そうだな。じゃあ、二人に任せる。気を付けろよ」
「おうよ」
「ああ」

ガブリアスは礼をし、二人は頷いた。
…つまり、反転世界に行くメンバーはルカリオ、ガイラル、サーナイト、ガブリアス、ベルセルク、キリキザン、アーリア。そして、ルト隊にヤイバ隊だ。

「…残り、一分…」

オノノクスは懐中時計をしまい、前を見る。釣られて全員が同じ方向を向いた。
…そして、時は来た。

「む…?」

ガブリアスが異変に気付き、全員もそれぞれ違和感を覚えた。風が、吹いている。全員が見ている場所に、生暖かい風が吸い込まれていく。そして、それは起こった。

「なっ…!?」

地面に突如、亀裂が走り…下から何かが上昇してくる。それは、砂にまみれた、何万年前の物かも分からない古びた遺跡だった。石のような材質の物体が幾重にも重なり、三角形の形をした巨大な神殿のようだ。
その中心に、ポケモンが通れるだけの狭さの通路が奥まで続いており…その中に風がどんどんと吸い込まれていく。

「これが…入り口なのか…」

経験豊富なガイラルでさえ、その光景に驚いていた。

「…行こう。これは間違いなく反転世界への入り口だろ」

ルカリオは臆することなく、通路へと足を運ぶ。オノノクスとバシャーモを残し、全員がルカリオの後ろを歩いていく。
そして、見付けた。紫の光が渦巻いているような、異世界へと続く入り口を。

「腹ァ括れよ!行くぞ!」

全員がルカリオの号令と共に、紫の光へと…飛び込んだ。
前作の話数越えそう。お付き合い下さいね…。

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