6-2 チーム内の役割

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 一足先にアクトアのギルドを出た僕は、"ワイワイタウン"でライルさんと再会する。
 "パラムタウン"の事を話ながら待っていると、僕の予想に反してベリーとランベルさん、それからソーフが到着する。
 本当はキュリアさんが参加してくれる予定だったけど、ベリーが言うには別件で依頼が入ってしまっていたらしい。
 予定が変わったとはいえ人数が揃ったから、僕達はライルさんに乗せてもらって"草の大陸"に向かい始めた。
 [Side Soif]




 「…ランベルしゃん、もうすぐ"死相の原"でしゅ」
 「確かゴールドレベルのダンジョンだったね」
 「そうです。移動中も話しましたけど、草タイプと虫、ゴーストタイプが中心です」
 ミー達は潜入し慣れてましゅけど、ゴールドレベルの中では難易度が高い方かもしれないでしゅね。ラプラスのライルしゃんに乗せてもらったミー達は、一時間半位で中継地の"トレジャータウン"に到着した。潜入の準備とかはアクトアを出る前に済ましたのでしゅけど、潜入に必要ない物とか余分な物とか…、そういう物を預けるために貸倉庫に寄ってましゅ。ラテとベリーがギルドに弟子入りした時からの馴染みみたいでしゅけど、ミー達は管理人しゃんから予想外の事を聞くことがでしました。
 管理人しゃんが押してえくれたのは、今は行方不明になっているシルクしゃんの事…。もう何日も前の事みたいでしゅけど、貸倉庫にいくつかの荷物を取りに来ていたらしいでしゅ。その時シルクしゃんは、いつもの白い服にメガネをかけていたみたいでしゅ。管理人しゃんはもっと話したかった、って言ってましたけど、何故か人目を避けるようにしていた…、らしいでしゅ。
 話がシルクしゃんの方に脱線してしまったのでしゅけど、"トレジャータウン"を出たミー達は、少し遅れたけどもうすぐ目的地に到着しましゅ。"トレジャータウン"からはあまり離れてない場所にあって、黒い草花が特徴的な草原…。あと二、三十メートルぐらいでダンジョン地帯に入るのでしゅけど、"死相の原"は常に黒い霧がかかって視界が悪いのでしゅけど、野生のレベルが低いからゴールドレベルになっている、って聞いたことがありましゅ。今ミーとラテが説明したのでしゅけど、流石に知っていたみたいでランベルしゃんはなるほどね、っていう感じで頷いてくれました。
 「それだけじゃなくて、奥地の"黒の花園"は"黒陽草"でも有名なんだよ! 」
 「"黒陽草"…、"黒陽茶"の原料だったね? 」
 「そうでしゅ。"黒の花園"でしか採れないみたいでしゅけど、甘くて美味しいでしゅよね」
 「そう、だね…」
 紅茶だけじゃなくて砂糖にもなるから、"草の大陸"のメインの農産物なんでしゅよね! ベリーは隣を歩くランベルしゃんを見上げて、奥地の豆知識みたいなことを話始める。ミー達にとっては当たり前の事でしゅけど、元々"霧の大陸"のチームのランベルしゃんにとってはそうじゃない気がしましゅ。だけど"黒陽茶"はラスカでは広く知られてましゅから、この名前を出せばすぐに分かってくれると思いましゅ。ミーは結構好きなのでしゅけど、何故かラテだけは浮かない顔で頷いていた。
 「…あれ? そういえばラテって"黒陽草"の黒糖結構使ってたと思うんだけど、何で最近使ってないの? 」
 「えっ…、うーんと…、ちょっとね」
 やっぱりベリーも気になってたんでしゅね? いまいちパッとしないラテに気づいたらしく、ベリーはふと彼に訪ねる。言われてみると最近、あんなに好んで使ってた筈なのにこの何日かは一回も見てない。訊かれたラテは返事を有耶無耶に仕手ましゅけど、ミーが見た感じだと何かあったんだと思いましゅ。
 「…そんな事より、もうすぐダンジョンだから、気を引き閉めていきましょう! 」
 「そうだね。ゴールドレベルだけど、気を抜くわけにはいかないからね」
 うーん…、やっぱりラテ、何か隠してましゅね。本当に何でなのかは分からないでしゅけど、ラテはここぞとばかりに話題を変える。いつもならこういう事はあまり無いから、ミー…、もしかするとベリーも、不自然な様子のラテにどうしても違和感を感じてしまいましゅ。ランベルしゃんは仕方ないのでしゅけど、無理やり話題を変えられたから、今ちょうどかかり始めてきた黒い霧みたいにモヤモヤしてきてましゅ…。けれどランベルしゃんの言うこともその通りでしゅから、ミーは心の中の霧を無理やり払…。
 「ガァッ! 」
 「うわっ…! 」
 「守る! …っく!」
 「炎のパンチ! 」
 「エナジーボール! 」
 いっ、いきなりでしゅか? ミーは気持ちを切り替えながらラテの後ろに続いたんでしゅけど、ダンジョン地帯に入っていきなり、ミー達は手厚い歓迎を受けてしまう。偶々ラテが先頭にいたからなんとかなったでしゅけど、咄嗟に緑色のシールドを張ってくれたからアリアドスの虫喰いの対処をする事ができた。…だけど溜めが不十分、ラテが物理技に対する耐性が弱いって事もあって、一瞬のうちにヒビが入って砕け値ってしまう。その代わりにミー、それからランベルしゃんも技を準備する時間が出来たから、緑色の球体と炎の拳で撃退することが出来た。
 「ベリー、大丈夫? 」
 「少しビックリしたけど、私は平気。ラテは? 」
 「問題ないよ」
 「それなら良かったでしゅ」
 「虫喰いだったみたいだから、毒状態にもなってなさそうだね」
 …でしゅけどいきなり襲われるなんて思わなかったでしゅね。幸い他の野生はいなかったみたいでしゅから、ミー達は辺りを警戒しながらもホッと肩を撫で下ろす。視界は十五メートル先が見えないぐらい悪いでしゅけど、"死相の原"ではこれが普通…。マスターランクのランベルしゃん、ミー達もこれ以上に過酷なダンジョンに挑戦したことがあるから自信はありましゅけど、リル君達とかハクしゃんの弟子達とか…、一般的なチームなら結構苦戦すると思いましゅ。
 「そうだね。…だけど状態異常になっても、この姿のソーフなら大丈夫だね! 」
 「そうでしゅね」
 「って言うことはもしかして、ソーフ君? さん? は回復技を使えるんだね? 」
 「アロマセラピーだから状態異常だけですけど、ソーフにはいつも助けてもらってます」
 「ミーの役割は遠距離兼ヒーラーでしゅから」
 その代わり接近詮は苦手でしゅけど、ベリーがいるから問題ないでしゅね。ベリーがミーに目を向けながら話を続けてるから、ミーはそれに合わせてこくりと頷く。一応チームの中では"ランドフォルム"の時は回復担当って事になってましゅけど、近接攻撃以外なら一通りできるつもりではいましゅ。ミーはエナジーボールとシェイミ専用の技のシードフレアが使えましゅし、"スカイフォルム"ではアロマセラピーの代わりにエアスラッシュを使えるようにしていましゅ。守りの方はラテが中心にしてましゅけど、草笛でミーは敵の隙を作っているつもりでいましゅ。ラテは他にも黒い眼差しで相手の動きを止めれて、その間にアタッカーのベリーが一気に攻める…。ミー達の戦法を挙げ始めるとキリがないでしゅけど、時と場合に応じて変えてる、って感じでしゅね。




――――



 [Side Fause]



 「…そういえばフィフちゃん? 」
 『ん、何かしら? 』
 「クアラちゃん達にあんなもの持たせてたけれど…、何に使わせるつもり? 」
 『あんなもの…、"変声の種"ね?』
 確かにあの種は、戦闘においては何の役にも立たない代物ね。
 「ええ。ギアなら連絡用って分かったけれど…」
 『そうね…。多分テト…、クアラなら気づいてくれると思うけど、二人がテトラとリオリナって事を隠すためね』 
 「隠すため…? そう思うと服を着るだけで十分だと思うけれど…」
 そっか。ミウさんにとっては大昔の事だから、忘れかけてるのかもしれないわね。
 『ええ。七千年代だと身なりとか…、探検隊か救助隊に入っているとそれだけで十分。強いて言うなら…、念のための保険かしら? 』
 「保険? 」
 『そうよ。私は職業上着てるけど、二千年代で私達ポケモンはアクセサリーを身につける事は稀なのよ。…だから野良の人とかは、その人の気配とか匂いとか…、声とかで個人を判断しているらしいのよ』
 私は野生だった頃の事は殆んど覚えてないけど…、フライ達がそう言ってたわね。
 「匂いて…、随分原始的な事してたのね? 」
 『私も仲間から聞いただけだけど…、そうらしいわ。…話を元に戻すと、声はその人がその人って分かるのに重要、って思うのよ』
 「私は見た目とか使う技とかで十分だと思うけれど…」
 『それもそうね。…だけどその人を認識してる基準って、案外イイカゲンなものよ? 』
 「私はそうは思わないけれど、個性ってそういうものなのかしら…? 」
 『私の推論だけど、そう思ってるわ。例えば私なら…、白衣を着て水色のスカーフを身につけているエーフィが"シルク"、アーシアちゃんなら前足にモンショウがあってリストバントを身につけた、少し小さめのブラッキー、って感じかしら』
 "トレジャータウン"に"Zギア"を取りに行った時、白衣の変わりにメガネをかけてたから、知り合いが多い町だけど私から話しかけるまで殆んど気づかれなかった。流石にチェリーには"絆の従者の証"でバレたけど…。
 「言われてみれば、そんな気がしなくもないわね」
 『あくまで私の見解だけど…、そんなところね。…ミウさん、そろそろ私達も行きましょ』
 「ええと…、私達は"紫離しいり"だったわね」
 『そうよ。…ミウさん、お願いするわね』
 「ええ。…テレポート! 」




   つづく……

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