君に会える季節

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作者:adventure
読了時間目安:4分
初の短編小説です。文章は少ないですが、暖かい目で、見てください。
今年もこの季節がやって来た。彼岸花が咲き乱れる道を、ボロボロになった自転車をこいで、稲刈りが終わり、寂しくなった田んぼを器用に通り抜けて、急な坂道を自転車を押しながらゆっくり登って、小高い丘の上の秋桜の花畑で、年に1度だけ、君に会える季節。


───僕は、普通の大学生。ポケモンの生態について学ぶため、毎日自転車で学校まで通っている。でも、めんどくさがり屋な性格のせいで、いつも勉強に手がつかない。おかげで成績も全然ダメ。ワースト一位、二位を争うかも知れない位に馬鹿だった。それでも、生物の講義はしっかり受けているし、提出物も欠かさず出している。何故?好きだからさ。好きだから続けられる。どんなに勉強が忙しくても、僕はこの季節になると、一日だけ必ず休みをとるんだ。そして、ボロボロの自転車で、遠い遠いところまで、あいつに会いに行く。どんなに遠くても、どんなにめんどくさくても、必ず行く。勿論、好きだから続けてる。今年も行くんだ。今から、時を巻き戻して、あの日の君に。


彼岸花が咲き乱れる道を、ボロボロになった自転車をこいで。
──あの日は、君を籠に乗せて、一生懸命こいだんだ。黒い籠に水色の小さい身体はすっぽり入ったけど、背中の泡で籠がベトベトになっちゃって。その泡で、自転車の籠は錆びだらけだよ。

稲刈りが終わり、寂しくなった田んぼを器用に通り抜けて。
──あの日も、稲刈りは終わってたね。でも僕、自転車全然上手にこげなくて、真新しい自転車なのに、田んぼに落ちて泥だらけにしちゃったよね。

急な坂道を自転車を押しながらゆっくり登って。
──あの日は、風が気持ちよかったよね。秋の涼しい風が、ピュウピュウ吹いてきて、笑いながら登ったね。あの日は君が籠に乗ってたから、重くて凄い疲れたよ。登りきって汗だくになった僕を見て、君はピョンピョン跳ねてたよね。あの高さは、今でも覚えてるよ。

小高い丘の上の秋桜の花畑で。
──あの日も、今日みたいに夕日が沈みかけていて、綺麗だったね。柔らかい秋桜に包まれながら、一緒に夕日を眺めたよね。あの日も、僕は学校でダメダメで、君が此処で励ましてくれたね。今は、君は僕の隣にはいないけど、僕の背中には、あの日君がさすってくれた、優しい感覚が残っているよ。

秋桜に囲まれた石。まだ、ちゃんと残っているよ。僕が、君への最後の恩返し。君が大好きだったこの景色を、いつまでも見ていられるように、僕が建てて挙げた、君の墓石。君は此処で、僕に微笑んで息を引き取った。笑ったまま。

夕日に照らされた墓石には、あの日の僕の字で、「僕の大親友ケロマツ いままでありがとう」とかかれている。君は、今此処で僕の事を見てるよね。ちゃんとわかるよ。だって、 君と僕は、ずっと繋がっているもん。

もう暗くなる。そろそろ帰るね。今年の彼岸花も綺麗だったよ。墓石の近くに置いておくから。また来年、必ず来るから。来年は、君に誇れる僕になるよ。そのために、帰ったら勉強だね。




閲覧ありがとうございました。私自身がめんどくさがり屋なので、それを題材にしてみました。感想・評価・アドバイス等お待ちしております。

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