勢いで書いちまった作品。
果樹園で止まったままかびている蝉を見つけたから書いてみた。
主よ…なぜ私を置いていったのですか?
なぜ、私とともにずっといてくれないのですか?
長い間、私とともにいてくれたではありませんか。
雨の日も風の日も雪の日も…今までずっと…ずっと……。
それなのになぜ進化と言う過程を過ぎたら私を置いていってしまうのですか?
分からない…分からない……。
私の目には主が私の体から飛び出していくのが見えました。
金色の兜のような甲殻とそれはそれは立派な翼を四枚も携えて…。
純粋に嬉しかった。主が進化して嬉しくないわけが無いんです。
ただ…「私」というものはその瞬間から意識が宿り嬉しさとともに寂しさがこみ上げてきました。
今まで私の中にいた主はもう私の中にはいてくれない。
なぜ私を置いていくんです?今まで一緒にいてくれたではありませんか。
進化したからと言ってどうして私を置いていくのですか?
視界の端で遠くなっていく主の背中にそう呼びかけます。
主……主………主よ…。
私はここにいますよ?置いていかないで下さい…。
進化した主と違って私には立派な翼は無いんですから…。
それに私は主を追いかけることも出来ません。動くことすらままなりません。
いつもなら主が中にいて私の体を動かしてくれました。
でもその肝心の主は私の中にはいません。
主がいなくなった私はひゅうひゅうと背中から音がします。
空気が私の中から出ているのでしょうか?それとも引き込まれているのでしょうか?
主…私の背中を見て教えてください。
とてもとても不安でたまらないのです。
私は息をしているのでしょうか?
生きていると言ってもいいのでしょうか?
主…主…主!!
私は不思議な力で浮かびます。
頭には白い輪が出てきました。
白い輪から何か不思議な力が出てきます。
私は主を追いかけようと主の背中が飛んでいった方角に飛んでいきます。
ですが主の姿は見えません。
どこまで遠くに行ってしまったのでしょうか?
主…私は今、主に見てもらいたいものがあります。
私は主を探してどこまでも遠くに飛んで行きます。
不思議とお腹は空きません。主と一緒のころは少し動くとお腹が空いて木の幹にしゃぶり付いたものです。
あぁ、それにしても主はいったいどこまで行ってしまったのでしょうか?
日が沈む前には見つけたいものです。
そんなことを思っているとぽつぽつと木々を雨がぬらします。
でも私には関係ありません。なぜなら何やら白い輪が水を弾いてくれている様なのです。
そのお陰で私は濡れること無く飛び続けることが出来ました。
すると、遠くから主の大きな声が聞こえてきました。
主…主……主!!
私は全速力で飛びます。主の下に。
主は木の下で雨宿りをしていました。
大きなモモンの木の幹にしがみ付いてお昼と雨宿りを同時に行っていました。
主…やっと見つけました。見てください。私も動けますよ。主とまた一緒にいられますよ?
主は私のほうを見ました。うれしくなって私はくるりと一周して主の前で背中を見せました。
主に戻ってきてもらうために。
ひゅっという音がしました。
すると後ろからぽとっと音がして、振り向くと主の体が地面に落ちていました。
でも、それはもう主ではなく、主の抜け殻。そして私も主の抜け殻。
でもこっちには主がいます。
私のぽっかり開いた空洞の中に主はいます。
主は今、私の中にいます。
これからもずっとずっと一緒にいます。
もう二度と離れることは無いのです…。
でも、まだ隙間は開いています。主だけでは足りません。
抜け殻をたくさん作ろう…。
そして私の隙間を埋めましょう…。
そして私は雲のかかった暗い空の下、隙間を埋めるために飛び立ちました。
何が何だか分からなかったら感想欄になんか残してくれればもう少し加筆しますので…