座布団10枚の合言葉

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作者:悪戯な秋雨さん










テンテケテケテケ・・・テンテン テンテケテケテケ・・・テンテン ポッ

テケテケテーテケテケテケテー テテテテテーテケテケテケテー

テッテーテテッテテテケテ テケテケテーテケテーーーー

テテテテテテテ パパン テテテテテテテ パパン ッテッテーーーー テテテン ポッ (要するに、笑点のテーマ)






音楽、さらには羨望、あるいは期待の眼差しに後押しされて入ってきたるは、8人のポケモン達だ。皆一様に綺麗に着飾っている

司会者と思しきポケモンの、台に扇子を打ち付ける音に、客は一斉に反応する。これから始まるは、世にも面白おかしき・・・魔法の時間だ







「えー、どうもこんにちは。お待たせしました。大喜利のお時間です」

そう言って、この世界が拍手と共に幕をあげる

「まずは、そろそろ春の草木が芽生え、周りと同化しそうだな、と考えているみなさまの挨拶をどうぞ」

そう促された彼ら・・・着飾った6人のポケモン達は、座順に自己紹介を始めた





「どうも」ペコリ

一礼。そして、言葉を続ける

「四月に入りましたね~。だんだん、というよりも急激に暖かくなっていますが、そんなときにはいろいろと体に不調が出てくるものです」

流暢な語り口調は、観客たちを虜にする

「その中でも恐ろしいのは花粉ですよね。後、目やら鼻やら、色んな所から入り込んで・・・皆さんもつらい思いしていると思います。挙句の果てに治し方がないってんじゃあ困ったもんですよね。まあ、私は花粉症じゃないんですけどね。リーフィアです」

そうオチで締めくくり、拍手を受けて次に回す。毎度おなじみとなっている口上だ



「えー、春、といいますと、暖かくなってついつい二度寝三度寝を繰り返しますね」

一度言葉を区切り、観客を見渡す。何人かは同意の意で頷いた

「『春眠暁を覚えず』、なんて言いますが、やはりその通りだと思います」

「と、そんな折に私が何を申したいかといいますと、夏ならずっと寝ていられるのでは?ジュプトルです」

と、ことわざを引き合いに出して観客の笑いを誘う。熟練の技術と経験がなせる業だろう




「・・・ええっと、何言おうとしたんだっけ」

1人がボケかそれともほんとにボケたか・・・。そんなことを口走った。すると隣から

「おいおい、始まる前から大丈夫かい?」

と横やりが入った。これもいつものことで、観客たちは和やかにそれを見つめている。弄った方も弄られた方も、どこか楽しそうだ

「あ、そうそう。そういえば、私の出演する落語のDVDが制作されました!近日発売ですので、ぜひ見てくださいね!マスキッパです!」

そう自己紹介を締める。オチがあるという訳でもなく、ただの番宣だが、それでも観客たちは面白そうにしている




「こんにちは!最近はこうやっていろんなところに出さしていただいて・・・ありがとうございます。ありがとうございます」

そう言って、お辞儀をしたこのポケモン。新人らしく、ややへりくだった始まり方だ

「ですが!」

と、突然話を展開させた。もちろんのこと、観客たちはその言葉に惹きつけられる

「いまだにスタッフにすら名前を呼ばれてもらっていません!『あ~、ジョウトの御三家の!あのポケモン!はいはいはい!』」

「そこまで出てるなら名前も覚えて!(泣)ベイリーフです!」

と、自虐たっぷりに話を締める。半泣きなのはご愛嬌、というやつだろう




「こんにちは。え~、この前街を歩いていたらですね、女子高生ぐらいの3人組に、『かっこいい』と言われちゃいましてね、いやあ」

自分で言いつつ照れているが、これも彼なりの表現方法だろう

「まあ、こんな感じで横を見ていきますと、まあ、色んな顔があるもんですね」

と、周りを引き合いに出して口上を続ける

「モテない顔、さえない顔、死にかけの顔」

ここで笑いが起きる。司会者の年齢をいじるのは最早高齢で・・・おっと恒例である

「え?座布団とるぞ?やなこった。ジャノビーです!」パチパチパチ




「最近やたらと暖かくなりましたね~。まあ、それは他の方も言っていたんですが」

そう前置きをして、彼も口上を始める

「と、こうなってくると綺麗に咲いてくるのが桜ですね。梅はそろそろ散ってきてしまいますが・・・」

「お花見も楽しみになってきた季節ですね~。どうやら『花より団子』なんてことわざもあるそうですが、この人たちは団子をのどに詰まらせて桜の養分になりそうですね!最年少のカリキリでーす!」

ここまで上手くまとめたカリキリは、どこかしたり顔だ



と、ここで主役たちの自己紹介が終わったのか、司会者に観客たちの視線が注がれる。しかし、座順の最後にはまだ1人残っているのだが・・・と、司会者の声が会場に響く

「続きまして、この春、桜と共に散るであろう座布団運び、ヤナップ君からのご挨拶です」

と、そう促された座布団運び。つまり、最後の1人が自己紹介を始めた




「♪いっちねんせーになったーらー♪」

と、ヤナップが歌い始める。観客たちも合いの手の手拍子を送り始めた

「いっちねんせーになったーらー!・・・ありがとうございます」

ここで、妙にきれいな歌声は消え、拍手が代わりに響き渡る。その音が鳴りやむまでが長くはなかったためか、ヤナップは一呼吸おいてから話を再開した

「春なのに友達100人どころか恋人1人も居ない(チラッ)」

とベイリーフを見るヤナップ。「うるさいよ」とベイリーフからツッコミを入れられているが、お構いなしだ

「どうにも寂しい人生ですね!それだけは嫌だ!幸せと座布団を運ぶ、ヤナップです!」

そう言って両手を上げた後、自分の座っていた座布団を取って立ち上がり、一礼して奥へと消えていった

それを合図にするように、再び司会者・・・オーベムが喋る

「という訳で、座布団十枚の合言葉、『しょくぶつ』ね。まあ、やっていきましょう」

ここでも拍手が上がる。やはり、観客の期待は高そうだ

「と、その前にヤナップ君。ジャノビー君とカリキリ君のあいさつが気にくわなかったから一枚ずつ持って行って」

と、突然の座布団没収に

ジャノビー「いや、おいおい」

カリキリ「ダメだ!最後の一枚は渡さない!」

しかし、必死の抵抗もむなしく2人の座布団は回収されてしまった




さて、ここで、この会場の雰囲気と、その他概要についてまとめてみよう

最初に扇子を打ち付けた司会者オーベムを風上(左)として、リーフィア、ジュプトル、マスキッパ、ベイリーフ、ジャノビー、カリキリの順番で座布団に座っている。そう、まあお察しかと思うが、つまりは『笑点』である

簡単に笑点について説明すると、司会者が出すお題に沿って、座布団に座っている回答者が面白おかしく回答し、それによって座布団が増えたり減ったり・・・そうやって観客を楽しませるものである。

と、説明はここまでにしよう。司会者の方から声が上がった




「では、1問目、やっていきましょう」

そう言って、ついに大喜利の時間が始まった

「さてさて、座布団十枚の合言葉『しょくぶつ』。皆さんはどんな言葉を思い浮かべますかね?」

そう言ってオーベムは手元からフリップを取り出す。そこには

『植物』

と、大きく書かれていた

「まあ、一番多いのはこれだと思いますね」

観客も同意を示す

「しかし、見方を変えれば、こんな感じの漢字にもなる訳で」

『食物』

と書かれたフリップを取り出したオーベムは、なおも説明を続ける。観客からは予想していなかった文字に感嘆の声が上がった

「そこで1問目。落語には様々な食べ物が出てきますが、中でも有名なのは『饅頭怖い』、かと思います。一応どんな話か説明しましょうか」

「この話は、数人の街の暇人たちが、それぞれの嫌いなもの、怖いものを言い合っていくんですね。その中の一人が、『俺は実は饅頭が怖いんだ』といったわけですね」

「やがてその集まりは解散したのですが、ある男が『アイツの家に大量の饅頭を送り付けてやろう』と思い立って、数人でそれを実践したわけです」

オーベムの説明は続く

「『饅頭が怖い』といった男が寝ている間に、男の部屋を饅頭でいっぱいにして、さあ、怖がるところを見てやろう、と、男が起きるのをうかがっている」

「すると、やがて男は起きて、大きな声をあげたんだ。しめしめ、と男の様子を見てみるとなんと、『美味しすぎて怖いわー』、『こんなに沢山あったら食べきれない』と言いながらパクパクと饅頭を食べている」

「だまされていることに気付いた男たちは、饅頭を食べている男の前にでて、こう言った。『お前が本当に怖いものは何なんだ!』と、そしたらここで男は一言。『そうだな。今は熱いお茶が怖いんだ』」

と、ここまで説明したところで、観客から拍手が上がった。丁寧な解説に対して、というよりは、落語が聞けたことに対して、だろう

「さて、説明が長くなりましたが、という訳で1問目はその『饅頭怖い』になぞらえて出題。回答者の皆様は、『~~が怖い』、と言ってください。そうしたら私が、『なら、~~を大量に送ってやれ!』といいますので、続けてください。お、モテない顔、早かった」

最初に手を挙げたのはモテない顔、と言われる独身、ベイリーフだった

ベイリーフ「誰がモテない顔ですか!・・・はい。最初ですし、無難に。私は、珍しいものが怖いです」

「よーし!なら、珍しいものを大量に送ってやれ!」

ベイリーフ「こんだけあれば、珍しくとも何ともない」

「ふむ。まあ、及第点だな。・・・はい、ジャノビー君」

次に手を挙げたのはジャノビーだ

ジャノビー「私はね、髪の毛が怖いんですよ」

「じゃあ、大量に髪の毛を送ってやれ!」

ジャノビー「おやおや、貴方には送るような髪の毛はないじゃないですか」

「もともとだコノヤロウ」

ジャノビー「あっ。年のせいではない?おっと、うっかりうっかり」

ジャノビーが司会者をいじるのはよくあることで、観客もそれを楽しんでいる。オーベムも、あきれ顔ではあるものの、怒っている、という訳ではなさそうだ

「うるさいぞ。はい。ベイリーフ君」

ベイリーフ「はい。饅頭も怖いけど、全般的に甘いものが怖いですね」

「よーし!じゃあ、甘いものを大量に送ってやれ!」

ベイリーフ「おっと。むしろ怖いのはカロリーですね」

「そんなこと言ってるからモテないんだぞ」

ベイリーフ「ひどい!」

「はっはっは。はい。カリキリ君」

カリキリ「えっとね、私実は、年下は怖いんですよ」

「そうかそうか。だったら年下のポケモンを大量に送ってやれ!」

カリキリ「おいおい。年下は『こわい』んじゃなくて『こうはい』だろ?」

マスキッパ「お前最年少だろうが」

そこでちらほらと笑いの中に感嘆の声が混じる。どうやら観客受けはよかったようだ

「まあ、確かにそうだな。お、リーフィア君」

リーフィア「はいはい。私はね、美女が怖いんですよ」

「私が怖いのはそれを平然と言うお前さんだけどな・・・」

リーフィアの言葉に対して若干引き気味のオーベム。リーフィアは話を続ける

リーフィア「まあまあ、で、美女をくださ・・・美女がこわいんですよ」

ジュプトル「言い直してんじゃねえよ」

「よし、アイツに大量の美女を送ってやれ!」

リーフィア「おお。一番怖いのはカミさんだな」

「いつか刺されるよあんた」

爆笑の中、司会者が次のお題を告げ始めた

「さてさてそれでは2問目。ヤナップ君!皆さんに例の物をお願いします」

と、そう呼ばれたヤナップは

ヤナップ「かしこまりましたー!」

と言って軽快に全員に小さめのフリップを渡した。そこにはこう書いてある


『 〇 く 〇 つ 』


オーベムが説明を始めた

「二問目はですね。皆様、『~~~』と言ってください。そしたら私が『なんですか?それは』と返しますので、続きを答えてください。では参りましょう・・・マスキッパ君」

マスキッパ「はい!・・・えっと、なんだっけ?」

「おいおいおいおい。大丈夫かいほんとに」

マスキッパ「なんか忘れちゃった」

「じゃ、まとまったらもっかい手ぇあげてね。・・・はい、カリキリ君」

カリキリ「はい!えっと、貴方のことです!」

といってカリキリが見たのは、他でもない司会者、オーベムの方だった。そのしぐさに、ジャノビーがほう、とつぶやく

「ほう、じゃないよ。・・・なんですか?それは」

カリキリ「はくはつ!」

と、元気に応えるカリキリ。悪意があるのかないのか微妙なラインだ

ジュプトル「おいおい、何言ってんだい。もともとほとんどないだろう?」

と、そんなヤジを飛ばすジュプトルに、オーベムが一言

「ヤナップ君、ジュプトル君から1枚持ってって」

そんなオーベムの言葉に、観客たちは笑いあう

マスキッパ「はい!えっと、私の落語のことです!」

「なんですか?それは」

マスキッパの言葉に、オーベムが定型文で返す

マスキッパ「たくえつ」

と、マスキッパの答えと共に観客が沸き、拍手が送られる。楽しい時間は、もう少し続く

「そんなわきゃあないだろう」

と、司会のオーベムがマスキッパに対し軽口をたたいた

「あ、ジャノビー君」

次に手を挙げたのはジャノビーだ

「はい。こいつのことです」

と、彼はマスキッパを指さしつつそう言った

「なんですか?」

ジャノビー「ばくはつ」

そう言って今度は自分の頭の横でくるくると指を回す。その瞬間、またも観客から笑いが起こった

「リーフィア君」

リーフィア「はい。えっとですね、私が何度もされたことです」

「なんですかそれは」

と、オーベムの言葉に全員が考え込む。その様子を見て、少しニヤリとしながら

リーフィア「こくはつ」

「犯罪じゃないかい。ヤナップ君。リーフィア君の一枚持ってって、警察についでに引き渡しなさい」

リーフィア「ちがうちがうwww」

ジャノビー「お巡りさんコイツです」

「さて、じゃあ、リーフィア君を告発したところで、最後のやつ、行きましょう」

と、オーベムが全員に通達する。静まったのを確認して、言葉をつづけた

「では、最後は簡単に」

そう前置きを置いて、言葉を続ける

「皆さん、何か言ってください。そうしたら私が、『どうなったの?』と聞きますので、続けてください」

そのお題が出たとたん、声が上がる

「お、それならいいのが1つあるぜ」

といったのはベイリーフだ

「はい、ベイリーフ君どうしたの?」

ベイリーフ「ちょっとちょっと、みんなで手をつないでさ・・・そうそう・・・」

と、ベイリーフは全員に手をつながせると

ベイリーフ「じゃあ、あの通りにね」

と言って

全員「「「「「「♪おーてーてーつーないでー」」」」」」

と歌いだす。全員もそれに乗っかった。そして

ベイリーフ「おーつーやーにーいーけーばー♪」

と歌う。オーベムは呆れながらも聞く

「どうなったの?」

ベイリーフ「うおお。遺体がしゃべったっ!!!」

全員「うわあ!」

全員「やばいやばい」

オーベム「・・・」

と、ここで本日一番の拍手喝采と大爆笑が観客から送られた

ベイリーフ「ドヤッ」

と、オーベムは完全に真顔、観客にうけたベイリーフはどや顔である



「ヤナップ君」

観客の興奮冷めやらぬうちに、司会のオーベムが一言

「全員のぜーんぶ、持っていきなさい」

全員「「「「「「えええええっっっ!!!」」」」」」」

リーフィア「こんな事なら事前にネタ合わせなんかやらなきゃよかったwww」

「どう考えてもこうなってたでしょ」

カリキリ「さすがに笑うしかない」

オーベムの全員座布団没収宣言も相まって、会場の笑いの渦は消えそうにない。そんな中、粛々と全員の座布団は回収されていった

「さて、全員の座布団が回収されたところで、今回はこの辺で」

「ね」サンカシャヲミツツ

「まあ、次回からは全員メンバー入れ替えなのでね。さあ、皆さん、最後のあいさつをしなさい

ジャノビー「最後はやめて(笑)」

パチパチパチパチパチ

「では、また次回お会いしましょう」









テテテテテテテ パパン テテテテテテテ パパン ッテッテーーーー テテテン ポッ









この小説は、限界を追求する、『悪戯な秋雨』の提供で、お送りしました











   桂歌丸師匠のご冥福をお祈りします

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