青年と水の都の護り竜

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作者:えびフライ
読了時間目安:10分

この作品は小説ポケモン図鑑企画の投稿作品です。

「はぁ...」

僕は小さな連絡船の舳でたそがれていた。
僕はジーク。カントーで有名なある博士(オーキド博士)の助手を務めている。

何故助手の僕が連絡船に乗っているかって?
それにはちょっとした訳があってね...

博士に【アルトマーレ】と言う町の生態系の調査を頼まれたんだ。
僕はホウエンのオダマキ博士みたいにフィールドワークが好きじゃないから...
苦痛な訳。

晩夏の暑い、しかしピークは過ぎた強い日射しが照りつける。
それでなくてもイライラしているのに...鬱陶しい。

その時水面ギリギリに飛行する謎の飛行体がいたが、誰も気づかない。

ジークはイライラして足をふみならす。
その時、天井のスピーカーから目的地接近を知らせるアナウンスが流れる。

~まもなく~アルトマーレ~アルトマーレ~

着いたか...
テキトーに調べて帰るか...

アルトマーレに上陸。
だからといって嬉しい訳では無い。
有名な水の都(アルトマーレ)観光のためではない。あくまで仕事だから。

日も陰ってきたので、とりあえず僕はホテルを目指す。
入り組んだ路地の中にある小さなホテルだ。
しかし、その途中で定番のように道に迷う。
同じような建物。同じような路地。同じような水路。

完全に迷ったな...

その時だった。



何か空気の像がおかしい!
何かがいる...きっと。

「そこに誰かいるの...」

また空気の像が動く。
しかし、その後一瞬で消えてしまった...

その後、なんとかホテルにたどり着く。
チェックインを済ませ、1階の水路に面した部屋に入るが否や、疲れからベッドに倒れ込む。
水路を伝って海の香りが匂ってくる。心地よい香りだ。
苛立っている心を少しは落ち着けてくれる。少しだけだが。
少し今日を振り返る。

朝バタバタで連絡船に乗り込み、席が空いておらず、1人立って乗る羽目に。
昼まともに昼食もとれずに...今から早めの夕食にするか。

冷蔵庫から、博士に渡された弁当を取りだし、食べる。
慌てずゆっくり食べられるのは久しぶりだ。
食べながらさっきのことについて考える。

あの空気の像はなんだったんだろう...





窓の外にさっきの像が!
僕は弁当を机の上に置き、ホテルの窓から飛び出し、像を追う。

水路に架かる橋を走って渡り、T字路を右に曲がり、小さな水路を飛び越え、公園を横切り、赤い建物の横に沿って左。四つ角を右に左に右に左に右に左に右に左に曲がり続けている。果てしなく続く気がする。

像も時々止まって僕が追い付けるよう動いている。
まるで僕を招いているように。

恥ずかしながら僕は運動能力が普通の人に比べてかなり劣っている。
息を切らしながら走って行くと、きれいに紅く塗られた壁の中に像が吸い込まれて行った。

僕は好奇心に負け、その壁に手を触れる。

壁は手を跳ね返さず、手は壁に飲み込まれている。
慌てた時には時すでに遅し。叫ぼうとしたがすでに壁の中だった。


一瞬だった。


僕は壁から飛び出し、きれいな庭園に出た。
僕の目の前にあの像がいた。

「君は...誰なの?」

その問に答えるかのように像は動き、実体を現す。
頭からその実体を現していった。

可愛げのある顔。
赤い体。美しい。
戦闘機のような翼が現れる。
僕の前に姿を見せたのは、夢幻ポケモン、ラティアスだ。

きれいな紅い竜だ。

水の都(アルトマーレ)にラティオスラティアス伝説があるのは知っていたが...本当にいるとは...

『ひゅわわん!』

嬉しそうに一鳴きした。
彼女を撫でる。
ニコニコしながら僕を見つめる。可愛い。

しかし、その夢のような時間はすぐに妨害された。

ゴッ!

「うぐっ...」

何かが...脇腹に...

蒼き竜(ラティオス)がスッと姿を現した。

「私の妹に何をしたッ!」

テレパシーで伝えてくる。
かなりお怒りのようだ。

『ギュッギュッ!』

ラティアスが抗議の鳴き声をあげる。
ラティオスは聞く耳を持たない。

上空に光が光ったかと思うと、流星群が迫ってきた。

ヤバイ。ボクニンゲン。アンナノクラッタラシヌヨナ、ゼッタイ。
焦ってまともな対策を考えられない。
すると。

ゴッ!

ラティアスのお怒りの思念の頭突きがラティオスに飛んだ。
その攻撃によってラティオスの意識が飛び、流星群は消える。


兄。気絶。

ラティアスが強くて助かった。

ラティアスは僕を念力で彼女の背中に乗せ、飛び立つ。
フワッと浮き上がり、物凄いスピードで飛んだ。
その飛行には、彼女の細かな気配りがみてとれる。
サイコパワーで風圧を弱め、揺れないように気を付け、僕の足がきつくないようにサイコパワーで軽く支えてくれた。
この飛び方を勝手に名付けた。念力飛行(サイコフライト)と呼ぼう。
行き先は、僕のホテルだった。
何にもなかったように窓から部屋に入る。
一緒にラティアスもついてきた。

部屋に入ると、僕は彼女に料理を作ってあげた。
冷えた弁当等で水の都(アルトマーレ)の護り竜をもてなしたくないからね。
そっと出したプレーンオムレツを、サイコパワーを使って器用に食べる。
完璧なフォークとナイフの使い方だった。その姿もまた可愛いな。

僕がベッドに横たわると、何故か彼女も横に横たわる。
僕の顔の前に彼女の顔。可愛い。
本当はもう少し彼女の顔を眺めていたかったが、疲れきっていたため、僕はそのまま夢の世界へ落ちてしまった...



太陽が顔を出し、朝が訪れる。
僕が目覚めると、彼女も目覚め、目をこすりながらフワッと浮き上がる。
何故僕と一緒にいたの?と訪ねると、彼女の目が光った。

夢うつしだ。

ラティオスが怒っている様子が頭の中に映像として表れる。
おおよそ言いたいことは伝わった。

僕はバッグからパソコンを出しながらわかったとラティアスに伝え、今から仕事がある、と言った。
ラティアスはパソコンが気になったのかじろじろ見ている。

「これにアルトマーレに住んでるポケモンの情報を入れるんだ。」

彼女はコクッと頷く。

その後、すぐに彼女は窓から外に飛び出していった。
窓を越えた瞬間彼女の体は透明になった。
町の人に姿を知られないためだろう。
相変わらず飛行速度は速いなぁ...


僕は彼女がいなくなったことに寂しさを覚えながら仕事に取りかかる。
すると、また夢うつしが始まった。

見えるのは...ヤンヤンマ?

これは...公園...

ヤミカラスも...


そうか!彼女は僕の手伝いをしようとしてくれてるのかなぁ...
パソコンに素早く情報を打ち込みながら考える。
その後もウパー、チョンチーなど、いろいろなポケモンの情報が送られてくる。
しかし、ラティオスラティアスのことはどうしても書く気になれない。
...なんと言うか、触れてはいけない...そんな気がする。

あんなに平和そうな庭園で暮らしてきたのに、僕がそれを邪魔してしまったのではないだろうか...

ラティアスの協力のおかげで割とすぐに仕事は終わった。

しかし、ラティアスからの交信(夢うつし)が途絶えてしまった。
何をしているのだろう。不安になってくる。

交信(夢うつし)が途絶えてそのまま数時間。ものすごく長い時間に感じられる。
日が陰りだして、ヤミカラスも寝床に帰っていく。
不安だ。

その時、部屋に爆風が吹き、ラティオスが入ってきた。
「お前に折り入って話がある。」

「何?」

「実はな、うちの妹が君と一緒に暮らしたいらしいのだ。
私とて可愛い妹は手放したくない。しかし、妹の頼みとなれば断れない。
そこでお願いだ。彼女と一緒に暮らしてもいいが、絶対に彼女を傷つけるな。以上 だ。」

そう言い残し、姿が消えた。
ラティアスは僕との交信(夢うつし)を絶っている間、この事を話していたのかも知れないな。
長年連れ添ったであろう兄と別れるのは辛いだろう。
ただ、何故僕を?


ラティオスが去って直後、ラティアスが入れ替わりで帰ってきた。
静かに浮いている。

「さっきラティオスがやって来た。本当にラティアスは僕と一緒にいたいの?」

『ひゅわわん!』
盛大に一回転。本当なようだ。

「僕は全然裕福じゃないし、家にはなかなかいられない、それでもいいの?」

『ひゅわわん!』
激しく頷くラティアス。

「わかったよ、ラティアス。決まりだ。明日出発するよ。」

『ひゅわわん!』

ものすごく嬉しそうだ。ニコニコ笑っている。
グルグル宙返りしている。

次の日、僕とラティアスは連絡船に乗った。
ラティアスは可愛い人間の女の子に変身している。
ラティオスは...建物の影に隠れてすすり泣いていた。
「妹を...頼む」
と言って。

連絡船が港から出港した。
乗客は行きと違い全くいなかった。

ラティアスは嬉しそうだ。反面、長年過ごしてきた兄との別れで少し哀しい顔もしている。
僕はそっと声をかける。

「ラティアス、これからよろしくね!」


ラティアスは、眩しい笑顔を向けて一鳴きした。
『ひゅわわん!』
執筆中に素晴らしいラティアスの小説ポケモン図鑑が2つも投稿され、僕が投稿してよいのか、とかなり悩みましたが投稿しました。駄作ですがよろしくお願いします。
ご感想等いただければ幸いです。それでは。

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