細やかなお茶会

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
作者:ka☆zu
読了時間目安:6分
この何気ない一時が、最高の幸せさ。

8月16日にあった非公式オフのネタを話にしてみました。
そして、もちごめさんのルカさんをお借りしました。
「おいしい」
香ばしい香りが漂う。
目の前には、小さな茶器。
ソロは、ある島にあった茶荘に来ていた。
海を越えた遠く、遥か遠方の国のお茶が揃っていた。
ソロが飲んでいたのは、黄緑色のお茶。
香りを楽しむための器が香ばしい香りを放つ。
少し熱いものの、淹れたてのお茶は香りと同じ香ばしく、深い味がした。
昼下がり、ソロはそんな味や香りと、店内に飾られた調度品の数々に癒されていた。
「こちら、お茶請けでございます。」
「ありがとうございます」
皿には大きなトウモロコシとドライマンゴー、干しブドウが乗せられている。
それを味わいつつ、俗世間を忘れたしばしの平和に身を委ねるのだ。



「ごめんなさい、隣いいかな?」
ふと、横から声がした。
ソロはそちらを向くと、
「構わないよ」
と返す。
「ありがとう」
と微笑みながらソロの隣に座ったのは、短く白い髪に花飾りをつけ、焼けた肌と活発そうな服装をした少女だった。
「自己紹介が遅れたね、私はルカ。よろしくね」
「名乗られたからには返さなきゃね。僕はソロ、こちらこそよろしく」
「あなた、大人っぽいね。もっと暴れてもいい年頃なのに」
実際ソロはとても見た目と不釣り合いな、カジュアルな格好をしていた。
火山の島の熱いジムリーダーに、お節介にも着せられたダークスーツだ。
もっとも、普段はジャージなのだが。
「やっぱりそう見えるよね。これで分かってもらえるかな?」
ソロはルカにトレーナーカードを差し出す。
それを見ると、ルカは「やってしまった」という顔になった。
「あっ・・・ ごめんなさい。失礼な事言っちゃったね」
「大丈夫さ。慣れてるから」
「じゃあ私もこれを」
ルカのトレーナーカードも見せてもらった。
「なんだ、年上じゃないか」
「あなたも私も、幼く見えるのは同じみたいだね」
2人は顔を見合わせて、くすっと笑った。



「初めて来たけど良いね、この店。内装もお洒落だし」
「そうだね、私このお店好きなんだ。窓から遠くまで海が見えるから」
確かに、店の窓からは遥か遠くまで、海を一望できる。
その水面に、日の光が当たって輝く。
中々に美しく、趣のある景色だ。
「見るのも好きだけど、泳ぐのも好き。あてもなく海原を漂う、っていうのも中々楽しいんだ」
「それは楽しそうだね。僕もやってみたいけど、いかんせん水ポケモンを持ってない」
「いつかきっと仲間にできるよ。そうだ、折角だからポケモン達にもお茶を飲ませてあげようよ」
とルカが提案する。
すると店員が、
「それならポケモン用の茶器をお出ししましょう」
と言ってくれた。2人はポケモンを出す。
ソロはハヤシガメのダイとリザードのアリア、
ルカはラプラスを出した。
3匹はすぐに仲良くなったようだ。
特に、普段は人見知りをするアリアが、ラプラスにすぐに懐いていた。
「珍しいな、アリアがこんなに活発になるなんて。優しいんだね、君のラプラス」
「この子、アリスって言うんだ。もうみんな仲良しみたいね」
「そうだね。出してよかったよ」
和気藹々としながらの細やかなお茶会は続く。


ふと、ルカが呟く。
「あの海が、その子達が、この島々が、どんな悪い人にも負けないで、守っていけたらいいな・・・ 」
「どうしたんだい?急に」
そう聞くとルカは、真剣な表情で話し始めた。
「実は今、この海や島々を荒らそうとする悪い人達が辺りにいるんだ・・・ ポケモン達にも酷いことをするし・・・・・・ 」
「コスモ団の事だね、僕も何回か出くわしたよ。見るからに悪質な連中だった」
「あの人達、ポケモンを無理矢理操ったりしようとしてるの・・・ 生体実験みたいな事をしているなんて噂もあるくらいだし・・・ 」
「僕もそれは見たけど、確かに許せないな。生体実験なんてのは、僕が一番嫌いな事だ。あれがどんなに辛いものか、僕が一番知っている」
「知ってるって、どういうこと?」
まわりにルカ以外の人物がいない事を確認してから、ソロはその場で宙を舞った。


「こういう事さ」
という声が聞こえた頃にはそこに少年ソロの姿はなく、銀色に輝くイーブイが立っていたのだ。
「えっ・・・ 」
ルカは驚いた顔をしていた。
アリスも戸惑いを隠せない。
「僕の身体には、ポケモンの遺伝子が入っている。いや、埋め込まれた。他にも変な機械だったり、得体の知れない薬品だったりと色々だ。あの忌々しい実験のせいで、僕の身体はヒトと呼べない何かに変わってしまったんだ」
イーブイは流暢な人の言葉で話す。
「こんな人ならざる僕を、世間は受け入れてくれている。こんな僕でも、今日みたいな平和を謳歌出来ている。
だから僕は守りたいんだ。この優しい世界を」
その目つきからは、真剣そのものな表情が出ていた。
「さて、お茶会の続きをしようよ」
いつの間にか人に戻っていたソロが、ルカにそう促した。
「・・・ うん、そうだね!」
ルカも、何事もなかったように笑顔で返した。


細やかなお茶会も終わり、2人は店を出た。
「そういえば、ソロはこれから何処へ行くの?」
「ハトバかな。やり残した事があるんだ。」
「じゃあ私と一緒だね。折角だから、アリスに乗っていかない?」
「助かるよ。船にはまだ時間があり過ぎたからね、暫くご一緒させて貰うよ、ルカ」
アリスに乗ったソロは、新たな友人と共にハトバへの海路を進んだ。
回覧ありがとうございました!

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想