音速伝説 エメラルド(2)

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作者:jupetto
読了時間目安:5分
「出てこい、メタング!」
「来いや、股怒我巣!」
 
 自転車で走り出すと同時に二人はポケモンをだす。メタングとマタドガス、二匹の相性ははっきりしている。
 
「へっ、やっぱりマタドガスだったか」
「ああ?」
 
 訝しむホンダに対し、エメラルドは得意げに言う。
 
「連れに言われて思い出したんだがな。てめえの手下は全員ドガース連れてたろ」
「はっ、それで俺の手持ちはその進化系だと思ったってか?見た通りのガキだな」 
「いーや、それだけじゃねえ。もうひとつはてめえのチャリだ」
「・・・」
 
 ホンダの自転車は紫色に煤けている。それがエメラルドの推理の決め手になっていた。
 
「その汚れ、いくらドガースが取り巻きに居るったってそれだけじゃそうはならねえ。ならてめえも毒タイプ、それも煙をだすようなやつを連れてるってことさ」 

 手持ちポケモンをズバリ読まれ、タイプの相性で鋼・エスパーという圧倒的に不利な相手を出されたホンダはーーにやりと、凶暴に笑った。
 
「へっ、小賢しいな・・・だがサイクリングバトルでそんな相性なんざ・・・知ったことか!やれ、股怒我巣!」
「怒っー!」
 
 マタドガスがホンダの後ろにつき、毒ガスをマフラーを外したバイクのような轟音を立てて噴出する。ホンダがその勢いに押され更なるスピードで直進し始めた。そしてーー

「うえっ・・・デカイ屁こいてくれんじゃねえか」
 
 その煙はエメラルドの視界を塞ぎ、その息を苦しくした。本来なら呼吸困難に陥ってもおかしくないほどの毒だが、そこはポケモンのレベルを押さえる装置で抑えられている。

「メタング、メタルクロー!!」
 
 エメラルドも離されないように懸命に自転車を漕ぎながら技を命じる。メタングが少し離れて技をあてにいこうとするがーー
 
「無駄だなぁ!股怒我巣、煙幕!」
 
 今度は黒い煙幕を放ち、その姿を隠す。メタングの爪が空を切った。エメラルドにその様は見えないが、音がしないことからそれがわかる。
 
「ちっ・・・気分悪ぃな」
「そろそろ毒が回ってきたか?なにしろてめえは俺を追い抜くためにいっぱい運動していっぱい息を吸わなきゃ行けねぇもんなあ!たっぷり毒を吸ってふらふらになって俺に負けな!そしてそのあとで・・・地獄を見せてやる」
 
 ホンダはこのバトルだけでエメラルドに対する仕返しをやめるつもりはない。バトルで毒によるダメージを与えた後、直接痛め付けるつもりだ。
 
「どうだ・・・これがサイクリングバトルの恐ろしさだ!てめえのメタングがいくら無事でも、走るトレーナーがボロボロになっちゃ意味ねえんだよ!」
「・・・」
 
 返事もできないエメラルドに勝ち誇るホンダ。勝負は一キロ、もう半分は走っただろう。エメラルドに打開手段がなければ負けだ。そしてメタングには念力が使えるが、直接トレーナーを操る行為は禁止されている。
 
 
「・・・ああ、そうだな」
 
 
 かなり疲労した声でエメラルドがようやく返事をした。昨日はサイクリングロードすべてを走りきっても平気だったのに。毒ガスが効いているのだろう。
 
「へっ、ようやく認めやがったか。だがもうおせえぜ。俺たちを怒らせたこと後悔しな・・・!?」

 息を荒くしながら勝ち誇るホンダだったが、その声がひきつる。
 
(なぜ、やつの声が横から聞こえる?)
 
 そう、もう半分は走っただろう。すでに相当な距離がついているはずだ。なのに・・・
 
「よう・・・また会ったな」
「な・・・!?」
 
 エメラルドは汗をながしながらも、確かにホンダに追い付いていた。その方法とは・・・
 
「て・・・てめえ、まさか煙に隠れて念力で移動しやがったのか!?」
「へっ、俺様がそんなセコい真似するかよ・・・俺はただ、全力でかっ飛ばしたんだよ!」
「な・・・なんだと!?」
 
 馬鹿げてる、とホンダは思った。それでマタドガスで加速する自分に追い付けるはずかない、と。
 
「なあ・・・てめえ、息があがってるぜ?」
「・・・!!」
 
 エメラルドの指摘に、今更ながらホンダは自分の状態に気づく。まだ一キロも走っていないのに彼はバテはじめている。
 
「そう・・・毒ガスを吸ってたのは俺だけじゃねえ。お前もなんだ。俺よりもずっと長い間な」
 
 謂わばホンダは、長い間きつい煙草を吸い続けたようなものだ。彼の肺はすっかり毒ガスに侵されている。
 
「つまりてめえの走る速度は、てめえの思うよりずっと遅かったってことだ!さあ、このまま追い抜くぜ!」
「させるかよ・・・ならてめえのメタングを沈めれば俺の勝ちだ!股怒我巣、火炎放射!」
「てめえはこうも言ったぜ。相性なんざ知ったことかってな!メタング、念力!」
 
 メタングの念力で火炎放射を跳ね返す。マタドガスの体が逆に燃えた。
 
「怒っー!」
「股怒我巣!!」
「よっしゃあああー!!」
 
 二人の距離が、どんどん離れていく。そして一人が、ゴールを切ったーーエメラルドの勝利だ。 
 
 
どうも、じゅぺっとです。今回はケータイからの投稿ということで、予定よりも大分短くなりましたが、サイクリングバトル、いかがでしたでしょうか。

それでは、次回をお楽しみに。

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