万屋〜お仕事お受けします〜

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作者:にっか
読了時間目安:6分
ふとした思いつきで書きました。
今書いている長編に使えそうな内容じゃないので別のお話に。ただ、長編向きな感じじゃないので短編としました。
 僕は万屋(よろずや)。名前はちゃんとあるけど、万屋で呼ばれることが多いので、ここでは万屋と呼んでいただけると僕としても嬉しいです。

 犯罪以外で僕が実行可能な仕事であれば、基本的に何でも仕事として受けてます。だから、おばあちゃんの買い物の代行からビルの掃除、店番、ポケモン捕獲のお手伝い、遠方への配達etc.とまあ、なんでもやります。



 さて、今日は息抜きに丁度いい仕事かな。
 というわけで、僕と相棒のマッスグマのディモンシュと1番道路で仕事の準備をしてます。準備といっても、強そうな野生ポケモンをあらかじめ追い払うこと。
 あとは、仕事中に存在を気取られないこと。それだけ注意を払っていれば終わりって仕事です。

 これだけだと、僕たちが何をしたいのかわからないですね。
 今日受けた仕事は、マサラタウンで働く父親にトキワシティからお弁当を届ける、小さなトレーナーのサポートです。初めてポケモンをもらった男の子で、今までポケモンがいないから街から出てはダメと言われていた少年も、ようやく手に入れたポッポと小さな冒険に出たくなったみたいです。
 ただ、7歳の男の子が野生のポケモンがいる1番道路を、レベルの低いポッポと踏破するのは心配。親御さんはそう思い、友人である僕に見守るように依頼してきたと言うわけなんですね。

 トキワシティからマサラタウンまでは一直線の下り道なので、草むらがない段差のある道の方を通って行けばポケモンに出会う心配もほとんど無いはずです。親御さんも、草むらに入って道草食わずに行くようにとは言ってると言うこと。なので、ひとまずの用意として、道に沿った草むらのポケモンたちには暫くどいておいてもらいます。
 ディモンシュが軽くあしらったり、ゴールドスプレーも道すがら撒いておいたので、多少は効果があるんじゃないかな?
 後は、少年がトラブルなくマサラタウンで働く父親の元にたどり着けばよしと。



 さあ、お昼に間に合うように少年が家を出たそうです。携帯電話って便利ですよね、いつでも連絡が出来て、昔は伝書ポッポとか飛ばしていたんですから。ただ、いつでもどこでも仕事の連絡がくるんでそこだけは美味しく無いです。
 まあ、僕は少年が歩いていくのを見守って、危なそうな時だけこそっと助けるだけです。見晴らしのいい木の陰で少年が来るのを待ちましょう。初めてのお使いと言うこともさながら、トレーナーとしての冒険の第一歩。誰しもワクワクする日ですよね。
 僕ですか?僕はおじいちゃんが後ろから付いて来ていると知らずに、草むらに突撃して実力も無いのに野生のポケモンに勝負を挑んで、おじいちゃんに救助されてその後お説教をくらいました。

 少年が1番道路に入ってきました。初めのいーっぽ!!
 後は、道すがら南下するだけ。
 なんだか、きょろきょろと周りを見渡している?なんだかんだ言って、やっぱり怖いのかな?男の子は虚勢張るけど本当は怖がりだしね。

 うーん?動き出さないな……。怖くなっちゃったんだろうか?
 って、ポーチにモンスターボールが4つ?

 意を決した顔をして草むらに突撃する少年。ひょっとして、「コツコツ貯めたお小遣いでモンスターボール買ったから2匹目を捕まえるんだ!!」とか言うやつ?
 早速、コラッタに出会ったみたいだけど……。中途半端に攻撃して、コラッタを怒らせてしまったみたい。えーっ!!もうモンスターボール投げるの?案の定弾かれました。
 「ぐーっ!!」
 横で同じように見ていたディモンシュが僕の袖を引っ張る。
 「ああ、そうだね。彼を助けよう、半べそかいてきちゃったしね」
 少年もポッポも不利な状況にもかかわらず、まだ捕獲を諦めてないみたい。見上げた根性だ。しょうがない……。こそっとサポートするか。
 「ディモンシュ。ものすごく手加減して、くさむすび」
 ポッポに体当たりをするために踏み出す寸前、草につまずくコラッタ。派手に転んでそれなりにはダメージも入ったみたいだし、今が捕獲のチャンス!!
 泣き顔で顔がグシャグシャの少年。なんだかわからないけど、コラッタが転んでチャンスが来たということはわかったのか、泣きながら渾身の力でモンスターボールをコラッタに叩きつける。



 ボールが揺れて……。



 マサラタウンで働くお父さんの元には、中身が混ざったお弁当が届いたみたいです。泣き腫らした顔だけど、満面の笑みで登場した少年。事情は僕の方から連絡しておいたので、お父さんもそれほどビックリせずに済んだみたいです。
 帰りは二人で帰ると言うことだったので、少年がマサラタウンに到着した時点で僕の仕事は終わり。

 あとで聞いた話だと、少年の小さくて大きな冒険談はなかなか面白かったそうです。
 今ではお父さん指導の元、たまに草むらに入ってポケモン勝負を勉強中とのこと。少年もそのうち旅に出て大きな世界を見てくるのでしょうか?気になるところですが、僕も次の仕事があるので今日はこの辺で失礼します。

 お仕事のご用命がありましたら、なんなりと僕にお申し付けください。全国各地、何処へでも参ります。


 では、またの機会に。
万屋さんは何かと便利そう(キャラ的に)。

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