第6話 いざ、クロチ村へ
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
少し肌寒い夜風が通り過ぎ視線を足元から正面に移すと、自分の前を歩くサルサの毛並みが僅かに揺れるのが見えた。
そろそろ日の出が近づいている筈なのだが、夜空を支配しているのは無数に散らばる星と月ばかりで、全く眩しさは感じない。
僕とサルサは今、クロチ村と言う村に向かって歩みを進めている。
僕の記憶を取り戻すにためにまずサルサが提案してきたのは、情報収集と資金の調達だ。
情報収集はこれからしていけば良いとしても、問題は資金の方にある。
恐らく長旅となるため、食べ物を買ったり必要な物を買い揃えたりすると、相当な金額がかかるのは確実だ。
けど僕とサルサは見ず知らずのポチエナに襲われて逃亡したため、お金は愚か食べ物すら持っていない。
そこで旅の準備をすべく、クロエ村に住んでいるサルサの親友を訪ねるつもりだそうだ。
「あっ、見えてきたぜ。あの小さい村がクロエ村だ」
サルサが指差す先を見ると消えかけた焚き火が何個も燃えており、その近くには一戸建ての家がいくつか立ち並んでいるのが見えた。
焚き火は恐らく明かり代りなのだろうが、野外に電灯を使っていないあたり、村の規模もかなり小規模なのだろう。
「小さい村だね・・・・・・、えっと彼処にサルサの親友が居るんだよね?」
日の出前という時間帯のためかどの家も明かりがついておらず、誰も居ないのではないかと思ってしまった。
「サハラの事か?あいつならたぶんこの村に居ると思うんだけどな・・・・・・。まぁ居なかったとしても、木の実でも採って売れば多少の金は稼げるさ」
サルサの親友はサハラって言うのか。
名前しか知らないからどんなポケモンか分からないけど、サルサが頼りにするくらいだ、凄いポケモンなのかもしれない。
「あー、手土産無しで訪ねるとサハラの奴うるさそうだな・・・・・・。面倒だけどどうするか・・・・・・?」
再びクロエ村に向かおうと足を踏み出しかけた所で、突然サルサがめんどくさそうな感じで悩み始めた。
確かに何かあった方が良いのかもしれないけど、僕達は何も持って無いしお金も無い。
「手土産・・・・・・?でもポチエナに襲われたって言えば分かってくれるんじゃない?」
「それがさー、あいつ無駄に礼儀正しい奴なんだわ。前に何も持たずに訪ねたときなんて、『人の家に来るときは、何か持ってくるのが礼儀というものですよね?』とか言われてさ・・・・・・。ちょっと面倒な所があるんだよな、サハラ・・・・・・」
裏声でサハラと呼ばれるポケモンの真似をしていたのだが、残念ながら本物を知らないため、似ているかどうかを知るすべは無い。
だが、手土産があった方が良い理由は何となく分かった。
「じゃあ何か食べられそうなものでも探しに行く?まだ日の出前だから時間はあるし・・・・・・」
何かしらの木の実でも生っていないかと、周りの樹木を見渡すが、どれも葉っぱばかりで実は生っていない。
「よし、この近くに小さいけど川があるからそこで魚でも採ってくるか。行くぞチピ」
行動力溢れるサルサは、思い付いたら即決行らしい。
どうやって魚を採るんだろうと思いつつ、着いていくチピであった。