25話 3にんめ

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「あー、えーと...その..ヒビキ!今まで悪かった!」
勝負も終わり大将イーブイは素直に負けを認めてヒビキに謝罪をしてくれた。
「随分と潔いじゃねぇか」
アイトは目を細目ながら懐疑的な視線を送りながら大将イーブイを見ると、大将イーブイは、ばつの悪そうな顔を浮かべると
「勝負は勝負だ。敗者の分際で勝者に意見はしねぇ。それが大将としてのオレの意地だ」
「そいつは随分とご立派なこと」
「ヘッ!なんとでも言いやがれ。約束は約束だ。もうヒビキを馬鹿にはしねぇ」
「へぇ~...ほんとかねー?」
いまだにアイトは信じられないという表情をしていた。
「アイト。大将君は嘘をついてはいないよ」
「なんでそんなこと言いきれるんだよ?」
「ハルキは嘘をついているかどうかわかる能力があるからね!」
ヒカリがなぜか自信満々に胸を張って解説してくれた。
「ま、まあヒカリが言ったとおり嘘ついていると違和感を覚えるみたいなんだ」
「ってことは、もし俺が嘘ついたらお前にはバレバレってこと?」
「そういうことになるね」
「マジかよ..これから気を付けねぇと..」
「集中してないと発動しないみたいだしそこまで気にすることはないと思うよ~」
「え?そうなの?」
「そもそも小さな嘘は日常会話での冗談の言い合いとかでもおきるし、そんなどうでもいい事に対してもいちいち発動してたら疲れちゃうよ~」
「「たしかに」」
「......ってなんでハルキも納得してるんだよ!」
「いや~、僕もこの能力知ったのつい最近だったから。アハハハー」
「つまり、こっち来てから発現した能力ってところか。..とりあえずこいつは嘘をついてないんだな?」
アイトの質問にハルキは頷く。
「....ハァー。わかった。俺からはもう何も言わねぇよ。それに許すかどうかはヒビキしだいだしな」
全員の視線が今回の勝者であるヒビキに向けられた。
「わ、わたしは....大将くん達のことを許しません」
「え?そ、そうだよな。ひどいことしてたしな..」
「自覚はあったんだねー」
うつむく大将君に容赦なくヒカリが追撃を加える。
「でも、今の大将くん達は許しています」
「え??」
許さないと言った直後に許すと言われて混乱する大将君の変わりにハルキが質問した。
「ヒビキ。許すけど許さないっていうのはどういうこと?」
「昔の大将くん達は許さないです。でも、今の...これからの大将くんたちは許します!」
「わ、わけがわからねぇ...」
「ようは、今までヒビキにしてきたことは簡単に消えるもんじゃない。けど、これから反省していく気があると信じて許すっていってるんだよ。だろ?ヒビキ?」
「はい!今後の大将くんに期待してるです!」
アイトの問いかけにおでこに前足を当てて、敬礼のポーズをとると眩しいくらいの笑顔でヒビキは答えたのであった。

――――――――――――――――――――

勝負も終わり当初の目的であった進化の石を受け取りにきた。だが..
「なぁハルキ。これどっから入ればいいと思う?」
「どっからって言われても...」
「二匹とも。パパがさっき慌てていた理由がこれですよ..」
「よーし。ヒビキ。ちょっとこの鞄あずかっててー」
「あ、はいです」
「里っていうから田舎だと思っていたがこれは予想外だな」
「そうだね。まさかこんなにポケモンがたくさんいるなんて…」
話は少し前に遡り、ヒビキが勝負を終えた直後、ヒビキのパパこと長イーブイは「私は進化の石を渡す手続きがあるので先に行ってるよ。すまないが、場所はヒビキに聞いてくれ!それでは!」と慌てるように走って行ってしまった。
なぜあの時はあんなに急いでいたのか不思議だったが、今となってその理由がわかった。
そう。鉱山から採掘されたものが運ばれてくる建物は人ならぬポケモンでごった返しになっていて、入ろうにも入れないような有り様になっているのだ。
「めちゃくちゃ混んでるな...」
「今日は進化の石が運ばれてくる日ですからね。商売ポケモン達や進化したいポケモン達がこぞって集まってくるんです」
「へ、へぇ~..」
これにはハルキだけでなくアイトも苦笑いをせざるをえなかった。
「どうするよハルキ。なんか朝の通勤ラッシュの電車みてぇだぞ」
「どうするって言ったって、依頼なんだし行くしかないよね…」
まさかこの世界に来ても満員電車の気分を味わうはめになるとは...。
ハルキがげんなりしつつも、突入する覚悟を決めたとき、ポケ混みの中から黄色い手足がゆっくり出てきて、「ぷはー」と見慣れた少女――ヒカリが風呂敷を背負いながら出てきた。
その姿はさながら漫画に出てくる泥棒がしているような背負い方であったが。
「貰ってきたよー」
「え!?ヒカリいつの間に行ってきたの?」
「う~んと、ハルキとアイトがどっから入ろうか迷ってる辺りかなー。あっ、ヒビキ鞄ありがとうねー」
「ヒカリちゃん早いですね!ヒカリちゃんが重いの背負っているんですから鞄ぐらいわたしが持っていますよ!」
「そうお?ありがとー」
あの中に突入していた事すら気づかなかったハルキとアイトは呆気にとられて、少しフリーズしてしまったがすぐ正気に戻り、ヒカリにお礼を言った。
彼女は「あの程度のポケ混みならなれてるよ!まあ、ちょっと狭かったけどねー」
と笑って答えていたが、比較的ポケモンが少なかったそよかぜ村でそんな経験する機会が果たしてあったのか少し疑問ではある。
こうして僕たちは目的の進化の石を手に入れ、いったん長の家に戻って滞在中に泊めてくれたお礼をいいに言った。
「数日間お世話になりました!」
「ハハハッ!ハルキ君はあいかわらずかしこまっているね。この里に来たときも言っただろ?別にかしこまらなくてもいいって」
「でも、救助隊の代表としてきていますし、体裁は守らないと...」
「少なくとも君達は私にとってすでに友人のような存在だ。救助隊だからなんて気にせず話してくれ。それに世話になったのはこちらの方だ」
そう言いながら長イーブイは頭を下げた。
「私は長として.....いや、1匹の父としてヒビキを気にかけていた。それも過剰なまでに。
私のように里の看板としてイーブイとしているのではなく、進化することができない特異な体質だと判明してからは心配で仕方なく、『この子は弱いんだ』と決めつけてあの日から娘を信じていなかった。ずっと『私のせいだ。わたしが何とかしなくては』と思っていたんだ。
しかし、今朝の勝負でヒビキは私が思っているほど弱くないことが証明されて気づいたんだ。私の知らないうちに私の娘はちゃんと成長していたという当たり前のことに..。ありがとう」
「パパ...」
今まで知ることのなかった父なりの気持ちを知ったヒビキは瞳を僅かに潤ませていた。
(進化できないと知って娘を信じられなかった父と、できないと知っても諦めずにひたすら自分を信じぬいた少女か..)
この光景と似たものをハルキは以前に見たことがあった。片方は信じられず、片方は信じ続けた、そんな関係を..
「パパ..。お願いです!わたし、救助隊に入ってみたいんです!わたし、まだまだ弱いですけど、いつかきっとパパを安心させられるくらい強くなります!
だから…」
「わかってるよ。そもそも、パパがなんでこんな話をしたと思っているんだい?」
「え!?それじゃあ...」
「ああ。行ってこい。パパはヒビキの事を応援してるよ」
「やったぁ!」
「よかったね。ヒビキ」
「はい!」
「これからもよろしくねーヒビキ!」
「はい!よろしくです!」
「ったく。救助隊になるってだけなのにみんな大袈裟だなー」
「これもアイト君のおかげですよ!ありがとうございます!」
「お、おう..」
「あ!アイト顔あかくなってるよ!」
「なっ!?」
「クールぶってないで素直に喜べばいいのに。1番ヒビキを気にかけてたのはアイトだろ?」
「そうなの?も~、それなら、照れないで素直になりなよー」
「ああぁ!わかった!わかった!すげぇ嬉しいよ!これでいいか!」
周囲から茶化されたアイトはやけくそ気味に喜びの言葉を言うとそそくさと家の外に出ていってしまった。
「まったく。素直じゃないんだから」
「ヒビキ。あれは照れ隠しだから気にしなくていいよー」
「わかってます!アイト君はいいポケモンですから!」
ニッコリ笑うヒビキの顔をみて、思わずハルキとヒカリも笑顔になった。
「それじゃあ、私は旅に出る準備してくるです!」
前足をおでこに持ってきて敬礼のポーズ(よっぽど気に入ったようだ)をしたヒビキが自室に荷物を取りに行った。
「ハルキ、私たちはどうする?」
「アイトは少しそっとしておいた方が良さそうだから僕らはヒビキの荷物を纏めるのを手伝いにいこうか」
「そうだねー」

―――――――――――――――――――――――
家の外に出たアイトは家の壁によりかかるとため息を1つこぼした 。
「ハァー.....ったく。あいつら好き勝手言いやがって…俺をなんだと思ってるんだよ」
口から出た言葉とは裏腹にアイトの表情は穏やかだった。実際にハルキやヒカリが言う通りすごく嬉しい。けど、
「そういうのを口に出すのは苦手なんだよなー」
「何が苦手なのかな?」
「ゲッ!パパさん」
「里の長に向かってゲッとはなんだね?」
「す、すんません」
「ハハハッ。そんなに縮こまらなくてもいい。少し君をからかってみただけだ」
「なんだ..焦って損しましたよ!」
「いやー。すまない。娘と君達のやり取りを見ていたら昔の懐かしい思い出がよみがえってしまってね。許してくれ」
ハルキ達だけでなく長イーブイにもからかわれて少しムッとした表情をしたアイトに長イーブイは軽く謝罪を入れると少し遠い目をした。
「パパさんにも俺やハルキみたいな友人。ポケモンがいたんですか?」
「そりゃあいたさ。私だって若い頃は里の外に出て旅をしたもんだよ。旅の仲間だっていたんだ」
「へぇー。それってどんなポケモンだったんですか?」
「そうだな。のろまなのに誰よりも気が強くてどんな時も諦めなかったやつ。普段はぼーっとしているようにみえるが半端なく強くて誰よりも心配性なやつ。バトルは強くはなかったがいつも明るくニコニコして誰よりも優しかったやつ。そんな飽きることのないポケモンたちと私は旅をしていたよ」
長イーブイが短いながら語った旅をしたポケモンたちの話は、とても楽しく、いつまでも色褪せない思い出なんだと感じさせるには十分なものだった。
「アイト君、どうか娘をよろしく頼むよ」
「それは俺だけじゃなくハルキ達にも言ってやってくださいよ」
「もちろんそのつもりだ。だけど私はアイト君には別件でお礼を言わなくてはいけない」
「何をですか?」
「こんなことを聞くのは野暮だと百も承知だ、無論深く詮索するつもりはないし、この事を聞くことで君を傷つけてしまうかもしれない」
やけに丁寧な前置きにアイトも何を聞かれるのか自然と表情が固くなり、長イーブイが発した言葉でさらに固くなった。
「アイト君、君はヒビキと同じ、もしくはそれよりひどい目に合った経験がある。そうじゃないかい?」
「ッ!?どうしてそのことを!?」
「目を見ていればなんとなくわかるさ。それにあの時、私を勝負の場に連れてくために説得してきた君の表情は必死そのものだったからね」
「あ、あの時は無我夢中で..でも、それだけじゃ、ただヒビキの頑張りを見てほしいって思ってるだけにしか見えないんじゃ...」
長イーブイは微笑みながら静かに首を横にふると優しい声で返事をした。
「そんなことはないさ。それに昨日今日会ったばかりのポケモンにあそこまで必死にはなれない。いじめられている子となれば尚更関わりたくないって思うのが普通さ。それがほっとけないという事は、自分も同じ経験をして気持ちがわかるからこそだ気にかけたのだと私は思ったんだがどうだい?」
「..........。」
アイトはその推理が間違っていなかったのと突然その話題を振られたためとっさに答えられなかった。長イーブイはそれを肯定ととらえて話を続ける。
「それに、あの時の君の目は何かを誓っている者がする目だった」
「何かを...誓っている目..?」
「ああ。私は旅をしていた頃、たまにそういうポケモンと出会っていたからわかるんだ。そういうポケモンは芯、つまりハートが強いのさ!そんな君の目をみたら断れなくなって私は連れ出されたってわけだが、君のおかげで私は娘とちゃんと向き合えたよ。ありがとう」
「お、俺はそんなに精神(メンタル)強くないですよ。....ハルキがあの時いてくれなきゃここにいないだろうし..」
「それでもあの場でヒビキを気にかけたのは君だ。今朝、私を連れ出したのも君だ。それは誰かにやれと指示されたものではなく君が自分の意志でした行為であって誇るべき行為だ。自信をもっていいんだよ」
「自信をもつ....すぐには無理だけどそうあれるようにがんばります...!」
「うん。その意気だ!ヒビキを頼んだよ!救助隊のヒヨッコ君!」
「任せてください!あと、ヒヨッコは止めてくださいよ!」


―――――――――――――――――――

「じゃあパパ!行ってきまーす!」
「気を付けていくんだぞ!みなさん!どうかヒビキをよろしくお願いします!」
「はーい」
「わかりました」
「それじゃあ、レベルグ目指して出発だ!」
「「「おーー!」」」
こうしてハルキ達はイーブイの里を後にしたのであった。

これにてイーブイの里編終わりでーす。
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