21話 イーブイの里

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ハルキ達がレベルグを出発してから、途中でお昼を挟む程度には時間が経った。道中にこれといった危険なこともおこらず、ひたすらのどかな景色が続く草原を地図とコンパスを頼りに進んでいく。
この世界は人間の世界ほど建物がひしめき合ってなく、町から離れると目印となるものがあまりないので方角を見ながら進むことになる。といっても定期的にやりとりしているイーブイの里へは道がちゃんと整備されているので道なりに歩いていけば迷うことなく到着できる。
「そんなに遠くないって言ってたけど、あとどのくらいかかるんだ?」
「もうそろそろつくはずだよ」
「あっ、見て見て!なんか見えてきたよ!きっとあそこだよ!」
歩いていくうちにだんだんと、建物らしいものが見えてきた。どうやら石造りの家のようだが綺麗に整形されているわけではなく、もとからあった石をくりぬいて、最低限形を整えて住めるようにしたような感じだ。建物の表面にある無数の凹凸がそれをより印象づける。
里の入り口には扉こそないが、葉っぱでできたアーチ状の門のようなものがあり、近くにお鍋のような簡素な鉄のヘルメット(?)をかぶり、首から笛を下げた、いかにも門番のようなイーブイがいる。
「すみません。僕達、救助隊の副団長の依頼で来たんですけど..」
「依頼?..ああ!そういえば救助隊から新入りが進化の石を取りに来るってさっき連絡があったな。ようこそイーブイの里へ!この里の長の家はここから真っ直ぐ進んだ突き当たりの大きなツリーハウスだ。そこで進化の石を受け取ってくれ」
「ありがとう!二人ともはやく行こ!」
「ヒカリのやつ、テンション高いな~」
「やっぱり、始めてくる場所って少しワクワクするからね。気持ちはわかるよ」
丁寧に教えてくれた門番のイーブイにお礼を言うとさっそく里の中に入った。
里の内部はイーブイの里というだけあってすれ違うポケモンはイーブイやその進化形ばかりでたまに観光目的や仕事などで来ていると思われるイーブイ以外のポケモンを見かける程度であった。

「君たちがサラさんの言っていた新入りの救助隊の子達か~。まだ、子供なのに救助隊とは、感心だな!」
ツリーハウスにつき、ハルキ達が事情を話すとあっさりと長に合わせてくれた。里のトップとも言えるポケモンに会うのだからもっと手続きに時間がかかると思っていたがそうでもないようだ。
「進化の石ならちょっと待ってくれ。明日には鉱山から採掘されたのがこちらに到着する予定になっている。それまでこの里でも観光していてくれ」
「お気遣いありがとうございます。そうさせていただきますね」
「ハハハッ!そんなにかしこまらなくてもいい。この里は取り立てて外部から来たものに対するおかしなルールなど存在しないからな。自宅だと思ってリラックスしてくれ」
「は、はぁ...」
僕達は長のイーブイの部屋から退室すると泊まる施設を探す前に里を見てまわることにした。
「ハルキは少し固すぎんだよ。ま、それがお前のいいとこでもあるんだけどな。だけど、あんまり気を張ってると疲れるだけだぞ」
「そうだよーもっと気楽に行こう?ね!」
「ありがとう二人とも。なんかちょっと癖になっちゃってて。これから気をつけるよ」
目上のような人が相手だとついつい敬語になってしまう。人間の世界では周りの目を気にするような日々を送っていたからなのかもしれないな。そんな事をボンヤリ考えながらハルキは楽しそうに話す、ヒカリとアイトの後ろを歩いていた。それから3人は里を散策し、たまに見かける露店でイーブイ饅頭なる名物品を見つけて、帰りにギルドのお土産で買っていこうかなどと話をして盛り上がっていた。

「うーん。さすがに里の端にくると建物もほとんど見かけなくなったね。一度里の中央までもどって、今晩泊めてくれる施設を探そうか」
「そうだね~。そろそろ日が傾くころだし、お腹もすいてきたよ~」
ヒカリはお腹を「ぐう~」っと鳴らすと恥ずかしそうにお腹を押さえながら笑っていた。
今僕達のいる場所は里の中心部とはうってかわって建物もほとんどみなくなり、木や雑草といった手付かずの自然が散見されているあたり、里の端にいるのは間違いないだろう。ヒカリのお腹の音を聞いたらなんだかお腹がすいてきたし。ハルキはもと来た道を戻ろうとしたとき、
「ちょっと待ってくれ。あそこにいるイーブイ達はこんなところでなにしてるんだ?」
アイトが指差す方を見ると木々の隙間から茶色い毛並みのイーブイが何匹か見えた。何やら言い合っているようだが遠すぎてよく聞き取れない。
「ほんとだ。何してるのかな~?」
「ちょっと見て見ようか」
ハルキ達は近づいていくと、木々で隠れていたイーブイ達が見えてくるのと同時に、だんだんと何を言っているのかも明確に聞き取れるようになってきた。
「だからいってるだろぉ~、お前みたいな落ちこぼれには無理だって!」
「そ、そんなことないです!」
「じゃあ、オレ達に勝ってみろよ!」
「そうだー!そうだー!」
「そ、それは...」
「なんだよぉー!やっぱりできないんじゃないか!」
近くの木の陰に隠れてひとまず様子を見ることにしてみたがどうやら何かもめているらしい。首からペンダント下げている1匹のイーブイを3匹のイーブイが追い詰めているような構図だ。3匹側にいる真ん中のイーブイが他の2匹よりも1歩前に出てしきっていることから差し詰めガキ大将といったところか。
「どうする?ハルキ?」
「もうちょっと様子を見よう。ただの喧嘩かもしれないし」
(できればアレであってほしくないな......)
すると、ガキ大将イーブイがペンダントをイーブイから取り上げた。
「あっ...わたしのペンダント返してください!」
「うるさいな~、落ちこぼれのくせしてこんな高そうなペンダントつけてるなんて生意気なんだよ!」
「キャッ!」
ペンダントをとられたイーブイは取り替えそうとしたところを取り巻きのイーブイに抑え込まれて地面に組伏せられてしまった。
「ひ、卑怯です!」
「卑怯?お前のような落ちこぼれが、あの伝説のイーブイになりたいって言うからわざわざ特訓できるような状況を作ってやってるんだからむしろ感謝してほしいぐらいだね!ハハハッ!」
「うぅっ...」
ガキ大将イーブイに笑われてなすすべもなく動けないイーブイは涙を溢していた。
「おい!てめぇら!」
「な、なんだお前は!?」
「俺のことなんかどうでもいい!さっさとその子から離れてペンダントを返してやれ!」
「う、うるさいな!お前、よそ者だろ!部外者は引っ込んでろー」
「「そうだー!そうだー!」」
「...お前らッ.!!」
「落ち着けアイト。熱くなりすぎだ」
「...ハルキ」
ヒートアップ寸前のアイトの肩をたたきながらハルキは前に出た。
「なんだ?まだよそ者がいたのか?」
「ごめんね。急に驚かせちゃって。僕達はちょっとこの里に観光に来てたら偶然君達を見かけてね。何をしているのかなと思ってきたわけだ」
「なんだそういうことか。俺たちはこいつが強くなりたいって言うから特訓に付き合ってるやっているのさ!なあ?」
「そうだぜ大将!」「特訓だぜー」
「ぐっ...」
「ッ!?てめぇ、どの口が...」
動けないイーブイを尻目にあくまでこの状況は特訓だと言い張るガキ大将イーブイ。その言い分に一瞬落ち着いた怒りが再熱しそうになったアイトを制止するように手を出して止めたハルキはニコニコしながら明るい口調で話を続ける。
「そっかぁ~。じゃあ、僕の心配は余計なお世話だったかな?」
「なに?」
「いやぁ~、てっきり1匹のイーブイをよってたかって『いじめ』てるのかと思ってねー。さっき、僕の友達に近くにいるイーブイ達を呼んでくるよう頼んだんだけど特訓なら問題ないね!」
「なっ?」
イーブイ達が動揺しているのを無視して、ハルキは明るい口調で続ける。
「あっ、そうだ!せっかくだし呼んできてもらったイーブイ達も一緒に特訓するのはどうかな?みんなで特訓するときっと捗ると思うんだよねー」
「こっち!こっち!ハルキィ~つれてきたよ~」
姿は見えないが遠くからヒカリの声が聞こえてきた。
「お!ちょうど僕の友達が連れてきてくれたみたいだね!」
「た、大将~」「ヤバイですよ~」
「お、お前ら情けねぇ声出すな!そ、そこのよそ者達!俺達は大事な用事を思い出したからここらで帰らせてもらうぜ!じゃあな!」
ペンダントを置いて、すごい勢いでこの場から走り去った大将イーブイ。
「「待ってくださいたいしょ~う~」」
それを追いかけるように取り巻きのイーブイも走り去ってしまった。
「大丈夫か?」
「ありがとうございます。わたしは大丈夫です」
アイトが倒れているイーブイに駆け寄ると起き上がるのを手伝ってあげてた。
「うまくいったみたいだねー」
「ヒカリもおつかれさま」
「あれ?他のイーブイを呼びにいってたんじゃないのか?」
合流したヒカリが背後に誰も連れていないことに疑問に思ったアイトの質問にハルキが答えた。
「そもそもヒカリは呼びになんて行ってないからね。大体こんな里の端っこの場所に都合よくイーブイがたくさんいる可能性も低いし」
「だから、私とハルキであの子達をここから遠ざけるように一芝居したってわけ!」
「へぇ~なるほどな..っと」
アイトは力が抜けたようにその場で尻餅をついた。
「アイト!?」
「大丈夫。安心したら足の力が抜けただけだから」
「アイトあんまり無茶するなよ。ただでさえお前は...」
「あー、分かってるよ。ちょっとすれば治るから」
「そうか?ならいいんだけど」
「....大丈夫です?震えていますけど」
先程、助けたイーブイが心配するような瞳でアイトを見つめていた。
「平気!平気!ちょっと疲れが出ただけだから!それよりお前の方こそ怪我は平気なのか?」
「このぐらいはいつものことです。だから大丈夫です」
「いつものことって...。くそっ、あいつら次また同じことしたら容赦しないからな」
イーブイが心配させまいとニッコリした顔でそう言う。それだけでこの子が毎日どんな扱いを受けているのかなんとなく察してしまい、心が痛くなった。
「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺はアイトっていうんだ」
「僕はハルキ」
「それで私はヒカリ!よろしくね~」
「わたしはヒビキです。さっきは助けてくれてありがとうです」
こちらに向かってペコリとお辞儀するイーブイことヒビキ。
「あっそうだ。ほら、これ。大事なものなんだろ?」
アイトは立ち上がって落ちているペンダントを拾ってくるとそれをヒビキに渡した。
「ありがとうです!」
ヒビキはペンダントを受けとると嬉しそうに首から下げた。
「それじゃあヒビキさんもたいした怪我もしてなかったようだし、そろそろ戻ろうか。今晩の泊まるとこもまだ決まってないからね」
「今晩泊まるとこ決まってないんです?ならわたしの家に来るといいですよ!お礼もしたいですから!」
「え?いいのか?」
「もちろんです!家は無駄に広いですからね!」
「じゃあお言葉にあまえて、今晩はヒビキさんの家に泊めてもらおうかな」
「やったー!ご飯と寝床の確保成功だね~!」
「ヒカリ、お前もう少しマシな言い方ないのか?」
「え?だって泊めてもらうんでしょ?」
「まあそうだけどさ..」
「アイト。ヒカリはいつもこうだから」
「なんか照れるな~。アハハー」
「仲がいいですね。それじゃあ案内するからついてきてほしいです。あ!あとわたしの事はさん付けしないでほしいです。なれてないので..」
「わかった。よろしくねヒビキ」
「はい!よろしくです!」
こうしてハルキ達は夕暮れの中、ヒビキの自宅にお邪魔させてもらうことになった。

そこまでイーブイの里!って描写少なくてすんませんm(_ _)m
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