はちのよん つかの間の会談

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 ロビーで話し込んでいると、その場に風の大陸から戻ってきたハクさん達が合流する。
 見慣れないリーフィアもいたけれど、ひとまずはお互いに知った事の情報yを交換する。
 ハクさんの話しによると、潜入している間に“リヴァナビレッジ”が襲撃を受けたらしい。
 それでもっと話を進めてみると、私達が“壱白の裂洞”で戦った一団と同じって言う事が分った。

 [Side Kyulia]




 「この店なら空いてるかもしれないわね」
 今日の予定は、こう言う事を見越して建ててるのかもしれないわね、きっと。あの後の事を簡単に説明すると、私達は簡単に次の日…、今日と明日のことを打ち合わせしてから床に就くことにした。借りている部屋でランベルに話を聞いたら、“弐黒の牙壌”の奥地で、行方不明になっている“エアリシア”の副親方…、サザンドラのサンドラさんを保護したらしい。私達はマスターランクの昇格試験の時に一戦を交えたけれど、“エアリシア”の試験が一番苦戦したと思う。種族上仕方ないって言われるとそれまでだけれど、そのぐらいあの人達は手強かった。…そんな人が瀕死の状態で保護された訳だから、改めて敵…、“ルノウィリア”の恐ろしさを実感した気がするわね。
 それから話しを今日の事に変えると、今朝は朝礼で直近の行動計画が発表された。私達が直接関わらない事もあったけれど、今日の私達はいわゆる休暇。“ルノウィリア”討伐前の休憩、それから急遽組まれたチーム内の交流って言う意味もあるけれど、私達にとっては後者が当てはまるかもしれないわね。朝礼が終わって一度ギルドを出た私とランベルは、朝食を兼ねて街に繰り出しているところ…。
 「ええと三組だから…、すぐに呼ばれるかもですね」
 「まだ早い時間ですから」
 「だけどモーニングのサービスがあるから、少ししたら混み始めるかもしれないね」
 一軒の喫茶店の前で立ち止まった辺りで、私達と一緒に来ているシャワーズの女の子、“変色のブレスレット”で姿を変えているアーシアちゃんが声をあげる。入り口前の名簿を見てくれたらしく、記入してから私達にこう教えてくれる。そんな彼女に続いて、サンダースの男の子、コット君が欠伸を我慢しながら呟く。…実は本当は昨日二人を連れてくるつもりだったけれど、色々話している間に店が閉まっていた。だから今日出直す事になったけれど、結果的に明日のチームで行動する事になったから同じだったのかもしれない。けれどランベルだけはアーシアちゃんとコット君、二人の事はよく知らないはずだから、調査前に良い機会をもらえたのかもしれない。それからこれは私の思いつきだけれど…。
 「…本当にアタシもご馳走になっても良かったのかしら? 」
 「キュリアさんがいいよ、て言ってくれていますから、お言葉に甘えましょう? 」
 若くして開発副責任者に就いているグレイシア、フィリアさんが遠慮気味に訊いてきた。彼女とはアーシアちゃんのギア越しに知り合った関係だけれど、昨日の潜入では彼女のサポートがあって成功した、って私は思ってる。だから昨日のお礼、それから明日の事も含めて、彼女にも朝食をご馳走するつもり。彼女とも落ち着いて話したかった、って言うのが本音だけれど…。
 「明日はキミに頑張ってもらう事になるか…」
 「ええと五名でお待ちのキュリア様? 」
 「あっはい。私達だけれど…」
 「席が用意できたので、ご案内しますね」
 三組待ちだったけれど、案外早かったわね? 話している間に順番が回ってきたらしく、ウェイターらしいピクシーが入り口から私の名前を呼ぶ。予想以上に早かったから頓狂な声を出してしまったけれど、ひとまず私は返事してその方へと歩く。すると彼女は一度私の後ろ…、ランベル達の方に目を向けると、人数を確認したらしくすぐに案内してくれる。店の中は少し混んでいたけれど、六人掛けのテーブル席に案内してもらえた。
 「ご注文が決まりましたらお呼びください」
 「分ったわ。…アーシアちゃん、コット君、フィリアさんも、好きなものを頼んで良いわよ」
 「本当ですか? じゃあ僕は…、このフレンチトーストにしてみます」
 「コット君はそれにしたんだね? なら僕はトーストセットにするよ」
 どれも美味しそうだから迷うわね。モダンな雰囲気の席に着いた私は、一人ひとりに目を向けながら声をかける。この店には初めて入るけれど、システムとかサービスはハクさんから聞いてきてるつもり。一応言い出しっぺの私が幹事になるから、それぞれの希望を聞き逃さないためにも耳をぴんとたてる。するとパッと見てすぐに決めたのか、一番年下のコット君が右の前足で絵柄の一つを指して教えてくれる。その流れに乗るようにして、ランベルもオススメメニューのうちの一つを口にしていた。
 「フレンチトーストとトーストセットね? アーシアちゃん達は? 」
 「んと私は…、Aセットでお願いしますです。他に沢山ありますけど…、フィリアさんはどうします? 」
 「そうね…。ナナシアイスのパンケーキにしてみようかしら? 」
 「みんな決まったわね? …すみません! 」
 こういう場所の注文って、結構好みが出るものよね? 四人分の注文をメニュー上で辿りながら覚えてから、私は尻尾を高く掲げて店員さんを呼ぶ。すぐに来てくれたから、忘れないうちに四人分、それから私のCセットの注文をさっきのピクシーに伝える。一応希望はこれだけだったけれど、店のモーニングの時間って言う事で、値段が変わらずに飲み物までサービスしてもらえた。私とランベル、フィリアさんの三人はビアーコーヒーで、コット君はモモンジュースでアーシアちゃんがパイルソーダ。予定よりも多くなったけれど、一通りの注文をメモし終えるとピクシーは厨房の方へと下がっていった。
 「こう言う所、初めてだから凄く楽しみです」
 「アタシはそれなりにあるけど、飲み物までサービスしてもらえる店はなかったわね」
 「シリウスさんが言ってたんだけど、アクトアの喫茶店は大体こんな感じみたいなんだよ」
 「ハクさんも同じ事言ってた気がするわ」
 「と言う事はもしかして、キュリアさん達は何回か来た事があるのです? 」
 「うん。タイミングは別々だったけど、僕はシリウスさんと、キュリアはハクさんとシルクちゃんと来てるみたいだよ」
 そうだったわね。あの日はまだ依頼者と依頼主の関係にすぎなかったけれど、今思うとあの日から始まったのよね? 注文を終えたって事で、私達は各々に話し始める。私と同じで前足をテーブルについているコット君は、今まで来た事がないらしく興味津々といった感じで声をあげる。それとは対照的に、フィリアさんは割と落ち着いている。ランベルはランベルで店の雰囲気を楽しんでいて、アーシアちゃんはたわいのない雑談に意識を向けようとしてる…。
 「フィフさんも来てたんですか? 」
 「フィフ…、シルクの事ね? 」
 「そう聞いてるよ」
 「…ですけどシルクさん、本当にどこに行っちゃったんでしょう…? 」
 「本当にそうよね…。私達も出先で情報を集めてたけれど…、ここまで聞かないと心配になるわね…」
 ジョンノエでも“ワイワイタウン”でも全く聞かなかったから…。あれだけ強かったシルクちゃんなら大丈夫だと思うけれど、風の大陸の事もあるから、本当に心配よね…。
 「行方不明になってる、って聞いてますけ…」
 「…あれ、フィリアさん? 昨日にはルデラに戻る予定、って聞いたんだけど? 」
 「ええっとあなたは確か…」
 アクトアの病院で入院してたはずよね? 話題がシルクちゃんの事になり始めたところで、私達五人以外の誰かが話しに入ってくる。私は窓に向かうようにして座ってるから気づけなかったけれど、多分私の向かいに座っているグレイシアの彼女で気がついたらしい。私は一瞬誰かは分らなかったけれど、振り返って見てみたら何とか思い出せた。その目線の先にいたのは…。
 「考古学者のウォルタさんよね? その様子だと、前足の方は大丈夫なのね? 」
 「八割方、かな? 本当は明日までは大人しくしてないといけないんだけど、委員長に無理言って退院してきた、って感じかな? 」
 「ウォルタ君のそういうところ、やっぱりシルクに似てるわね」
 ミズゴロウ時々ウォーグルのウォルタさん。会った時は骨折して入院していたけれど、この様子だと今は何事もないのかもしれない。
 「…あれ? もしかしてキュリアさん、ウォルタさんの事知ってるのです? 」
 「ええ。今日で会うのは二回目だけれど、ラツェル君に紹介してもらったのよ」
 「ギルドにいたブラッキーの男の子ね? 」
 「と言う事は、あの時に会っていたのですね? 」
 あの時アーシアちゃんがイーブイになってたのには驚いたけれど…、おとといの事なのに随分昔の事のように感じるわね。
 「そうなのよ」
 「ええっとお話し中申し訳ないんですけど…、この人は…」
 「考古学者のウォルタ君。コット君には私達の時代の“真実の英雄”、って言えば分るかもしれないわね」
 「しっ、“真実の英雄”って…、フィフさんの伝承と同じ伝説ですよね? 」
 「そうなのです。それからウォルタさんは、シルクさんの弟子でもあるんですっ」
 「そうだけどシャワーズさん、何で僕のこ…って、もしかしてその紋章があるって事は、きみってアーシア? 」
 「はいですっ。言うのが遅れちゃったのですけど、こっちに戻ってきてから色々あって、今はイーブイ、て事になってます」
 「原理とかはよく分らないんですけど、ブレスレットで今の姿になってます。…あっ、自己紹介が遅れてしまいましたけど、サンダースのコット、っていいます。ウォルタさんはフィフさんの弟子、って言ってましたけど、ウォルタさんなら、シルクさんの従兄弟、って言えば僕の事が分りますか? 」
 「ええっ? しっ、シルクの…従兄弟? って事はもしかして、二千年代の出身? 」
 「流れで来ちゃいましたけど、そうなります」
 確かコット君、知り合いの一人といる時に私達の時代に導かれた、って言ってたわね? 確かその知り合いは…、フライゴンって言ってたかしら? そういえば来た時から姿を見かけないけれど…、彼もどこに行ったのかしら? 彼の事は何も分らないけれど、コット君のこともあるから、少しだけ気になるわね…。




  つづく
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