いつも思うんですけど、私の1話1話って、短いですよね。
「テメェ、どこから来たっ!?」
「ん?この森は僕がポケモンのスケッチをする為に来ているからね。ここはポケモンが多くて多くて。」
「…ていうかテメェ、なぜ俺の言葉が分かる…っ!?」
「あぁ。そりゃ、ポケモンと話せる、からだね。」
飄々と、つかみ所の無い、奴。
こいつと話すと、気が狂いそうだ。
「して、なぜそんなにニンゲンを毛嫌いするんだ?」
「はっ、ニンゲンなんて所詮、ポケモンを道具としか思っていないんだろうよ。どうせ、お前だってそうだろう。」
「んー?それだけじゃないと思う。僕はポケモンを相棒…と思っている。まぁ、ポケモンを手持ちに持ってないんだけどな。」
「どうせ、嘘なんだろう?そうしてニンゲンは幾度と、俺たちを…ポケモンを裏切り、傷つけて来た。」
「…そう、だね。たしかにそうしているニンゲンはいる。」
俺と話している男は、背負っていたリュックやらなにやらをその場に置き、手を上げたまま、こちらへ、じりっと近づいて来た。
「ち、近づくな!それ以上近づくと、リーフブレードでたたっ斬る。」
「そうかい。なら、そうしてくれ。」
男は、歩みを徐々に速め、俺の目の前へと迫って来た。
斬られることを、恐れていないのか…?
いいや、怯えてる暇なんてない。
俺は腕の刃に力を込め、リーフブレードを打つ為のエネルギーを溜め込む。
最近は誰も入ってこなかったから、この感覚は久しぶりだ。
不意打ちだった。
不意打ちで、男は俺の額に触れた。
全ての思考が停止し、何が起こっているのか、理解できなかった。
理解できたのは、数秒たってからだった。
それと同時に、男は口を開いた。
「そうか、お前たちは、そうやってニンゲンに怯えて来たのか。」
男が手を離すと、何かがすうっと抜けていく感覚があった。
直感的に、記憶を読まれた。そう、俺は悟った。
「そうか。そうだったんだな。リーフ。」
「テメェ…何、しやがった…。」
「うん?君の記憶を読み取った。お前たちが受けて来たことは、すごく辛かっただろうよ。だから、俺はここから大人しく去ろう。」
「それで、お前はいいのか?」
「いいも何も、ここへ訪れたのは、これといって理由は無いからな。別の場所で、別のポケモンのスケッチをするまでだ。」
男はくるりと方向を変え、リュックの方へスタスタと歩いていった。
「あ。」
男はリュックを準備が完了して、ふと思い出したようにして、こちらに顔を向けた。
「お前達の存在をバラすような、姑息なマネはしない。お前達の生活を邪魔しても、利点は無いからな。」
「…なら、お前にもしも、利点があったのなら、お前は、バラすのか?」
男はフッと笑った。
「さぁな。」
サク、サクと、草むらの上を歩く音が遠のき、やがて聞こえなくなった。
何を考えているのか分からないあの男は、何をしたかったんだろうか?
俺はずっと、グルグル考えてみる。
しばらくすれば、湖からルシアが顔を出し、すぐ後にポケモン達と戯れて来たダークが帰ってくる。
俺はこの生活に不満は無い。
無いさ。
この平和がずーっと続けばいい。
そうさ。
あいつのことは忘れよう。
あいつの存在は、ダークやルシアに言わなくったって、別に何のことにもならない。
あいつがここの存在をバラさない。
俺があいつのことを無かった事にする。
それで、この平和は保たれるー。
お読み頂き、ありがとうございました!