12話目 また、守れなくて……っ!

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:7分
色々たてこんでて、遅れました!
お待たせ致しました、12話です!
「ラン兄っ!なんで、ここにっ!?」

「おうっ、シャムとすれ違ってな。状況は把握した。これより、俺たちは戦うからな。チータ、頼んだぜー。」

「あいよ」

チータとは、チルタリスというポケモンらしい。
水色の肌を、白い綿毛のようなもので包んでいる。

ランとチータは、迫り来るサザンドラやジヘッドをはどうだんやマジカルシャインなどで迎え撃つ。

「ルナッ!」

ルナを呼ぶ叫び声に、アルトとルナは振り向く。
そこには、少し涙目になりながら、ハァハァと息を切らしているシャムの姿があった。

「また、また……。ルナを守れなかった……っ」

「シャ、シャム……」

シャムの瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちる。
その姿を見て、ルナは少し悲しみの表情をする。

「あの、ときも……。守れなくて……。故郷も、ルナも……っ、皆も……っ。」

シャムの故郷。同時に、ルナの故郷でもある。
シキサイの森。

「ずっと、悔やんでた……。誰も守れなくて、何も守れなくて……。自分が無力で……っ!」

「それ以上はやめてください。シャム、あなたは自分を責めすぎです。」

淡々と、冷静な声がシャムの後ろから聞こえた。
背はランよりも高く、スラッとした体形。黄緑の頭に白いロングスカートのようなものを穿いてる、そんなポケモン。

「ええと、自己紹介が遅れましたね。私はサーナイトのルルアと申します。最近はフリーで探検家をやっています。」

ルルアは美しくお辞儀をすると、ちょうどサザンドラ達を蹴散らしたラン達の方へと歩いていった。
何を話しているかはよく分からないが、少し深刻な表情なのが分かる。
それからランとチータもこちらへ合流し、ランはアルトとルナの頭をわしゃわしゃと撫でた。

「お前達、よくやった!」

にししっ、と笑うランの姿を見て、アルトは力が抜けて、その場に座り込んだ。

「さて。それからお前。」

視線がシャムの後ろにいるスリープへと移った。
その視線に、スリープはビクビクしながら「はいっ」と受け答えをする。

「お前、お尋ね者の掲示板に名があったな。今からルルアがジバコイル保安官の元へと送り届ける。暴れたらー。うちのルルアは怖いぞ。」

「ラン。なぜ私がやらなきゃならないのです?早急に帰って、報告書の作成をー。」

「もう、報告書は要らないだろう。もう、解散したのだから。」

「そう、ですが……。」

ルルアはうつむきながら、スリープの腕を拘束する。
「行きますよ。」と冷淡な声を発して、スリープと共にトゲトゲ山を下りはじめた。

「よし。あとはーっと。チータ、アルトとルナをプクリンギルドまで送り届けてくれるか?俺は少しシャムと話をする。」

「あいよ。」

チータはアルトとルナに向かって、「乗って?」と優しい声を掛けながら、もふもふの翼を開いた。

アルトとルナが乗ると、「行くよぉー」と声を掛け、あとは青い大空に飛び立った。

「うっわぁー!綺麗ーっ!」

「すっごい……!」

チータは、うまく旋回しながら、景色を楽しんでもらえるようにと心配りをしながら、ギルドへと向かった。
緑の大きな森、その森に流れる透き通った川。

そしてー。

緑の光を放つ、不思議な、歯車。

「時の歯車だね。少し見てみる?触れてはいけないけれど、見るだけなら大丈夫だから。」

チータは旋回して、大地に降り立つ。
時の歯車ー。それは、その土地の時を司るもの。それが無くなれば、たちまちその土地の時は止まる。

「はじめてだろう?時の歯車を見るのは。僕は一度見たことがあるんだ。ランとね。」

チータはモフモフの翼をおさめながら、時の歯車へと近づく。
淡い緑の光を放っており、神秘的。
時の歯車は、どんなに凄い悪党であっても盗まないと言われる代物。触れてはいけないことを、誰もが知っているし、時が止まる恐ろしさも分かっているのだろう。

「時の歯車。こんな小さなものに、時が任されているとは、不思議だよね。」

チータは少し微笑むと、「いこう。」と声をかけ、アルトとルナを乗せた。

チータはモフモフの翼を広げると、大きな風を大地に起こして飛び立ったー。





「とーちゃーく。シャムとランは戻って無い様だね。僕も少し待たせてもらうかな。」

チータはギルドの入り口の真ん前に降り立つと、アルトとルナを降ろし、少し体の力を抜いた。

「どお?空の旅は。」

「楽しかった!また乗せてねっ!」

ルナが目を輝かせて答える。よほど楽しかったし、ワクワクしたのだろう。

「アルトくんは?楽しかった?」

「うん、満足。」

「それは良かった♪」

嬉しそうに笑うチータは、どこかあどけない。
美しい声でハミングしはじめたチータの歌声を、アルトとルナは楽しそうに聞いていた。

「ーっと。アレはランとシャムだね。」

ギルドの前の階段を上がってくるランとシャムの姿を見つけ、チータは「お疲れー」と叫ぶ。

「流石に空を飛ぶのは速いな。トゲトゲ山から歩いて来るのは苦じゃないがな。なんつーか、ねぇ。」

額に汗を浮かべていたランはそれを拭うと、その場に腰掛けた。

「チータ。そろそろ行くか。」

「いい、けど。ランは来たばっかじゃん。大丈夫?」

「ああ、ルルアも待たせてるしな。何度かテレパシーで怒りの連絡が来てな。」

にししっと笑うランを見て、チータは苦笑い。
チータは背中に乗るよう促し、ランは華麗に乗った。

「俺たちは行くからな。アルト、ルナ。シャムのこと頼んだぞーっ!」

「はーいっ!」

「えっ、逆じゃないのかっ!?」

チータの姿は水色の大空に飛びたち、やがて姿は小さくなって見えなくなった。

「さて、と。今日はもうギルドで休もう。」

「そうだね。アルトも疲れたでしょ?」

「うん。」

ギルドのはしごを器用に使いながら、地下に降りる。
地下二階では、先輩のヘイガニやキマワリなどがいそいそと働いている。

「キャーッ!お疲れ様ですわーっ!」

「キマワリもお疲れ様。」

簡単な挨拶をしながら、アルトとルナは弟子部屋に戻った。
いつの間にか後ろについてきていたシャムの姿は無く、探してもどこにも見当たらない。

どこかへ出掛けたのだろう。

疲れたアルトの思考回路はあまり巡らず、ベッドに横たわると、すぐに寝息をたて始めた。

「あははっ、アルトお休み。」

ルナは窓から身を乗り出して、風を浴びていた。

「わぁ。もう夕方だね。」

そう発したルナの顔は、深刻な表情だった。
何を考えているか分からないルナはもう一言、ポロリと口から漏らした。

ーアルトに、なんて告げよう?ー

その言葉は、日が暮れ始めた夕空に消えていった。
伏線。
忘れずに回収したいですね(´;∀;`)

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想