この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
お待たせしました。第八話です。
[第八話 ハヤテ、敵陣へ]
「…やはりそうでしたか……」
ハヤテはため息をついた。ハヤテは彼らの親友が敵の一味のガブリアスであることに気づいていたのだった。逆にツバサはその事実に気づかなかったようであり、驚きの表情を浮かべている。
「彼が敵の一味にいる事には気づいていました。でも彼は正義感の強いポケモンです。そんな彼が簡単に心を変えてしまうなんて思えません!だからハヤテさん、彼を…助けて……」
ハハコモリは消え入るような声を出しながら、ハヤテに向かって頭を下げた。
「…我々はヒノちゃんを助けることを目的としています。しかし、救助対象者が1匹増えても我々には何の問題もありません。ましてや依頼主がヒノちゃんの育て親の貴方ならば尚更です。」
その言葉を聞き、ハハコモリは顔を上げた。
「そ、それじゃあ……」
「もちろん、助けましょう!」
ハヤテは力強く頷いた。
◆◆◆
その頃、里から遠く離れたとあるダンジョンでは……
⁇1:おい、「緑の里」まであとどれくらいだ?
⁇2:まだまだかかる……だが急がねば……
⁇3:奴らを仕留めなければならないのだからな……逃げられたら厄介だ……
3匹のポケモンが木々をかいくぐりながら走っていた。
⁇1:しかし、近道とはいえ俺はダンジョンは通りたくなかったな……
⁇3:これは命令だ、我慢しろ……
⁇2:ああ、我らがボス、闇王様のな……
◆◆◆
再び、緑の里では……
(聞いたところ、奴らのアジトはあの山の中、入り口は岩で覆われ隠されている、か……)
瓦礫を避け、ハヤテが走っていた。向かう先は盗賊団「ブラックウォール」のアジト、つまりツンベアーたちの本拠地である。
(急がねば……)
ハヤテは走る速度を上げた。
しばらく走っていると、ハヤテは前方に複数の波導を感じた。
(なるほど、どうやらあそこが敵のアジトらしいな。)
その道の先は行き止まりであったが、そこには岩の壁があり、その前には2匹のポケモンがいた。
「ん?おい、何者だ!」
その2匹のポケモンはハヤテに気づき、大声を上げた。
(まずは……)
ハヤテは2匹を無視し、両手を合わせ、波導の塊を作った。
(岩で覆われた壁!)
「波導弾!」
ズドンッ!
壁に向かってハヤテの《波導弾》が放たれた。
カッ!ドガアァン!!
轟音と共に岩壁が音を立てて崩れ落ちた。砂煙の上がるそこを、目を凝らして見てみると、確かに崩れた岩の奥に空洞がある。
「うう……」
岩壁の前にいた2匹は爆発に巻き込まれ傷だらけで倒れていた。
「悪く思うな、お前たちは敵なのだからな……」
ハヤテは倒れた2匹にそう言うと、洞窟へと進んでいった。
「何の音だ!」
「入り口の方だぞ!」
「おい!急げ!」
ハヤテの《波導弾》による爆発音と振動は辺り一帯に響き渡り、洞窟内は一気に騒がしくなった。
「手の空いてる者はすぐに入り口へ向かえ!状況を確認しろ!」
盗賊団のポケモンたちが次々に入り口へ向かう。少しして怒鳴り声と爆発音が響き渡るが、すぐに悲鳴がその音に重なって聞こえるようになった。
「ツ、ツンベアー様ぁ!」
敵の1匹がツンベアーの元へ向かう。
「緊急事態です!侵入者が入り口付近で暴れています!我々では押さえきれません!侵入者の名は……」
そのポケモンは必死で内容を伝えようとしたが、ツンベアーは途中でそれを制した。
「ああ、言わなくても分かる。奴が来るのを待っていたからな。」
ツンベアーは薄気味悪い笑みを浮かべながら立ち上がった。
「やっと来たか、ハヤテ…!」
◆◆◆
「敵が多いな…!」
入り口ではハヤテと盗賊団のポケモンたちとの戦いが続いていた。しかし、倒しても尚、奥から増援が来るため、敵は一向に減らなかった。今もハヤテの周りを多くのポケモンが囲んでいる。
(ツンベアーたちとの戦いに備え、ここで余計に技は使いたくないな。やはりここは格闘攻撃で……)
「かっ、かかれぇ!」
うおおおっ!!
合図と共にたくさんのポケモンたちが一斉にかかってくる。ハヤテはそれらをうまくかわし、そのうち1匹を掴んで投げつけた。
ドカッ!
「うわあっ!」
これで後方に隙間を作り、ハヤテは前方の敵の技をかわしながら素早く後方に退く。前方にはニョロゾが立ち塞がった。
「水鉄砲!」
大量の水がハヤテに押し寄せるがハヤテは棍棒を素早く振り回し、水鉄砲を叩きつけ、打ち消した。更にその勢いのまま棍棒をニョロゾの丸い腹めがけ叩き込んだ。
「うぎゃっ!」
ニョロゾは敵を巻き込みながら吹き飛ぶ。周りの敵がそれに怯んだ隙に、ハヤテは棍棒を振り回しながら敵の中へ飛び込んだ。そのまま棍棒で次々に敵を殴りつけ気絶させた。
「うっ…うわああ……」
周りの仲間が皆倒れ、敵はたった1匹になり、そのポケモン、バルキーは目に涙を浮かべ、完全に怯えてしまった。
スッ……
「ひっ!」
ハヤテは無言で棍棒をバルキーに突きつけた。
「お前たちのボスはどこだ…?」
「だっ、誰が答えるかっ!」
ハヤテの問いにバルキーは後ずさりしながらもハヤテに反抗する。ハヤテはそれを聞くと無言で棍棒を振り上げ、バルキーに向かって振り下ろした。
ドゴオオッ!!
「ひええっ!」
棍棒はバルキーの耳元をかすめ、地面を叩き、大きくへこませた。
「いっ、言う!言うよ!ボッ、ボスはここを真っ直ぐ行ったところだよっ!ゆっ、許してくれえっ!」
バルキーはそれだけ言うと、あたふたと逃げていった。
「この奥か……攫われたのはヒノちゃん以外にも里のポケモンも大勢含まれている。ツンベアーたちと一緒でなければよいが……」
彼らが一緒にいると戦闘時に巻き添えになる可能性がある。ハヤテはそれを心配しているのだ。
「とにかくまずはツンベアーを倒すことが優先だ。そしてガブリアスの真意を問おう。」
ハヤテは洞窟の奥へ向かっていった。
◆◆◆
ザザザッ!
洞窟を走っていたハヤテは突如大きな空間に出て足を止めた。
「何だ、ここは?」
そこは天井が無く、見上げると青空がよく見える。壁もそれほど高くない。どうやら洞窟の終わりのようである。
「そうだ!奴は!?」
辺りを見渡すが誰もいない。だが、ハヤテは何かに気づいたような素振りを小さく見せると、バッグから「銀のハリ」を一本取り出すと、自分の後ろへ向かって投げた。
キィン!!
金属のぶつかり合う高い音が響いた。ハヤテはゆっくりと後ろを振り向く。その視線の先、洞窟の入り口から出てきたポケモンを睨みつけた。
「へっへ、やっぱ『波導使いのハヤテ』って通り名のほどはあるな。死角からの攻撃も見切るとは……」
崖の上からツンベアーが「鉄のトゲ」を指で回しながら顔を出した。
「ツンベアー!里のポケモンたちは、ヒノちゃんはどこだ!」
「落ち着けって、無事だよ。今のところはな。」
ツンベアーは愉快そうに笑う。
「みんなに何かするつもりなのか…!」
「さあな、お前次第だ。心配なら今ここに連れてきてやろうか?」
「その必要はない!先にお前をここで叩く!」
ハヤテは棍棒を構え、跳び上がった。その勢いのまま、ツンベアーを殴ろうとしたが、
ガッ…!
立ちはだかったガブリアスに防がれた。
「くっ、ガブリアス!」
「勝負だ…ハヤテ!」
片腕のツメの先を真っ直ぐにハヤテに向ける。ハヤテもすぐ動けるように構え、戦闘姿勢をとった。
いかがでしたでしょうか。これより本格的に戦闘パートに入っていきます。つまりグタグタシーン満載、って言いたくないのですが、そう認めざるを得ない……