第四十一話 闇との決戦

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お待たせしました。第四十一話です。

[第四十一話 闇との決戦]

フワ……

あの活気はどこへ行ったのか、静寂に包まれるトレジャータウンに、ダークライは降り立った。

「誰もいないか……まぁ、あんな事になれば皆が怯えて家にこもるのも解らぬ事はないな。」

あんな事……恐らくハヤテとツバサが討伐隊の包囲網を突破し、トレジャータウンへと近づいた事だろう。ムウマージによりその事がトレジャータウンへと伝えられると、大した抵抗力も持たないポケモンたちは各々の住処にこもり、怯えているのだ。

「それに1匹の方がやり易い。少し時間がかかるからな。急がねば。」

そう言うと、ダークライは右手を天へ向けて高く上げた。


「ダークライ!」

暫くしてトレジャータウンへと帰還したハヤテは滑り込むようにダークライの前に現れた。

「…ハヤテか。此処に来たという事は、ムウマージを倒したのだな?」

ダークライは特に悲しさも怒りも、顔にも言葉にも表すことなくそう言った。

「お前の部下になってしまって可哀想だ。お前にとってはムウマージは所詮、捨て駒に過ぎない存在だったのだろう?」

「捨て駒とは言い様だな。名誉ある犠牲と言わないか。私の壮大な計画のな。」

「お前の為に死ぬ事に変わりはないだろう。それに私は一度も『ムウマージが死んだ』とは言っていないぞ。」

「おっと、それはそれは……」

普通なら真意を突かれて狼狽える所なのだろうが、ダークライは不気味にニタニタと笑うだけであり、その様な様子は見られない。

「やはり…お前にとってムウマージは……」

「捨て駒ではないと言っているだろう。しかし…私の為に身を粉にしようとするその精神は素晴らしいものだ。」

「ダークライ…!」

「そんな事よりハヤテ、お前に見せたいものがある。ほら、上を見ろ。」

薄ら笑いしながらダークライは顔を上に向ける。ハヤテも不審に思いながら後に続くと、

「なっ!?何だあれは!」

彼らの丁度真上の空に、トレジャータウンを覆い尽くせるほどはあるだろうか、巨大な漆黒の雲がかかっていた。…いや、あれば雲ではなく、

「闇だ。こんな量のものは見せた事が無かったな。」

「何を…するつもりだ…!」

「こうするのさ。」

ダークライはパチンと指を鳴らした。すると上空の闇の雲が一瞬縮こまったかの様に見えると次の瞬間、ドォン……と腹に響く様な轟音をあげて、爆風の様に広がったのだ。

「フハハ…どうだ?程よい薄暗さになっただろう。我らの最終決戦の舞台にはピッタリだ。」

ダークライは満足げに笑みを浮かべる。辺りは夕方並みの薄暗さに包まれていた。違いといえば夕陽特有のオレンジ色の光がない事だろう。

「ちっ……ダークライ…!」

波導を吸収し、霧状に分散した闇は上空で微粒子としてはたらき、周りの水分と結びついて雲を形成した。ただし主成分は水であるから、完全に空の光を遮断する事は出来ず、多量の闇と闇の僅かな隙間から光が漏れ出していた。しかしそれよりも気にすべき事は、

「何という…闇の量だ……」

トレジャータウンから見ても四方八方の空を灰色の雲が覆い尽くし、その中に切れ目という切れ目は見当たらない。あったとしてもそれは遥か彼方の大海原上で、青と灰色が地層の様にはっきりと分かれているのが見える。

「世界を覆う為にはやはり相当な量の闇が必要でな。ここを中心に闇は大体あれぐらいの距離を半径に、円状に広がっている。」

その大海原に目配せしながらダークライは説明する。

「既に世界の殆んどのポケモンが私の手で己が気付かぬ間に闇の憑依を受けている。その闇で全てのポケモンを洗脳し、終わり次第闇を分離させて全世界の空を覆い尽くす。それが私の計画のラストなのだ。」

両手を広げて得意げに話すダークライ。ハヤテは恨めしげにその顔を睨みつける。

「そんな顔で睨むな。お前はツバサの手で闇を取り除かれたのだろう。残念な事に、一度闇を得た者がその闇を失うと、その身体に闇に対する免疫の様なものが出来てしまう。再度闇を憑依させようとしても闇がその身体を拒絶してしまう。だからハヤテ、お前にはもう闇は取り憑かないのだよ。」

「それは嬉しい情報だ。不安に包まれる事なくお前を叩ける。」

「フハハハ、言ってくれる。」

ダークライは高笑いしながら、右手に闇の刀剣を作り出した。ハヤテの棍棒を持つ手にも自然に力が入る。

「話はこの程度で良いだろうな。私は早い所計画を進めたい。始めようか。」

その一言が幕開きだった。瞬間、ハヤテの姿は一瞬でダークライの前へと移り、ダークライの構えた刀剣と勢いに任せたハヤテの棍棒が激しくぶつかり合った。

「そう、その意気だ。それでこそハヤテだ。」

「黙れ…!」

ガキィィン!

火花を散らすかの様な勢いでハヤテは棍棒を力強く振り抜いた。そして体を回転させながら、その最中に手に隠し持っていた「鉄のトゲ」をダークライに投げつける。しかしダークライはまるで分かっていたかの様にそれを刀剣で弾いた。

「おらあっ!」

ハヤテは刀を持つ様に両手に棍棒を構えると、かけ声を上げながら刀で斬りかかるかの様にダークライへと振り下ろした。ダークライがそれを防御するのを見ると、舌打ちしながら投げ出す勢いで棍棒を次々に叩きつけた。ハヤテの連続攻撃に対し、ダークライはそれを淡々と刀剣で受け続け、両者は暫くの間、こう着状態になった。
だがハヤテは攻撃をしながらダークライの隙を探していた。そして、

「はあっ!」

ダークライの防御と防御の間に出来た僅かな隙をハヤテは見逃さなかった。一瞬で棍棒をダークライの右手に叩きつけると、自らの手に波導の力を送り、刀剣を取り落としたダークライへ、《波導弾》を撃ち込んだ。

「まずは…一発……」

爆煙がダークライを包み込む。それが晴れていく様子をハヤテは見つめていたが、ダークライの姿が目に入るとやや驚いたような顔を見せ、次いで鋭く睨み付けた。

「守る…か……」

「その通り。」

透き通った青色の薄い壁越しにダークライが笑う。胸の前でクロスさせた腕を解くと、バリアも消えた。

「基本的な攻撃ながら、着実に相手の隙を狙う…いい動きだ。私でなければ少しなりともダメージは受けていただろうな。」

「褒め言葉のつもりか?残念だが全く嬉しいとは感じないな。」

ハヤテは嘲笑するがダークライの顔色は全く変わらない。

「フン…そんなつもりはない。」

それだけ言うと、ダークライは黒いエネルギーを集中させた手を前に突き出した。

「悪の波動。」

ズオォォォッ…!

途端にダークライから闇色の波が放出されハヤテに迫る。ハヤテは横に跳び退きながら屋根の上へと退避した。だが闇のオーラは操られているのか、ハヤテの乗る建物へと方向転換し、迫ってくる。

ベキ…バキバキ…バキ…!

闇のオーラに触れた建物の外壁が、まるで歯ぎしりの様な音を立てながらひび割れていく。危険を察したハヤテが後ろへ跳ぶと同時に、建物はガラガラと大きく音を立てて崩れた。

(追撃型…!能力をここまで強化するとは…流石ダークライ……)

早い足取りで屋根伝いに逃げるハヤテの後を、闇のオーラは建物を次々に破壊しながら追いかける。ハヤテの通った後には綺麗な道筋が出来ていた。

(まずいな…このままでは町が滅茶苦茶になる。特殊技のあのオーラに触る事は出来ないから…ダークライ自身を攻撃するしかない…!)

そう決心したハヤテは跳んだ先の建物の角に上手く足を合わせると、力強く踏みつけて止まる事なく直角真横に方向転換した。

「…来たか。悪の波動じゃ間に合わんな。」

ハヤテの動きを確認したダークライは瞬時に技以外での対処策を練ると、《悪の波動》を解除して浮き上がった。

「はあっ!」

屋根を駆けながら来た道を戻るハヤテ。そのまま速度を落とす事なく、跳び上がると空中のダークライに勢いよく跳び蹴りを入れた。対するダークライはその蹴りを両手で受け止めつつ、その勢いを殺すために力を前方にかけながら後退した。ハヤテは掴まれた片足を外すべく、もう片足でダークライの体を踏み飛ばし、くるりと一回転しながら着地した。

「やるではないか。ほぼダメージは無かったが、私に攻撃を当てられた者はそう多くはおらんぞ?」

「そんな情報は必要ない。お前はここで必ず私に倒されるのだからな。」

「随分と余裕そうにしているな。何がそこまでお前の自身になっているのだ?」

ダークライの質問に対し、ハヤテは自らの胸を指で指した。

「私のこの身体に宿る…ツバサの…皆の意志だ。」

「ほう…成る程……」

ダークライは目を細めて笑った。

◆◆◆

[闇王の一味]

ダークライ
自らを「闇王」と名乗る伝説ポケモン。10年前から今日まで続く一連の事件の黒幕。冷静沈着、かつ冷酷非道な性格で一人称は「私」。
「闇」を操る事が出来、その力を使って世界を自らの手中に収めようという野望を抱えている。特有の悪夢を見せる能力、自身の単純な戦闘能力、そして闇の力の行使などを自在に行い、その強さは桁違いである。

ムウマージ
何処と無く嫌味を込めた敬語で話すダークライの側近。一人称は「私」。
かつて孤独に過ごしていたところをダークライに拾われ、それ以降ダークライに仕えている。ダークライほどではないが、自我を保ったまま闇を操る事が出来る。

いかがでしたでしょうか。話の都合で今回は切る場所微妙です。
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