この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
お待たせしました。第二十五話です。
[第二十五話 空間の恐怖]
完全に闇に支配されたパルキア。ツンベアーの時と違って自我はあるものの、力の制御が出来ない状態である。
「あれが…暴走状態……」
「ああ、あの目の色……力を抑えきれていない証拠だ…!」
ツバサもパルキアの状態を見て、冷や汗を流す。一方のパルキアは、体の周りに闇を揺らめかせながら、ニタニタと相手を馬鹿にするような笑みを浮かべている。
「ツンベアー以来だな……この状態を見せられるのは…!」
「ほう、ツンベアーってのは知らんが、俺のこの状態については知っているようだな。だったら説明は要らないな。」
パルキアはコキコキと肩を回し、それに合わせるように闇も大きく揺らめいている。
「さっさと始めようか。俺も早く帰りたいんでな。」
ズシン……ズシン……とパルキアは大きく足音を立てながら近づいて来る。ハヤテは右足に波導を纏わせ、バックの中に手を突っ込んだ。
「ああ、それと……」
瞬間、パルキアは一瞬でハヤテの目の前に移動、ハヤテを突き飛ばした。
「…くっ!」
棍棒で防御した事により、ハヤテに直接的なダメージはない。しかしハヤテはバックから出した道具を取り落としてしまった。パルキアはそれを拾うとハヤテを見てフッと笑いながら言った。
「もうこいつを使って俺を欺こうっていうのは効かないぞ。」
「ぐ……しまった…!」
パルキアの手中にある道具の名は「分身玉」。自身の分身を作り出し攻撃に対する回避率を上げる事が出来る優れものであるが、使い方によってはそれ以上の効果も期待できるものだ。
「手応えがあったくせに消えるのはおかしいと思ったが、考えてみればこれしかないよなぁ。」
パルキアは手に持った分身玉をまるでリンゴを潰すように握りしめ、粉々に砕いてしまった。
(分身玉に気づくとは……動体視力も上がっているのか…?何れにせよ、これでもう陽動も意味をなさないか……)
パルキアは分身玉を握り潰し、破片が付く紫の手を痛そうにわざとらしく振っている。
「さて、道具を使った湿っぽい戦いは止めだ。ここからは身体と身体のぶつかり合いにしようか。行くぞ…!」
低い声でそう言い切り、パルキアは片足を後ろにずらしたかと思うと、次の瞬間、闇を振り回しハヤテたち目掛け突っ込んできた。
◆◆◆
⁇:親方様……闇王様から例の指令です。
親方:そう……いつか来ると思ってたけれど……やりたくないな……。
⁇:親方様、お気持ちはわかりますが、彼らへの情は捨て切らなければなりません。彼らも最早、大罪を犯した凶悪犯なのですから。
親方:うん、わかってる。…それで、誰が行くの。僕は大丈夫だけど。
⁇:我々ギルドのメンバー、レスキュー探検隊から選抜したポケモンで向かおうと考えております。チームワークや個々の強さを考え、ギルドのメンバーはギルドのメンバーで、レスキュー探検隊はレスキュー探検隊でそれぞれ隊を組む予定です。
親方:わかった。…じゃあ、僕も行くよ。今、このギルドで彼らと対等に戦えるのは僕しかいないからね。
⁇:わかりました。では私もご同行いたします。
親方:ありがとう。じゃあ、早速編成を考えないとね。
⁇:…………。
親方:ん?どうしたの?
⁇:親方様……もしや、またその事務作業を私に押し付けるつもりですか…?
親方:うん。だって信頼してるもん♪。
⁇:そんなに顔をほころばせなくても……まったく……わかってますよ。そう言うと思って、もう作っておきました。
親方:わぁ、仕事が早いね。じゃあ、みんなに伝える役は僕がするよ。みんなを集めてくれる?
⁇:わかりました。ところで親方様……まさかとは思いますが……また集会の最中に立ったまま、目を開けたまま寝る事の無いようにお願いしますよ…?
親方:わかってるよ。今回はそんなことしてる暇が無いし、僕も寝てられないからね。
⁇:…親方様……今までは『わざと』寝ていたのですか…?
親方:(ギクッ…!)……さっ、さあ、みんなを集めよう!
⁇:(ハァ…やっぱり……)まったく、すぐ集めますので待っていてください。話すことはわかっていますね。
親方:うん。『ハヤテとツバサを討伐する。』だよね。大丈夫だよ。
親方:…というわけで、僕たちはハヤテとツバサの討伐を命じられた。でも、全員で行く事は出来ない。だからこっちで決めた選抜メンバーで行く事になったから、頭に入れといてね。
⁇:メンバーは、バクオングとキマワリ、親方様と私の4匹だ。レスキュー探検隊については隊内での話し合いの上で4匹を決めてくれ。他の者は万が一の事態に備え、トレジャータウンの警備、並びに修復の手伝いをしてくれ。
親方:知っているように、ハヤテとツバサはとても強いポケモンだから、油断は禁物だよ。
⁇:ハヤテとツバサはワイワイタウンにいる事が確認されており、其処までの最短距離として、『大森林地帯』を通る事になるが、体力の消耗を抑えるため、急ぎ足では行けない。ワイワイタウンまで3、4日はかかるだろうからそれを踏まえた上でバクオングとキマワリは準備を万全に整えてくれ。レスキュー探検隊と我々は別行動だが、有事の際は互いに連絡がとりあえるように。では、解散!
親方:準備できたね。では、これから僕たちはハヤテとツバサの討伐に向かいます!
⁇:移動中は敵襲に備え、常に警戒態勢をとるように。何事があっても動揺の無いようにな。
親方:さあ!それじゃあ行くよ!出発♪ 出発♪ 楽しく出発…たあーーーーーっ!!
◆◆◆
ズズゥゥン!!
ワイワイタウンから少し離れた山にも、ワイワイタウンからの地響きが伝わってきた。何が起こっているのか一目瞭然である。
「ハハハハハ!先程までの威勢はどこに行ったよ!本気を出せ本気を!」
勝ち誇ったように高笑いするパルキアを、硬い地面に横たわるハヤテは悔しそうに睨みつける。
闇の力を発動したパルキアの強さは異常だった。防御する間もなく、ハヤテたちは一瞬で叩かれてしまったのだ。僅かに闇の制御が出来ていないところがあるのか、多くの攻撃が外れ、急所への当たりが無かったことが、不幸中の幸いと言うところだろうか。
「うう……これでは何も変わっていない……」
デンリュウが呻き、なんとか立ち上がろうともがく。
「無駄だ無駄だ。お前たちが今の俺を倒せる確率など万に一つも無いのさ。さてと……」
パルキアはデンリュウを足蹴りすると、闇で一本の太い槍を作り出した。
「俺が最も恐れるのはハヤテ、お前の波導を操る力だ。たからお前から先に止めておこう。」
手のひらで槍を回しながら、パルキアはハヤテに近づいてくる。ハヤテは逃げようとするも、それを見たパルキアが伸ばした闇に体を掴まれ身動きが取れなくなってしまう。
「苦しみを感じながら……」
パルキアは薄ら笑みを浮かべながら、自分の頭の上に槍を振り上げる。
「…くたばれ!」
空から地面へ、パルキアの槍がハヤテ目掛け真っ直ぐに振り下ろされた。
いかがでしたでしょうか。一応隠していますが、途中の「親方」や「⁇」、正体丸分かりですね。