第2話 二人の特訓と小さなデート!?

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読了時間目安:14分
 次の日の朝、タクヤは家の近くのスポーツセンターの外周でランニングをしていた。

 日曜日の朝なのでまだ人はまばらだった。

 今日は午後からラティアスと一緒に練習しようと約束していた。ただその前に少しでもトレーニングしておこうと思ったのだ。大会でボロ負けしてラティアスに迷惑だけはかけたくなかった。

 大会まであと2週間。






 

 30分程走った後、少し喉が渇いたのでスポーツセンターの入り口にある自販機にタクヤは走っていく。

 自販機にお金を入れ、スポーツドリンクを買って一口飲んでまた走ろうとした矢先だった。



「あっ!ラティアス!」


「あっ!タクヤ!」


 偶然にもスポーツセンターに入ろうとしていたラティアスに出会った。

「タクヤも来てたんだね」


「うん。少し走ってた。」


「私は走って(飛んで)てもあんまり意味ないからね...実際問題走れないし。ここのトレーニング室を使おうと思ったの。」

「一緒にトレーニングする?」

 タクヤは尋ねる。

「いいねぇ!一緒にトレーニングしよう!」

 ラティアスは元気よく答える。



 彼らは使用料を払い、トレーニング室に入る。

「まずはストレッチを...」

 タクヤはストレッチマットを出そうとする。

「私に任せて!」

 とラティアス。

「えっ」

「いいからいいから!いくよ!」





「イタタタタッ!」

 

「体硬いねー」

 流石はエスパータイプ。念力でタクヤの体を念入りに揉みほぐす。


「で、ラティアスはどうやってストレッチするの?」


「あ」


「やっぱりマットいるじゃん!」

 結局ストレッチマットを引っ張り出してきたタクヤであった...




 ところで、周囲の人々はラティアスという珍しいポケモンとごく普通の少年とのギャップに驚きつつ、恋人のようだと微笑ましく見ていた。しかしタクヤとラティアスは一切気づいていなかったが...




「タクヤ、腕立て100回するよ!」

「OK!」





「次!ベンチプレス!」

「ラティアス、勝負だ!」

「いいよー!10kgからね♪」


「...念のため言っておくけど念力禁止だからね。」
 とりあえず釘を刺す。


「えー」
 とラティアス。






 そのままベンチプレスを続けて、結果は...


「もうムリ...」

「やったぁ!勝った!」


 結果はラティアスの圧勝だった。(念力は使っていないのだが...)




 その後、彼らはトレーニング室の機器をフル活用しながら和気あいあいとトレーニングをした。









 およそ二時間後。

 時間になったので彼らはトレーニング室を出る。
 二人とも満足げな顔をしていた。

「楽しかったー♪」

「さあ、今からが本命だよ。卓球の練習だ!」

「うん!」



 彼らは卓球スクールに向かった。
 楽しそうに喋りながら歩いていく。



 タクヤは卓球スクールが休みの日に休日練習することは初めてだった。それだけ彼が本気なのだかわかるだろう。絶対ラティアスに一勝はさせてやる、いや一勝とは言わず二勝三勝させてあげる。そう心に決めていた。自分とペアになってむしろ嬉しそうだった人は初めてだ。その笑顔を無駄にはしない!



 彼らは卓球スクールに着く。



 あの熱血コーチは彼らが入って来て物凄く驚いた顔をしていた。
 しかしそのようなことは露知らず。タクヤとラティアスは卓球の練習を始める。

「まずは軽くウォーミングアップを」


 タクヤとラティアスはラリーを始める。

 カツンカツン...
 カツンカツン...

 卓球の球の独特な音が響く。

 つい一昨日までタクヤにとってこの音は苦痛だった。しかし、昨日すべてが変わった。タクヤはやる気に満ち溢れていた。

 ラティアスも同じだった。
 今まで自分と組んで喜んでくれた人はいなかった。
 球威はこのスクールでトップクラスであっても、ミス(空振り)がとても多い彼女に好んでペアを組む者はいない。このスクールには所謂『ガチ勢』ばかりだからだ。(注:タクヤとラティアスが本気で卓球をやっていなかった訳ではない。)


 タクヤが一言。
「ラティアス、今から僕がボールをいろんなところに打ち返すからそれを10球連続で打ち返して。あの必殺スマッシュで。」


 ラティアスもラリーを続けながら答える。
「わかった。頑張る!」


「はいッ!」

 タクヤは(タクヤから見て)右方向に打ち返す。

「えいっ!」

 ラティアスの必殺スマッシュが炸裂する。

「次!」

 タクヤはやっとの思いで打ち返す。

「うわっ!」

 タクヤが左方向に打ち返したため、焦りながら何とか必殺スマッシュをもう一度打つ。


「3球目!」

 タクヤにとっては割と簡単に打ち返せる球だった。今度は右方向に打ち返す。

「あっ!」


 ついにラティアスは空振りしてしまう。


「タクヤ、ボールを空振りせず打ち返せる方法教えて...」


「僕じゃああまり参考にならないと思うけど...僕は必ずボールから目を離さないようにしてるね。」


「わかった!ありがとう!」


 ラティアスはにっこりと笑った。


「じゃあいくよ!」


「うん!」



 一球目、彼女は難なく打ち返す。
 タクヤが教えた方法を早速実践していた。



 そのまま二球目、三球目。


 その後も何度か空振りしてしまったが、最初より断然上手くなっていた。


 そして、五回目のチャレンジ。


「ラスト!十球目!」

 タクヤが打ち返す。

「えいっ!」

 渾身のスマッシュが放たれる。


「ラ、ラティアス...!」


「やったぁ!タクヤ、ありがとう!」


「僕も嬉しいよ。あと僕も安定して狙ったところに打ち返せるようになった気がする。」



「これでぜーったい大会で優勝できるね♪」



「フフッ...それはわからないけどね。」




 彼らはその後、日が暮れるまで練習に打ち込んだ。
 二人ともお互いが完璧なパートナーだと思っていた。タクヤはラティアスを。ラティアスはタクヤを。

 お互い完璧なパートナーに出会って初めて本領が発揮できる。タクヤは圧倒的な守備力。しかし攻撃力が足りず、押し負けていた。ラティアスは逆に物凄い攻撃力。しかし守備力は皆無だった。
 二人ともお互い刺激し合い、技術を教え合い、共に高め合っていった。そのためお互いの『弱点』もかなり消えていた。



 月曜日からも毎日学校が終わったらすぐに一緒に練習に打ち込んでいた。


 次の日曜日の夕方、タクヤはラティアスを誘った。
 卓球スクールでもなく、スポーツセンターでもないところに。



「ねぇタクヤ。卓球の練習しなくてもいいの?」

 ラティアスは訊ねる。

「うーん、ホントはしたいんだけど『休養日』なるものを設けないとからだを壊しちゃうからね。週に一度くらいは休まないと。」


「へぇー」



 タクヤはラティアスにアイスを奢ってあげていた。
 彼らは一緒にショッピングモールに来ていた。


 ラティアスがアイスを食べ終わったあと、タクヤが一言。
「ちょっとついてきて、見せたいものがあるから。」




 その後、タクヤとラティアスはバスに乗っていた。

 始めはショッピングモールからの帰りの客で混雑していたが、徐々に人はまばらになっていった。

 人がまばらになっていくのに比例するように、徐々にに民家が減っていった。


 そうして遂にはタクヤとラティアスだけしか乗客は居なくなってしまった。


「次は~帆柱ケーブル、次は~帆柱ケーブル、終点です。御乗車ありがとうございました。お忘れもののないようにご注意下さい。」


 バスを降り、次はケーブルカーに乗る。
 既に周囲は暗くなり始めていた。

 乗車券売り場で切符を買う。
「山頂行き学生を二枚下さい」

「二枚ですね。あっ、カップル割で20%割引しておきますね。」

 切符を買い、黄色いケーブルカーに乗る。

 その次にスロープカーを乗り継ぎ、ついにタクヤがラティアスを連れてきたかったところに到着する。


「目を瞑ってて」


 タクヤはラティアスの手を引き、ラティアスに見せたいものの見えるところに歩いていった。


「目をあけて」


 ラティアスは言われるがまま目をあける。
 ラティアスは正直にいってあまりいい気持ちはしていなかった。いちいちこんな寒いところに来て。帰るのにも時間がかかるし...


 しかし、その気持ちは一瞬で吹き飛んだ。


「わぁー」



 眼下には物凄い夜景が広がっていた。

 海沿いには光る工業団地。目まぐるしく動く車の群れ。所狭しと動き回る船。
 この光の中には二人が通う卓球スクールもあるかもしれない...いろいろ想像を巡らせられた。

「ありがとう、タクヤ。」


「満足してもらえた?」


「うん!もっちろん!」

 ラティアスは嬉しそうにニコニコ笑っていた。

 タクヤも満足げな様子だった。



 この小さなお出かけのおかげで彼らの絆はさらに深まったのだった...


 大会まで、残り一週間。

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