9話 制御する者

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:21分
「で、要件はなんだよ」
「まだ待て。子供じゃないんだから」
 一人苛立つ恭介をよそに、風見はインスタントコーヒーを飲みながら制する。
 本来Af対策会議をする場合はチャットアプリや風見の家に集まることが多いのだが、今回は都心から片道約五十分離れた株式会社TECKのとあるラボの応接間に翔と恭介は呼び出された。
 ここで風見の生い立ちを少し確認しておこう。彼は株式会社TECKの社長の息子として生まれたが、生後すぐに母と死別。その後再婚した義理の母親の生家である北海道で、エンジニアとしての英才教育を受けながら中学時代までを過ごす。高校生ながらにしてTECKのエンジニアとして働き、現在のバトルベルトの前身を世に送り出す天才だ。
 彼は義理の母親に強い嫌悪を示しており、父の援助を借りて高校入学と同時に東京に移り住み、その先で翔や恭介と出会ったのだった。
 現在の風見は大学に在籍している扱いではあるが、特別扱いをこれでもかというほど受けており、卒業までの単位は確約されているので授業に出る必要はなく、風見の知り合いの教授のいる研究室に好きな時に訪れて好きなだけ研究している。
 しかしAfの一件が起きてからは大学の研究室はあまり顔を出さずに、自宅とこのTECKのラボにいることが多いらしい。
 さて、まるで待つことも仕事だ、と椅子に深く腰掛けている風見を翔がボンヤリ見つめていると、応接間の扉がノックされる。
「どうぞ」
 風見の声のあと、扉が開くと現れたのはパンツスーツを身に纏った仁科希(にしな のぞみ)だ。
「もうそろそろ踏矢准教授がいらっしゃるそうです」
「そうか、ありがとう」
「あれ、仁科さん何してんすか?」
 実家を飛び出して現在風見家に居候中の仁科が、あたかも風見の部下のように振る舞っている。当惑する恭介に向けて、仁科はにっこり微笑んで答える。
「常時、じゃないんだけど暇な時は彼の秘書やってるの。自分では忙しくないって言い張るんだけど、とても忙しそうにしてるしね」
「俺は別にいいと言ったんだがな」
「もうまたそんなこと言って~。この前も突然スポーツジムに通うとか言い出したせいで、スケジュールすごく大変なことになってたでしょ」
「え、スポーツジム行ってんのかよ!」
「これまた急だなぁ、いったい何考えてんだか」
 突然の仁科からの告白に、翔たちは虚を突かれる。インドアなイメージがものすごく強い風見がスポーツジム? まだ幽霊が現れたり、銅像が歩き出す方が現実味があるんじゃないか。
「必要だと思ったからだ」
 翔の問いかけに対する返事は存外素っ気ない。これには仁科も肩を竦め、やれやれといった表情を作るしかない。
 風見はどうも日常会話になると極端に説明が足りなくなる。おそらく、もう少し突っ込んでなんで必要だよ、だとか聞けば明瞭な返事が返ってくるだろう。ただそれをする気苦労をしてまで手に入れたい情報か、と天秤にかければそこまで知ろうとも思わない。
 翔たちはその辺りにはもう慣れているからこそ、むやみやたらな詮索はしない。本当に重要な情報であれば風見の口から直接話される、そういった事ももう分かっているのだ。
 そうして妙な空気感が流れ始めた頃、開けっ放しになった応接間の扉の向こうから一人の男が現れる。
「あれ、失礼したかな?」
「いえ、こちらこそお見苦しいところをすみません。遠方からわざわざお越しいただきありがとうございます」
 風見が立ち上がるやいなや、仁科をかき分け頭を下げつつ会釈する。翔と恭介はこいつが他人に頭を下げるのか、と内心悪態を付きつつ、その風見がわざわざ頭を下げるような相手が現れたことで自然と背筋がピンと張る。
「紹介しよう。F大学で精神が物理干渉を起こすことが可能かどうかを研究している踏矢満(とうや みちる)准教授だ」
「よ、よろしくお願いします」
 慌てて立ち上がり会釈する翔と風見を、踏矢准教授は右手で首筋を触りながら制する。准教授、と聞くと翔や恭介の周りには中年が多いイメージであったが、踏矢准教授は三十代だろうか。ルックスはそこまで気にしていないのか、ねずみ色の髪は好き放題伸びており、単色で深い紺色のスーツも少しくたびれている。ネクタイの色は黒と、スーツの色と少し被っているため、どうも全体的に「何だか冴えないな」というイメージが先行する。ハーフリムの眼鏡も、片側だけネジが緩んでいるのか少し斜めになっている。気にならないのだろうか。
「ご紹介預かりました、踏矢です。ま、そこまで固くならないで構わないよ。君たちのことは既に風見君から聞かせてもらってね。若いのに勇気があって大したもんだよ」
「ここからは俺が少し説明する。いいですよね? 踏矢先生」
「うん、お任せしよう」
「Af所有者がAfを使ったとき、実体のないホログラムから現実への物理干渉が発生したという事案はもう知っていると思う。だが、この前恭介が戦ったロドニーという男にはそういった物理干渉は見られなかった。ここまではいいな?」
「ああ、それはよくわかってるぜ。そもそも俺が風見に対戦の録画ごと見せたんだしな」
 恭介の言う通り、今ここにいる翔、恭介、風見、仁科のデッキポケットには特殊な録画、録音機能を埋め込んである。そのためAf所有者との対戦は全て風見がチェックをしている。
「それや他の対戦ログを踏まえて俺はある一つの仮説を打ち立てた。Afが現実への物理干渉を起こすトリガーとなるのは、Af使用者の精神状態ではないか。もっとわかりやすく言うと、怒りや嫉妬、悲しみといったネガティヴな感情。ここでは『負の意思』と称するが、負の意思を多く持つものが使うと物理干渉を引き起こし、特にそうでもないものは物理干渉を起こしていない」
「それで?」
 急かす悪友に話の腰を折られ、風見が恭介を軽く睨む。内心仕方ないな、と長ったらしい前口上を垂らすのを風見は早々に断念した。
「結論を言えば、Afは使用者にある程度以上の『負の意思』がなければただのカードと何も変わらない。だからこそ、Af対策として今まで回収してきたAfを使用しようと思う」
「おま、お前それ正気かよ!」
 突拍子のない提案に翔が言葉を詰まらせながら飛びつく。その脳裏にちらつくのは先の澤口美咲との対戦だ。
 勝負の際、翔は無我夢中でたまたま手にしていたAfで彼女の猛攻をなんとか阻止しようとしていた。今までAfがよくないカードだと考えていたからに、負けられない戦いとはいえ無意識的にAfに手を出そうとしていた自分を強く恥じていたのだ。
「これは時間は短いながらも、踏矢先生との共同研究である程度の信用を得たデータだ。どのくらい『負の意思』があればダメなのか、それは分からない。そのために怒りだとかの負の感情に囚われない、自分を律する精神力が必要とされるだろう」
「勿論人によって条件が異なる可能性はあるかもしれない。ただ、風見君は凄かったよ。実験と称してAIプログラムと百連戦をしながらも、脳波はいたって正常なままAfを完全に使いこなしていた。今こうやって君たちに話をしているのも、きっと君たちならばAfを使いこなせると信じているからだと思うよ」
 どうにもこうにも棘を含む風見の物言いを、踏矢准教授がフォローする。本当にこいつは素直に人を認めたり褒めたりすることが出来ない、どうにも不器用なやつだ。
「確かに、目には目をじゃないけど強大な力を持つAfと戦うならAfで相手をするってのは一理あるな。俺たちも使いこなせるなら、だけど。な?」
「え? いや、まあ、それもそうだな」
 思いの外簡単に肯定する恭介に翔は面食らう。確かに使えるのならばこれ以上はない戦力だ。風見は、勿論お前たちも実践投入する前に何度かテストプレイをして安全を確認してからだがな、と前置きをして話を続ける。 
「ただ、どういうメカニズムでAfが現実世界に干渉を与えているのかはまだわからない。そこで、俺たちが回収したAfの一部は踏矢先生に預け、解析をしてもらう。また、他の一部はこのラボでより良いものに利用できないかを試みてみる。わざわざ今日お前たちを呼びつけたのは、Afを預けることになる踏矢先生に顔を合わせておきたかったからだ」
「なるほどね。モノがモノだから全く知らない人に預ける、って言われるより一度会っておいた方がまだ信頼できるってか」
「そういうことだ」
「いや~、私も風見君が一目置いてる友人達がどんな子かを見ておきたかったんだ。だから私としてもウィンウィンってわけさ」
 明るい物言いだが、どうもこの人は読めないな。と翔は思った。風見は言動が読みにくいが、この人は抑揚をつけて話すものの表情が変わらない。年を取るとそういうものなのか、風見のツテだから変わった人なのか。今一つ靄がかかる。
「さて、今言った通り俺たちの手持ちのAfを分配する。必要なカードは自分で所持し、余りは俺と踏矢先生が回収する。そのためにも三枚は余るようにしてくれ。それが終わり次第、今晩の澤口との戦いの準備に向かう」
 風見が応接間のテーブルにAfを一枚ずつ並べる。それを興味津々に眺め、手に取る恭介と対照的に翔は消極的だった。
 もしも俺があの時Afを使っていたらどうなっていたのだろうか。今後Afを携えながら戦うとして、俺たちは風見の言うように正しくAfを使いこなせるのだろうか。オーバーズを発動させているとき、極まれに理由もなくふつふつと怒りが沸き上がるような感覚がある。まだそんなことを誰にも相談出来ずにいるが、もしもそうなったときAfを手にしていたら。
 ネガティブな思考をそこでシャットダウンし、翔は静かにAfに手を伸ばした。風見は使いこなせるか事前にテストする、と言ったんだ。ここは親友の判断を信じよう。



 数時間後、翔たちは都内の大きな自然公園に移動した。蒸し暑い昼間も、陽が落ちれば幾分過ごしやすい。弱い夜風の吹く公園に、定刻通りに澤口美咲はやってきた。
 この前翔と澤口との対戦に風見が割って入った後、今度こそ決着をつけると事前に段取りを組んでいたらしい。しかし、澤口の前に立つのは翔ではなく風見だ。
「風見さん、戦う前に一つ確認しておきます。まだ『Afは破棄ではなく回収』、そう主張しますか?」
「そうだ。Afは俺にとって必要なものだ。回収はするが破棄はさせない」
 風見は今なんて言った? まるでそう問うように恭介が翔と仁科を交互に見る。Afが風見にとって必要、そんな話初めて聞いた。もう帰ってしまったが、あの踏矢とかいう准教授なら何か知っているかもしれないが。流石にそれはどこかのタイミングでとっちめて聞かなくてはならない。
「分かりました。今私はAfを三枚保管しています。貴方が勝てばそれを貴方に渡しましょう。しかし私が勝てば、私の持っているものを含め、そちらの持っているAfを全て処分してもらいます。いいですか?」
「構わん。始めるぞ」
 互いにデッキポケットを装着し、バトルデバイスを放り投げる。テーブル状に変形したデバイスとデッキポケットをBluetoothで接続させ、互いに構える。更に風見はポケットから取り出したウェアラブルグラスを装着し、バトルデバイスと連動するアプリを立ち上げる。
『ペアリング完了。対戦可能なバトルデバイスをサーチ。パーミッション。ハーフデッキ、フリーマッチ』
 互いの最初のバトル場のポケモンは澤口がエルレイドEX170/170、風見がミニリュウ50/50。以前翔と戦ったときと同じく、澤口は早々に最初からEXポケモンで攻め立てる気か。
「先攻は私がもらいます。まずはエルレイドEXに超エネルギーをつけ、ズバット50/50をベンチに出します。これでターンエンド」
「そっちがいきなりEXでやる気なら、こっちもこっちで最初から突っ切らせてもらう。手札からスタジアム『Afマクスウェルの小部屋』を発動」
 恭介があいつ、本当に使いやがったな、と漏らす。スタジアムが作動したが、風景は何一つ変わらない。しかし、風見の手札一枚を、見えない何者かが奪い去り風見のサイドにオモテにして置く。雷エネルギーがサイドに加わり、いきなり状況は大幅に風見が不利に見える。
「マクスウェルの小部屋を発動したとき、俺の手札からランダムな基本エネルギー一枚をオモテにしたままサイドに置く」
 ポケモンカードはポケモンを倒した時にサイドを一枚ずつ引き、サイドを0にしたほうが勝ちのカードゲームだ。なのに風見のしたことはわざわざ自分からサイドを増やす、つまり勝利から一歩遠ざかる行為だ。
 風見がわざわざ無駄なことはしないという確信はあるし、このカードがAfであることから何かあるということも読める。だがただただ不気味だ。そんな雰囲気に一石を投じるように、風見が問いかける。
「マクスウェルの悪魔、というものを知っているか」
 翔たちは顔を見合わせ、互いに首を横に振る。澤口はいいえ、知らないわ。とキッパリと答える。風見はそうか、と少し残念そうに一つ応えると、一呼吸おいて語りだす。
「詳細は割愛させていただくが、これは物理学者のマクスウェルが考案した仮想実験だ。ある二つの空間に分子を観察できる悪魔がいたとしよう。その悪魔は状況に応じて自由に分子を別の空間に送ることが出来る。そのときどうなるか、というものだ。このマクスウェルの小部屋にも、その『見えざる悪魔』が存在し、このカード発動時と各ターン開始時にその悪魔は互いのプレイヤーの手札の基本エネルギーをランダムに一枚選び、オモテにしてサイドに置く。更にこのカードがある限り、互いに手札からスタジアムを場に出すことはできない」
「……カード効果は分かったわ。でも残念ね、貴方がAfを使うだなんて」
 まるで挑発するような物言いだ。しかし、風見に挑発は通用しない。なんせ滅多に冗談が通じない男だ、こいつは澤口の挑発を完全に正面から受け止め、そのままストレードで返球する。
「Afは確かに危険性を孕むカードだが、それは悪しき心を持ったものが使った時のみだ。そうでなければ他のカードと何も変わらない……、むしろ新たな可能性を持つカードだ。リスクが少しでもあればなんでもかんでもノー、と言い張るのは人の性だが悪いところだ」
「貴方ならAfを正しく使えると」
「そうだ。俺達ならば使いこなせる」
 挑発をしかけたのは澤口だが、ハッキリ言い切る物言いに苛立っているのは澤口の方だった。更に風見の無配慮な一言が、澤口の心に火をくべる。
「まだヤツのことを引きずっているのか」
 事情を知らない翔たちは、何を指しているのか分からない。ただ、あからさまに顔色を変え、そんなことなんて、と語気を荒くする澤口を見れば「そんなことないことはない」、というのも翔たちでも推察できる。
「……俺は手札の草エネルギーをミニリュウにつけ、新たにベンチに二匹目のミニリュウ(50/50)を出す。そしてサポート『ティエルノ』の効果でデッキからカードを三枚引く。そしてバトルだ、ミニリュウで引っ掛ける!」
 しっぽを器用に鞭のようにしならせ、ミニリュウがエルレイドEX160/170に一発をくらわす。
 まだ顔を紅潮させている澤口の番が始まると、「見えざる悪魔」が澤口の手札の超エネルギーを抜き取り、オモテにしてサイドに置く。これで互いのサイドは四枚だ。
「貴方が姑息な手で勝負を長引かせるつもりなら、私は速攻で貴方のポケモンを倒し切るだけです! 私はエルレイドEXに超エネルギーをつけ、ベンチのズバットをゴルバット(110/110)に進化させる。そしてこの瞬間ゴルバットの特性、こっそり噛みつくを発動。相手ポケモンにダメカンを二つ乗せる!」
 ベンチのゴルバットがミニリュウ30/50の中腹にガブリと食らいつく。ミニリュウが悶絶して体を震わせると、素早くゴルバットはベンチに引き下がる。
「そしてサポート『サナ』を使い、手札を全て山札に戻しシャッフル、し五枚引きます。ボクレー(50/50)をベンチに出してバトルです。エルレイドEXで高速突き!」
 目にも止まらぬ鋭い一突きがミニリュウ0/50のHPをちょうど削り切る。オモテ向きの超エネルギーを避けて澤口はサイドを引く。風見は二匹目のミニリュウ50/50をバトル場に出す。
「いくらサイドが増えても、戦えるポケモンがいなければ勝敗が付きます。あとはそのミニリュウを倒せば終わりです」
 風見とのやり取りを経てどこか心に余裕のない澤口。しかしポケモンが倒されたことに風見は全く動じず、むしろここまでは想定内だという態度だ。
「威勢がいいのは構わんが、一つ勘違いしているな」
「なんですって?」
「いつ誰が長期戦をすると言った。俺はお前と同様、いやお前以上に短期決戦のつもりでいるぞ」
 風見の番が始まると同時に、再び「見えざる悪魔」が風見の手札の草エネルギーをサイドに置く。これで風見のサイドは五枚だ。
「手札から『不思議なアメ』を発動。その効果でミニリュウをカイリュー(160/160)に進化させる。そしてカイリューに草エネルギーを与え、サポート『こわいおねえさん』を発動。こわいおねえさんの効果で俺は、マクスウェルの小部屋をトラッシュする」
「おいおい! 何してんだよ。お前の方がサイド増えてるじゃねえか」
 逸る恭介を手で制し、風見はただ前を見据える。
「マクスウェルの小部屋のもう一つの効果を発動。このカードがトラッシュしたとき、このカードの効果でサイドに置かれたエネルギーを自分のポケモンにつけることができる。俺はサイドの雷、草エネルギーをカイリューにつける」
 マクスウェルの小部屋はサイドを増やすためのカードではなく、エネルギーをつけるためのスタジアムだったというわけだ。風見の扱うドラゴンポケモンは強力なワザを持っているが、ワザを使うために必要なエネルギー。
「さあ、お前も効果処理をするといい。もっとも任意効果である以上、その超エネルギーを残すことも出来るが」
「……私はサイドの超エネルギーをボクレーにつけます」
「これでマクスウェルの小部屋の処理は終わったが、こわいおねえさんのもう一つの効果処理を行う。お前は手札を三枚トラッシュしなければならない」
 澤口はピクリと眉を顰め、渋々手札を捨てる。五枚あった澤口の手札があっという間に二枚だ。自分は相手より一枚多くエネルギーを自分のポケモンにつけた上に、相手に手札を三枚捨てさせる。一朝一夕では思いつかない、Afを絡めたコンボ。これには流石に澤口も、風見がAfを完全に制御しきっているということを認めざるを得ないだろう。
「まだカイリューがワザを使うにはエネルギーが二つ足りない。だがそれもこいつで埋め合わせる。手札からポケモンの道具『Afエネルギー錯誤』を発動。このカード発動時に、基本エネルギーの名前を宣言する。このカードをつけたポケモンは宣言したエネルギーを二つつけたものとして扱う。俺が宣言するのは草エネルギー」
 これでカイリューにはもともとついている草草雷エネルギーに加え、エネルギー錯誤の効果で更に草草エネルギーがついたことになる。
「もちろん、強力なカードにはデメリットもある。このカードをつけたポケモンがワザで相手を気絶させた場合取ることが出来るサイドは一枚減る。だがダメージを与えるには十分だ。カイリューで攻撃、ヘビーインパクト!」
 エルレイドEXの真上まで羽ばたいたカイリューは、十分な高さまで到達すると一転させそのエルレイドEXに向かって急降下。もし仮にカイリューに実体があったとすれば、勢いをつけたのしかかり攻撃によって、この公園に大きなクレーターの一つくらいはできたであろう。150のダメージを受け、エルレイドEX10/170は瀕死だ。
「Afを破棄したいだの言うのであれば、この俺を倒してみろ」
「くっ……、望むところです!」
 改めて翔は風見が敵でなくて良かったと感じた。Afをまるで自分の手足のように、自在に操るアイツは今まで戦ってきたAf使いよりもAfを使いこなしている。引けるサイドを減らしてまでも攻撃をする。デメリットよりメリットを重視して攻め立てる様子は、一見扱いを間違えると危険になりうるAfを制して使う風見の見解とも一致する。
 風見自身は相変わらず静かだが、闘志に燃える目は言葉足らずな風見の口よりも雄弁にその胸中を語っているようだ。



恭介「スゲーぜ風見! マジにAfを使いこなしてやがる!」
澤口「……風見さん、どうしてそこまでAfを必要としているのですか。私には分かりません」
風見「理由は二つある。Afの謎を解き明かすこと、それと俺自身の夢のためにだ。
   次回、「VRでは夢を見ない」 長話は苦手なんだがな」

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想