5.暗雲?

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同じ星の中なので電話にタイムラグがないですが、地球と電話したら「こんにちは」とその一言を互いにやり取りするのに、何時間もかかるんですよね。宇宙は広い
 その晩、うちはサーナイトのナナコに電話した。
 一コール、二コール、三コール……。
「もしもし? クリスティ?」
「遅くにごめん。あと、昼間ごめんね?」
 寝ぼけた声がしたから寝ていたのかもしれない。
「ああ、大した事じゃないけど、ちょっと小耳に入れた事があって。サチヨさんなら何か知ってるかなって?」
「ママさんが? 何で?」
 ちょっとした間。
「ん〜。私の家、建設局で働いてるでしょ? で、小耳に挟んだんだけど。建設中のスペースセツルメントに地球から新しい管理局長が来るって話」
「何かママさんと関係あるの?」
 電話の先で、軽く溜息が聞こえた。
「仮にも司書なんだから、新聞読んでるでしょ? 月で起きた事件」
 月? 月? 確か、この前野生化したポケモンが与圧ドーム内で暴れて、非居住区の隔壁が破られたとか?
「野生化ポケモンが暴れた事?」
「そう、それ。それで、地球から来た管理局長がサチヨさんに、何か諮問するって話だけど?」
「聞いてないな? でも、うち。今度のスペースセツルメントの出張に、付き合う事になったなあ」
 でも、それが、ナナコに何の関係があるのだろう?
「じゃあ、もしサチヨさんからなにか聞きだせたら教えて。何でも、管理局長は、ポケモンの行動に関する決まりを厳しくするために来たって話だから」
「へえ」
 今度は、電話口から思いっきり溜息が聞こえた。
「暢気ねえ……。まあ、とりあえずお願いね」
「ん〜。うちでよければ聞いておく」

 確か月はあまりにも人もポケモンも増えすぎて、人間のもとから逃げ出したり、人間が捨てたりしたポケモンが社会問題になっているんだっけ?
 資料になりそうな物を、ネットワークから探す。
 月への移民は、うちら土星への移民が始まるさらに一〇〇年前にはじまった。地球に近かったせいもあったのと、宇宙空間でもポケモンとはうまく活動できるだろうという楽観論が混ざって、人間達は地球にいる感覚でポケモンと暮らしていた。
 月にジムが建設されたり、ポケモンリーグが組織されたり。野生のポケモンが街中をウロウロしたり。ポケモンの育て屋が血統書付の強い個体を売り出す中で、使えない個体を勝手にその辺に捨てたり。そういったポケモン達が人知れず増えていった上に、トレーナーが求めるポケモンは大抵強いポケモン。個体としては弱くても、種としては強いからバトルという物を抜きに考えると危険極まりない存在となっている。
 そんな歴史があって、つい最近といっても半年前だけど。いつの間にか成長して、進化を繰り返していたガブリアス達が見つかって保健所が駆除に乗り出したものの、腐ってもガブリアス。しかも一〇〇匹近くもいたという事で、大捕物になって月のある街の隔壁が破壊されたって。そんなニュースがあった。
 それで、対策にママさんがスペースセツルメントに出張ってなったのかな? 明日聞いてみるかなあ?
続く

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