この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
バンギラスのギルドに加入したアブソルとロコン。キングドラの勧めで今日は休むことにした。
その日はとにかくいろいろあった(アブソルになったりスピアーに襲われたりバンギラスさんからトマトの素晴らしさについてキングドラさんと長々と聞かされたり等)ので今日はキングドラさんの言葉に甘え、ギルドの他のメンバーへの挨拶は明日にすることにした。やっと休める〜、と思ってアブソルは自分に与えられた部屋に入った。
入ったのだが……。
〜アブソル 部屋〜
「zzz……」
その部屋にはロコンが先に来ていて寝ていた…。おかしいな…ゲームとは違って1人一部屋与えられているんだけど…。
「zzz……zzz……」
ロコンはアブソルが来たことに気づかず、寝息を立てている……。ロコンも疲れていたのだろう…うん、僕も疲れた、あ、よく見たら寝顔可愛い…。これを癒しにして僕も寝るとするか…こういうのなんて言うんだっけ…ネクロマンサー…?あれ、なんかというか全然関係ないような気がするぞ…肝心な時に働かないな元の記憶…。
アブソルもロコンが寝ているベッドの隣に寝転がった……え?こういう時って床に寝るもんじゃないのだって?床土なんだもん!、汚れるもん!、白い体だから汚れ目立つもん!くま○ンだもん!…即席で残った記憶を元に作ってみたがしょうもないし面白くない…ツッコミが誰からもないのが地味にさみしい…。
1人でなにやってんだが、と馬鹿馬鹿しくなったのでアブソルも寝ることにした…。
翌日……
アブソルの体からは疲れがすっかり抜けていた。これもこの用意してくれたふかふかのベッドとモフモフの抱き枕のおかげだ…これで今日は楽に動けそ…ん?ちょっと待て、ベッドはともかく僕抱き枕なんて持ってないぞ!?
流石におかしいと思ったアブソルは目をすぐに開けた。抱き枕の正体はやはりロコンだった。寝ぼけて抱いて寝てしまったらしい…。
手をすぐに離す。それだけで済めばまだ良かった…。しかしアブソルにはそれが出来なかった…。
なぜなら……
ロコンは先に目を覚ましており…顔を赤くしてこちらを見ていたからだった。
「あ、アブソル…?…えっと…あの…おはよ?」
「あ、うん…おはよウゴザイマス…。」
ロコンに挨拶を返すことでようやく自分が何をしているのかを理解した…。
「う、うわあぁぁ!?」
そしてすぐに手を離す。朝から何やってんだ……僕。
「ご、ごめんなさいロコンさん!、寝ていたとはいえこのようなこと…。」
「あ!いいの!私もアブソルの所にちょっと話があって来たんだけどつい寝ちゃったからさ……あと、アブソル温かかったから安眠も…うん!」
死にたい…、始めてそう思ったかもしれない…てかこれ人間の世界だったら一部のケースを除いては即アウトだよ。
「……そう言えばさっきちょっと話がって言ってたよね?何かあった?」
慌てすぎて敬語が抜けたがとにかく話題を逸らしておく。出来れば思い出したくないと考えたが無理そう……極上でした(モフモフが)…。
「あ、そうだった!……えーと……不束者ですがこれからよろしくお願いします!」
「はい!?」
不意打ちだった。どういうこと!?あまりにも急で状況が読めないでいると……。
ガチャリ
誰か入ってきた。そこに二匹は目を向けると桃色のポケモンが一匹。エーフィだ。
「え、えっと…アブソルさん…キングドラさんに頼まれて起こしに来ました…ってえ!?」
目の前にロコンがいることからエーフィは戸惑う。まぁ、与えられた部屋ではなく僕の部屋でロコンが寝ていたのだから当然だろう……。
「ご、ごめんなさい!ノックもなしに……おふたりが最初からそのような関係でしたとは知らなくて……。」
ボンッ!という音が聞こえそうな勢いでロコンの顔が更に赤くなる。僕も流石に目線を合わせられず横に顔を逸らした…おそらく自分もいま赤くなってる…。
「あ、あの!ち、違うんです!私とアブソルはそういう関係じゃなくて……!」
ロコンは必死になって弁解する。そう言えば僕のこと君じゃなくてアブソルって呼ぶようになってる…。慣れてくれたのかな?
5分後……。
「そ、そういうことでしたか…不束者ですがとは夫婦としてのことではなく同じ仲間としてでしたと…。」
何とか誤解をといてもらうことが出来た。そういうことか。僕もホッとした。
「それで……キングドラさんに頼まれたとは?」
「そうでした!朝食が出来たので呼んできて欲しいと頼まれて来たんです!ギルドの仲間達も集まるので挨拶も一緒にしてしまおうとの事でした!」
ハッと思い出したエーフィは笑顔でアブソル達にそう伝え、他の所にも呼び出しに行ってきます!と走って出ていった。
「じ、じゃあ…僕達も行きましょうか…。」
「あ、うん!」
アブソルとロコンはぎこちない雰囲気の中、食堂の方へと向かっていった。
〜バンギラスギルド、食堂〜
「みんなおはよう!今日も絶好の野菜…じゃない仕事日和だ!困っているポケモンのためにも仲間同士で協力したりして頑張っていって欲しい!……」
親方、バンギラスの朝の一言は食堂で行われるらしい、しかしいま野菜って言いかけたような…野菜日和ってそれはそれでなんだ一体……。
「それと今日から2人新しくこのギルドに加入してくれたものを紹介する!アブソル君とロコン君だ!」
バンギラスの紹介でメンバーの視線がこちらに集まる。しかしこうしてみると色んなポケモンがいるな……あと匹じゃなくて人なのか……数え方…気をつけよう。
「特にアブソル君は昨日人間からポケモンとしてこの世界に来ている、本人も心の整理がつかず何をしたら良いのか分からないことも多いと思うからみんなで支えてやってほしい。」
人間からポケモン、その言葉を聞いてメンバー達がざわめきはじめる。やはり相当珍しいのだろう…。視線が絞られてしまい、結構恥ずかしい…。
「ささ、アブソル君、ロコン君、なんか一言お願いするよ。」
「あ、はい!ロコンです!隣のアブソルと組んでこのギルドに加入しました!よろしくお願いします!」
「……よ、よろしくお願いします……。」
簡単に紹介を終え、朝食を食べ始めるメンバー達、僕とロコンも目の前のアップルパイやら木の実やらを食べ始めた……あ、このアップルパイ美味しい……。
バンギラスは最初口に合うか気になったらしく、僕の方向を見ていたが心配ないと分かると食事に戻り、やはり野菜のサラダを食べ始める、本当に野菜好きだな…。
左隣のロコンは声をかけてきた他の女性ポケモン(ニドリーナ、プリン、ピカチュウか…)と話をしていた。やはり女性同士だと話もあうのだろう。結構盛り上がっている…よかったよかった…ん?今ロコンさんからなにか光ったような…。
「お口に合いましたか?」
僕に声をかけたのは朝起こしに来てくれたエーフィだった。アブソルの右隣によっこいしょとぴょんと跳ねて座る。
「エーフィさん…えぇ、すごく美味しいです、特にこのアップルパイが。」
一番美味しくて気に入っていたものを伝えるとエーフィの顔が途端にキラキラとした目になる。まさか……。
「本当ですか!?それ私が作ったものなんです!リンゴだけじゃなく甘いモモンの実も加えていて結構うまく出来た自信作なんですよ!気に入ってくれたようで良かったです!」
うれしいです〜♪と僕の手を両手で掴み上下にブンブンと振り回す。元気だなぁこの人…。
「これもどうぞ!クラボの実と言うものを混ぜて使ったパンです!あとこれは人間の所の本を参考に作ったポフィンと言う食べ物であとはあとは……。」
自分が作ったものを気に入ってくれたのがよほど嬉しかったかエーフィはアブソルにどんどん自信作を食べさせてくる。だがはい!あ〜ん♪は流石にやめて欲しい…。周りからの微笑ましいと言いたげな生暖かい視線が……。
〜朝食終了、ギルド3階トレーニングルーム〜
「始めてですよキングドラさん…こんな疲れた朝食…。」
「エーフィにすごく気に入られたようだな、食べさせてもらってる光景は朝のエーフィからの報告の通りまさしく夫婦だったぞ、あとロコンの背後に黒い何かが見えた。」
「ちょ!?キングドラさん!?」
「すまん、冗談が過ぎた、本題に入ろう、技の特訓だ。」
ロコンの黒い何かが気になって集中出来るか不安だ…。
「そう言えばなんの技を習得すれば……?」
「そうだな…昨日言った通り、簡単な技から段を積みたいから…ひっかくとかだろう。」
「了解です、ではよろしくお願いします!」
早速用意されている太めの木の前で爪を構える。そして思いっきり切る!の所で……。
「ストップ、力を込めるのは腕全体じゃなくて爪の先だけで良い…あまり力を込めると腕を痛める、あとすぐに疲れて隙が生まれてしまうからな。」
「あ、はい!」
キングドラのアドバイスを聞いて改めて構える。今度は爪だけに力を入れて……軽く標的を撫でるように!
「それっ!」
ズバシャンッ!!
ひっかくにしてはなんか変な音がした…。太めの木は見事に斜めに真っ二つだった。
「……ひっかくじゃなくてきりさくから習得するとはな…技が使えなかったと言うのが嘘のようだぞお前…。」
「あ、ありがとうございます!良かった……やっと使えた…。」
「今日はきりさくの練習をそのまま続けて確実に繰り出せるように身に染み込ませろ、明日は別の技を練習する、俺はリーダーの所に行くがあとは1人で大丈夫か?」
「はい!大丈夫です!ありがとうございました!キングドラさん!」
キングドラはあぁ、と小さく頷くとそのままトレーニングルームを出て言った。2時間くらいかかると思ったんだが…と言う独り言も聞こえた…。
「さて、僕も練習しなくちゃ!」
早速新しい木を用意し、ひたすらに技を繰り出し続けた。
1時間くらいだろうか、ふぅと一息漏らして近くの壁を背もたれにし、身を下ろす。
「アブソルさん!体力補給に私特製スポーツドリンクどうぞ!」
「ありがとうございます…。」
そしてエーフィからスポーツドリンクをもらう…ん!?
「エーフィさん!?」
「はい?」
エーフィは何でしょう?という感じでこちらを見ていた。全然気づかなかった…。
「昼食の時間がそろそろ来るので呼びに来たんですよ。ですがアブソルさん、まるで殺人鬼のようにきりさくを連発しますから止めたら悪いなぁと思ってここで待機してました!あと、かっこよかったですよ!」
エーフィはアブソルに向かってグッジョブをする。悪気はないと思うんだけど…殺人鬼みたいでしたよ!と言われたら喜んで良いのかよく分からない…。
「昼食はロコンさんも作るの手伝ってくれたんです!さ、アブソルさん行きましょう!」
スポーツドリンクを飲み終わるのを確認するとエーフィはアブソルの角を引っ張っていった…楽しそうなところ悪いのですが…ちょ、これ地味に痛い…!?
余談
〜食堂にて〜
「これと……これを少しずつ入れて…砂糖を加えたら…よし出来た!次!」
ロコンは食堂で1人張り切っていた。後ろではキルリアがどうしたのだろうか。と心配そうに見守っている。
「ね、ねぇ、ミミロップちゃん、ロコンちゃんなんかあったの?」
料理仲間のミミロップに何か知らないか聞いてみる。するとミミロップはクスッと笑いながら事情を説明した。
「多分あの子…嫉妬しているのよ、今日の朝見たでしょ?アブソルに作った料理を食べさせるエーフィの姿を。」
「えぇ、確かに見ましたよ、結婚したばかりの夫婦みたいでしたね。」
「そうそう、それを見て取られるとでも思ったんじゃないかな?ピカちゃん達によるとなんか黒いオーラの様なものが見えたって。」
「な、なるほど…それならあんなに張り切るのも納得かも…。」
「2人ともアブソルのこと気に入ってるのね、これからの食事は大変そう♪」
「頑張れ……アブソル君……。」