side ちょっと変わった変化球のホワイトデー

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読了時間目安:24分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

フィオーレ「ホワイトデーも過ぎて…」
シルヴァ「気にしてはいけません…!」
バンギラスの部屋〜

バンギラス「諸君…今日はよく集まってくれた…。」

アブソル(あれ…?前回も同じような始まり方したような感覚があるぞ…?)

ボスゴドラ「で?何のために俺たちを呼んだんだ?」

ヘラクロス「またあれっすか?シルヴァとリオル君が加入したから男女の均等が…。」

リオル「あ、え〜と…ごめんなさい…。」

バンギラス「あ〜違う違う!それとは別の話なんだ…今回集めたのは。」

ヘラクロス「というと?」

バンギラス「アブソル君頼んだ!」

アブソル「はい…今回集まって貰ったのは他でもない…先日あったチョコのプレゼントのことです。」

ボスゴドラ「あー、バレンタイン…とか言ってたな…ミミロップからえらいでかいチョコ貰ったぞ。」

リオル「俺も師匠からひとつ…。」

ヘラクロス「ドレディアからッス!」

バンギラス「私はもちろんキングドラ!」

アブソル「で…自分はフィオーレとエーフィさんから頂きました…実はこの感情を込めて渡されるチョコ…バレンタインというイベントにはもうひとつ…僕達男性用の続きが人間の世界には用意されているのです。」


ヘラクロス「続き…ッスか?」

リオル「先生…そのイベントとは…!」

アブソル「その名もホワイトデー…僕達人間はそう呼んでいます…。」

ガタッ…!

ボスゴドラ「それで…俺達はそのホワイトデーとやらで何をすれば良いんだ?」

バンギラス「ボスゴドラ君…急に必死になったね…?」

ボスゴドラ「当たり前だ!貰うだけ貰ってありがとうだけじゃ申し訳が立たなくて胸糞悪いと思ってたんだ…で!?何をすれば良い?逆をしろというのか!?」

アブソル「そうですね…僕達もお礼の贈り物を返して…。」

ボスゴドラ「…ホワイトチョコか…!待ってろ!すぐに用意して…!」

バンギラス「そう来ると思った…させるか!」

ガッ…ズシャンッ!

リオル「早い…!?」

ヘラクロス「転ばせてからの固め技…見切れなかったッス…!」

ボスゴドラ「大将!何故止めるんだ!」

バンギラス「下手にホワイトチョコを買いに行くな!これは奴らからの罠かもしれないんだぞ!」

ボスゴドラ「罠…だと!?」

バンギラス「あぁ…そうだ…このイベントで返すお菓子にはある決まった思いが自然に込められるんだ…下手に贈り物の選択肢を間違えたら…最悪…死ぬぞ…。」

アブソル「いや死にませんよ…?」

ボスゴドラ「ば、馬鹿な……アブソル…!教えてくれ!ホワイトチョコを返すのは間違いなのか…!」

この二人のせいで明らかにイベントに不釣り合いな雰囲気が部屋を呑み込む…その空気には少なくとも…楽しむという想いは欠片も込められていなかった…。

アブソル(なんだこの展開…乗った方が良いのか…?)


アブソル「そ、そうですね…えっと…何だったかな…ホワイトチョコだから確か…《考えさせて》の思いが入ってる…だったかと…。」

ボスゴドラ「考えさせてだと!?非常識すぎる…!一ヶ月経っておきながらそれは相手を不快にさせることは確実だぞ!?」

バンギラス「クソっ…!やはり罠だったか…!やるなホワイトデー…私の予習がどれほど浅はかだったかを思い知らされたよ…!」

ヘラクロス(寧ろこのドラマみたいな状況が一番非常識だと思うっス…アブソル言葉選びながら引いてるし…。)

バンギラス「そうだ…!彼女の力を借りよう…!」

リオル「彼女って…まさか…でもそれって大丈夫なのですか!?」

アブソル「あの〜?」

バンギラス「彼女ならきっと分かってくれる…!元人間のアブソル君だって詳しくは知らなかったんだ…私達の知恵ではどうしようもできない…。」

バンギラスの言うことには誰も反論の意思を伝えなかった…もうそれしか(安全)な手を打つ手段がないと思い知らされていたのだ…いや、正確にはもう少し時間があれば多分大丈夫だとは思うのだが…。

バンギラス「連れてくる…この尊い犠牲を…私達で埋めるぞ…!」

アブソル「いやちょっと…あぁ…行っちゃった…。」









〜4分後〜


キングドラ「で、仕方なく俺をここに連れてきた…と?」

バンギラス「ごめんキングドラ…!私のせいで君にプレゼントを待つ楽しみを…!」

キングドラ「いやまてまてまて…ん?どういうことだ?話は聞いても流れが見えんのだが…?」


リオル「あの〜実は…カクカクシキジカメブキジカでして…。」


キングドラ「ふむふむなるほど…プレゼントに送る贈り物が自然に意味を込められるから下手に渡せず悩んでいた…と?」

バンギラス「そういうことでして…。」

アブソル「いやだから…。」

キングドラ「……で、このドラマのワンシーンみたいな流れへと…か…阿呆なのかお前らは…。」

バンギラス「えぇ!?あれだけ悩んで阿呆で丸められた!?」

キングドラ「あのな、よくよく考えてもみろ…俺達女性陣だって込める思いが「ありがとう」とか「大好き」とか基本的なものだったんだぞ?それに対してお前らがわざわざ本を読んでまで難しく考えることもないだろう…。」

ヘラクロス「まぁ…言われてみれば…そうっスね。」

リオル「ですが俺達料理とかは余り得意じゃなくて…。」

キングドラ「は?料理?お前らこのイベント詳しく…。」

アブソル「ちょっと皆さん僕の声届いてます!?」

バンギラス「うおぉビックリした…どうしたアブソル君…心臓に悪い…。」

アブソル「全く…先程からどんどんホワイトデーが難しいものになってるので補足を加えようとしていたのに…あのですね?僕達男性が送るものは別に無理して食べ物にこだわらなくても良いんですよ?」

ボスゴドラ&バンギラス「へ…?」

キングドラ(コクコクと首を2回縦に振る。)

アブソル「僕達が送るものはあくまでもお礼…食べ物を必ず食べ物で返せとかそういうルールはないんです。」

キングドラ「つまりは気持ちさえ込められていれば俺達は大歓迎…ありがたく受け取るってことだ…補足をありがとうアブソル、これであの堅物二人も少しは柔軟に考えるだろうよ…。」

ボスゴドラ「おいアブソル…!何故先に教えてくれなかったんだ!」

アブソル「先程から教えようとしてもスルーしたじゃないですか!はじめてでしたよ空気扱いされるの!?」

バンギラス「あ〜…まぁ…とりあえずは良いヒントになったよ…キングドラ、私もこれで贈り物の目星はつけれそう…。」

キングドラ「ほぅ…?ではせいぜいその贈り物を楽しみに待つとするか…他の奴らには黙っておくから安心しろ。」

バタン…。

キングドラはそう言うと部屋から出ていく…バンギラス達はホワイトデーの贈り物の候補を考え始めた…。

バンギラス「…ガッカリしたよね…キングドラ…。」




キングドラ「…今頃リーダーはまだ楽しみを奪ったかも…とか思ってる頃だろうな…そこまで気にしなくても良いの…に…。」

ピョンピョン跳ねながら地下の廊下を進んでいくと入浴所の横を通るのだがキングドラはそこであるものを見つけ足…ではなく尻尾を止める…見ていたものは掛けられていた鏡…ミミロップやエーフィが身だしなみを整えるために重宝しているものだ…。


キングドラ「………。」

久しぶりに自分の少し傷跡が残る顔を見た気がする…対してお洒落とかそういうものに興味はなかったからこのくらいは…そう思いながらも鏡から視線を外せない…気になってしまった、自身の顔について…。

キングドラ「俺…あいつらの前で心から笑ったこと…あったかな…。」

鏡に自分の顔を間近に映す…あくまで自分はキングドラ…例えメスであってもこの顔は…笑顔になっても彼に癒しは与えられない…。

キングドラ「微笑が俺にはお似合いか…。」

そう呟くと入浴所を後にし、自分の部屋へと戻っていった…。









〜3時間後、アブソルの部屋〜

アブソル「…………あ〜…。」

あれから暫くみんなで喜びそうなものに目星をつけ、絞り込むか他にするかは各自でということで今回はお開きになった…今僕はこうして自室のベッドに置いてる枕に突っ伏しながらフィオーレとエーフィさんに何を送ろうか考えている…がやはりというか何も思いつかない…いや、言い直そう…同じ反応しか出てこない気がするのだ…。

アブソル(あの二人は何をあげても喜んでくれる…でもだからといって何でも良いというのは僕自身…納得できない…。)

二人の好みを考えるために過去を振り返るが思いつかず、自分がどれだけ他人を見ていなかったかを思いしる…こうして振り返るとフィオーレ達とあってからもう何週間もたった…未だに僕自身の正体はハッキリとは分からないが…なんだかんだでこれが今の日常と化している…。


アブソル「色々あったよね…フィオーレがまだロコンで…僕がまだこの姿になったばかり…遂にホワイトデーまで来ちゃったか…。」

日記や戦闘記録表として愛用しているメモ帳を開き、自身の思い出を振り返る…二人でスピアーを倒したこと、バンギラスギルドに入ったこと、エーフィさん達とうまく馴染めたこ…と?

ページをめくる手をつい止めてしまった…妙に長めに書かれたある一文に注目する…。



(ロコンさんがダガー作りを手伝ってくれた。人間としての知恵が生かせる以上…この武器は僕の命綱となり…そして他者を守るためのものでもある…一本一本…思いを込めて作ったつもりだ…ロコンさんと完成の喜びを分かち合うために…今はこのまだ分からない世界に少しでも慣れていきたい…。)

アブソル「これって…ヘルガーに会う前の…。」

(ロコンさん自身も僕の槍やダガーに興味があるみたいだ…使ってみたいと言うことだったがヘラクロスさんみたいに痣を作られたら困る、ということで今度、彼女のために何かを作れたらと言うことで手を打ってもらった、嘘をついたらハリーセンを口に入れられるようだ…気をつけなくては…。)

日記はここで途絶えている…そうだった…この日の翌日にヘルガーの事件に巻き込まれたからいつの間にか忘れてた…!


アブソル「道具…装飾ならエーフィさんもきっと…!」

アブソルは早速ベッドからはね起き、すぐに工房に火を付け始めた…。








〜ギルド近くの街〜

ボスゴドラ「…ねぇな…。」

ヘラクロス「ないっスね…中々…。」

デンリュウ「ボスゴドラと…ヘラクロス…?」

ボスゴドラ「お?デンリュウか…お前何してんだこんなところで。」

デンリュウ「散歩…貴方達は?」

ヘラクロス「実はちょっと探してるものがあってッスね…。」

デンリュウ「…………ふぅん…。」








〜バンギラスの部屋〜

バンギラス「ごめんねリオル君…一緒に調べるの手伝ってくれて…。」

リオル「俺も贈り物悩んでたんで丁度良かったですよ!でも良いんですか…?キングドラさんは別に苦労して作ることはないって言ってたのに…。」

バンギラス「意地。」

リオル「え…?」

バンギラス「だって悔しいんだもん…キングドラ達が苦労して作ってくれたチョコに対してさ…私達は気持ちがあればなんでも良いって言われたんだよ…!だからこれは私なりの身勝手な意地…かな?」

リオル「意外と負けず嫌いだったんですね…。」

バンギラス「そうそう…だからこうして人間の調理本を漁ってるのだ!…なんかだんだんアイツ(ボスゴドラ)に性格が似てきてる気がするのが癪だけど…。」

リオル「あはは…それでこんなに本が…山崩れてるしこれは後の整理も大変そうですね…ん?」

適当に崩れた本の一部を戻していると一冊ページが開いたままの本があった…そのページの説明を気になって流し読んだ時…リオルの目はこれだと言わんばかりに輝き始める。

リオル「あの…これなんてどうですか!?俺達でもできそうですし難易度も…!」

バンギラス「ん?どれどれ……おぉいいねぇ!じゃあ後は好みの味付けを…。」

リオル「あ…でも師匠の好み…俺分からない…です。」

バンギラス「甘いものと少し渋いものだよー。」

リオル「なるほどそうで…え?」

作業の手を止め、リオルはバンギラスの方を見る…バンギラスはそんなリオルのことは気にせず、鼻歌交じりでレシピをメモしていた…。

バンギラス「ん?固まってるけどどした?」

リオル「いえ…なんで好みまで知ってるのかなぁ…って。」

バンギラス「あぁそんなことか…観察はもうすっかり癖になっててね…シルヴァ君の食事、いつもそんな感じに偏ってる時あるから、まぁそんなことより…ここまで決まったら後は行動あるのみだ!準備が終わったら私達も買出しに出よう!」

リオル「あ、はい!」

バンギラスの観察癖に頭を捻らせつつも、リオルは準備にとりかかった。













〜ホワイトデー当日〜




キングドラ「で、この日が遂に来てしまった訳だが…さぁて…お前はなにを選んだのかな?」

バンギラス「あはは…君のお気に召したら良いんだけど…。」

珍しく顔を赤くしてしまうリーダーを見ると何故かこっちまで恥ずかしくなってしまう…ぎこちない変な動作で背中に隠した可愛らしい花柄の紙袋の中身をあさり、ひとつの包みを取り出してこちらの頭に乗せてきた…まぁ…俺に手はないからな…。

バンギラス「これ…なんだけど…。」

キングドラ「うん?…クッキー…とは違うようだな…面白い色と形をしている…気に入った…ありがたく机の上に飾らせてもらおう。」

バンギラス「いやあのそれは…!」

シルヴァ「お待ちを…それはマカロンという名前の食べ物です、置物ではありませんよ。」

キングドラ「む…?シルヴァか…お前もその包みがあるってことは…。」

梯子を飛び降りてきたシルヴァもキングドラと同じ包みを持っていた…中身の色の種類はちょっと異なるが形状は同じ、マカロンというものだ…両手でしっかりと人形を大事にする女の子のように持っており、いつもの冷静な表情とは一転…頬が緩みかけていた。

コジョンド「えぇまぁ…私もリオルから貰いました…大将と一緒に作ったと言うことらしく…どうも弟子が大変お世話に…」

バンギラス「いやいや!顔をあげてシルヴァ君…!礼を言うのはむしろこっち!リオル君がいなかったらあのページは見つけられなかったから…あはは…。」

キングドラ「あのページ?」

バンギラス「な、なんでもない!あ…書類の整理忘れてたから私はこれで失礼するよ、また後で!」


キングドラ(………逃げた……?)

コジョンド「リオルと全く同じ反応でした…あの子もこれを渡すと一目散に逃げてしまって…。」

そうか…とシルヴァに返して包みの中のマカロンを見る…。

キングドラ「何回…作り直したんだろうな…。」

コジョンド「やっぱりキングドラ様もそう考えました…?」

キングドラ「隠してるようだったが余計に怪しくてな…左手を怪我してたらしい…絆創膏らしきものが一瞬見えた。」

コジョンド「そうでしたか…どこでやってしまったのですかね…後でリオルの手もよく見せて貰いましょう…拳で。」

キングドラ「おいおい…。」

早速一つピンクのマカロンを口に入れて笑顔を零しながらとんでもないことを言うシルヴァにちょっと引きつつ…キングドラも頭に乗せてもらったマカロンの包みを落とさないように宙に浮いて部屋まで移動しようとした…その時だった。

シルヴァ「あぁそうでした…部屋に戻られる前に一つ訪ねたいことが…。」

キングドラ「なんだ…?」

シルヴァ「マカロンに込められる意味ってご存知です?」

キングドラ「…知らんな…あいつのことだ…きっと意地でもお菓子で返したかったんだろうし何か込められているとは思っていたが…ふむ…調べてみるか。」

シルヴァ「ふふっ…良かったですね。」

キングドラ「…どういう意味だ?」

シルヴァ「失礼…こちらの独り言です…では私もこれで。」

キングドラ「…何が言いたかったんだ…?」

後にキングドラは自分で意味を調べたことを心から後悔した…マカロンに込められている意味…それは「あなたは特別な人」というものだった…。





〜医務室〜

ヘラクロス「じゃじゃーん!ドレディアにバレンタインのお礼ッス!」

自慢げに袋を上に掲げ、ドレディアにドぞっす!と手渡す…ドレディアも急に部屋に来た時は何事かと焦っていたがバレンタインのお返しと聞いて安心した所だ。

ドレディア「あらら…わざわざどうも…これは…香水ですか?」

ヘラクロス「ドレディアいつも色んな香水使ってるからこれにしたっス!因みに種類はデンリュウが選んだくれたものっスよ!」

ドレディア「えっと…ラムの香り…?これは珍しい…!本当に私が貰っても…!?」

ヘラクロス「勿論ッスよ!ドレディアが喜ぶなら俺も満足ッス!」

ドレディア「……ではこれはまず無くさないように金庫にしまって…あぁでもほかのものもあるし移りしたらいけないからまずはラップを…!」

ヘラクロス「…そこまで大切にしないで気軽に使って欲しかったッス…。」








〜調理室〜

ボスゴドラ「…………。」

ミミロップ「あら?はやいのね…朝ごはんもうちょっとしたら出来るから、それまで我慢…ね?」

いつもより早めに起きて準備に余念がないようにしてきた…渡すものもちゃんと持ってる…後は広い食堂の中で二人きりの今…これを渡すだけ…。

ボスゴドラ「な、なぁ…。」

ミミロップ「あ〜そうそう、何か食べたいものとかあるかしら?今なら内緒で特別に作ってもいいけど?」

ボスゴドラ「あ?…あぁ…そうだな…俺は…いや、特にないな…強いて言えば今作ってる食欲をそそるような香りを出してるアップルパイに…。」

ミミロップ「好みの味なら入れてるわよ?クラボとカゴのブレンドよね?」

ボスゴドラ「なに…?あぁそうだったな!それであってる…。」

ミミロップ「どうしたの?なんかあなたいつもと違うような…それにさっきから手…おかしい動きしてるわよ…。」

ボスゴドラ「いや、なんでもないんだ…すまん、邪魔し…うぉっ!?」

食堂をあとにしようとしたボスゴドラを無理やりこちらに向かせ、ミミロップはボスゴドラの顔をミトンの手袋付きの両手で捕まえた。

ミミロップ「なにか言いたいこと…あるでしょ?」

ボスゴドラ「…特には…。」

ミミロップ「じゃあ私の目を見て…?」

ボスゴドラ「いやほんとになんでもな…あ!…り、料理の火…そのままなんじゃ…。」

ミミロップ「オーブンだから心配いらないわ、後は待つだけ。」

ボスゴドラ「………。」

ミミロップ「…降参…しなさい…?」

間近でニコッと微笑みながらこちらに逃げ場を与えないことを全力で伝えてくるミミロップ、次第にボスゴドラもその圧力に押し切られ始めていた…。



ボスゴドラ「……あぁもう分かった…俺の負けだ…この間のことについてちょっとな…。」

ミミロップ「この間…?」

ボスゴドラ「…ん、これを。」

ボスゴドラが背中に隠していたものをミミロップに手渡す、と同時に良い香りが辺りを包み込んだ…ボスゴドラからのホワイトデーのお返しはピンク色のバラで作られた花束だった。

ミミロップ「………?」

ボスゴドラ「えっとな…その…この間のバレンタインってやつ…あれ続きみたいなのがあって…それで…その…お返しを考えてみたんだよ…!」

ミミロップ「…………うん。」

互いの顔を直視できず、ボスゴドラは目線を逸らしながらこれまでの経緯を頼んでもないのに説明し始める…だがミミロップは受け取ったバラしか見ていなかった、それしか眼中になかった…。

ボスゴドラ「…で…俺が贈れるものって考えたら能力の事情(自然)を踏まえてこれかな…ってなったんだ…という訳でその…デンリュウが教えてくれた花屋のこのバラが俺なりの礼なんだが…。」


………パタン…。

ミミロップ「…きゅ〜……。」

ボスゴドラ「へ!?お、おい!?なんで倒れてんだミミロップ!大丈夫か…って熱っ!?よく見りゃ顔真っ赤じゃねぇか…!あぁえっと誰か…ってまだ俺しかいねぇし!?」

一生懸命苦悩して考えたお返しはどうやらミミロップには刺激が強かったらしく、花束を持ったまま顔を赤くして倒れてしまった…慌てふためくボスゴドラは対処法に気をとられていて気づけなかったがその顔は何故か幸せそうな表情になっていた…。


チ〜ン♪

ボスゴドラ「チーン♪じゃねぇよ!?なんでこんな時に出来上がったアップルパイ!」









〜フィオーレの部屋前〜

アブソル(みんなうまく渡せたのかな…。)

ボスゴドラ達がホワイトデーのお返しを次々に渡していく中、アブソルはフィオーレの部屋に行く途中だった…因みにエーフィは不在だった…どうやら何か急ぎの用があったらしく、仕方ないので机の上に感謝の意を込めた手紙と共に贈り物を置いておいた…。



フィオーレ「〜……〜……。」

アブソル(あれ?…誰かきてる…?)

部屋からフィオーレの声が聞こえ、一度このまま行って良いか様子を見てから入ることにした…決して盗み聞きではない…もう一度いう、盗み聞きではない。




フィオーレ「アブソル!ホワイトデーのお返しありがとう…!これずっと欲しかったものだったんだ!一生大切にするね!」


アブソル(はい!?)

驚きのあまり扉から一歩反射で後ずさった…どうなってるんだ…僕の名前…?え何…ドッペルゲンガー…?怖いんだけど…。

フィオーレ「うーん…いや、これじゃあ普通の返しだね…もっと刺激的なものは…あーでもアブソルの事だからお返しって買ったものじゃなくて自分でエーフィのも作ってる可能性も…。」

アブソル(刺激的なものってなに!?しかも最後当たりだし…!)

どうやらフィオーレはホワイトデーの贈り物が僕から届くことを前提としたお礼の練習をしているようだ…てか誰が言ったホワイトデーのこと…後これいつまで続く…!?


フィオーレ「アブソル…ちょっとこっち来て屈んでみて?」

アブソル「あ、うん…………あ…。」

フィオーレ「……え……?」


しまった…!呼ばれた勢いのまま間違えて部屋に入ってしまった…!


フィオーレ「あ…アブソル…?今の…えっと…もしかして…。」

アブソル「あー、えっと…フィオーレ!これを!」


この後の展開を考えると明らかに大惨事が待ってることは確実…ということでアブソルは強引だが一気に畳み掛けることにした。


フィオーレ「え!?あ、これ…は…?」

アブソル「前言ってたでしょ!私専用の道具が欲しいって…!それを思い出してさ、丁度良いと思って作ってみた!」

フィオーレ「綺麗な…ペンダント…!」

アブソル「ただの赤い石の装飾品に見えると思うけどちゃんと戦闘にも使える構造なんだ…ど、どうかな…?」

フィオーレ「…ありがとう…!これ…宝物にする…!」

アブソル「あれ…?そこは一生大切にする…じゃ…。」

フィオーレ「わーー!わーー!違う!違うのぉ!これはちょっとした練習で噛まないようにって!」

アブソル「え、えぇ…それは…。」

フィオーレ「と、とにかく宝物にするのは本当だから!さ、先に食堂行っとくね!」

自分の羞恥心に耐えきれず、その場から逃げ出してしまったフィオーレ…怒らせたかな…?とアブソルは予想したがどうやら違うようだった…。

アブソル「箱からペンダント…無くなってる…早速つけてくれたんだ…。」

ちょっと変わったホワイトデーになったが喜んでくれたのならと思うと達成感が出た…アブソルはペンダントの箱の蓋を閉じ、そのまま食堂へと向かった。








〜ちょっとしたその後の話〜

エーフィ「えぇ!?この綺麗な紫の尻尾飾りはアブソルさんが作ってくれたんですか!?」

フィオーレ「そう言ってた…でこれは私に今日くれて…。」

エーフィ「そんなぁ…私も直接アブソルさんに貰いたかったのに…朝の回覧板が憎いですわぁ…。」

フィオーレ(朝いなかった理由って…回覧板だったのね…。)

エーフィ「ふえーん…アブソルさぁん…もう一度朝からやり直してぇ…。」

フィオーレ「それはちょっと無理があるかな…。」

キルリア「私も渡したかったなぁ」
デンリュウ「来年が…ある。」
キルリア「そう言えばデンリュウはお返し来たの?」
デンリュウ「………秘密。」

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