13. クラス対抗戦 ~Leisurely Fighter~ Ⅲ

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読了時間目安:8分
「いくよー、桜城君。二連敗はさすがにかっこ悪いよー?」

試合開始の号令の直後。

バトルフィールドの向こう側、僕の向かいに立った秋島は、唐突に僕に話しかけてきた。

僕は彼女に笑いかけて。ブースターに指示を出す。

「そうはならないから安心してまけていいよ。ブースター、『火の粉』」

「それはいいねー。カルミア、『宿り木の種』」

彼女はいつもと同じほんわか笑顔でロズレイド――カルミアに指示を出す。

『宿り木の種』。敵に植え付けることで対象の体力を奪いその分自分の体力を回復させ続けるという変化技。厄介な代物ではあるけれど、当たらなければどうということはない。

「『火の粉』の照準変更!宿り木を焼き払って!」

ブースターに向けて飛ばされた『宿り木の種』に向けて炎を飛ばす。種はすべて、その炎の弾幕に阻まれてブースターまで飛ぶことはなかった。

「タイプ不利だとやっぱり厳しいなー。『どくどく』」

「かわして『アイアンテール』」

カルミアは自分の手の先に作り出した毒の塊をブースターに向けて一直線に投擲する。

『どくどく』は当てた相手を猛毒状態にする技。猛毒状態は一定時間ごとにダメージをじわじわと与え、そしてそのダメージは時間経過とともに増えていく。いわば毒状態の上位互換のような状態異常。そのためたとえ回復手段があっても長時間の居座りはできない。

しかし、その塊は追尾してくるわけでもなく、大きさも小さく単発攻撃なため回避は難しくない。

ブースターは上空にジャンプし攻撃を回避、尾を硬化させ構える。

「『守る』!」

空中で振り下ろされるブースターの硬化された尾を、カルミアはバリアで相殺する。甲高い音が響き、火花が散る。ブースターは体勢を崩されまいと、すぐさま翻ってカルミアから距離を取って着地する。

「『マジカルリーフ』!」

『マジカルリーフ』。鋭くとがった葉の刃を念力によって高速で飛ばす技。念力である程度軌道を操作することができるため、相手を追従することができ、その命中率は高い。また、基本的に攻撃用の技だが、軌道を操作する能力を鍛えることで、その葉を自分の前面に展開し盾のように防御用の技として使ったトレーナーもいたらしい。

草タイプの特殊技なため、特殊耐久値の高い炎タイプであるブースターが受けても大したダメージにはならないが、だからといって余計な被弾で体力を削られるのも後々どう響くかわからない。

「『火の粉』で焼き払って!」

僕はまたブースターに『火の粉』の指示を出す。しかし数枚だけその弾幕では燃え尽きず、その刃はブースターの頬に切り傷をつける。

「そのまま『どくどく』!」

「かわして!」

ブースターはカルミアの放つ毒の塊に対して即座に回避運動を取ろうとする。けれど。

「ブースター?」

途中で不自然に体が硬直して、毒はそのすきを狙ったかのようにブースターに直撃。フィールドが黒煙に包まれる。

「大丈夫か、ブースター!」

黒煙が晴れる。フィールドに立つブースターに大事はない。けれど、カルミアの放った『どくどく』を受けたことにより猛毒状態に、そしてその体には『宿り木の種』が植え付けられていた。

「そうやっておんなじ対応ばっかりするからー」

恐らく彼女は、僕がカルミアの攻撃を燃やしにかかることを読んで、起動操作で弾幕を突破しやすい『マジカルリーフ』に種をつけて飛ばしたのだろう。徐々に相手の体力を削り、削った分だけ自分の体力を回復できるという厄介な状態異常。交代すれば解けるけれど、残念ながらこの試合は一対一。

更に猛毒によって、じわじわと削られる体力は増えていく。戦況は厳しい。

だけど、僕には片桐のそれのような切り札はない。この状況を好転させられるような策も思いつかない。

僕には、何もない。

「『マジカルリーフ』」

「ブースター、『火の粉』で相殺!そのまま『電光石火』で接近して『アイアンテール』!」

『マジカルリーフ』をさっきと同じように『火の粉』で焼き払う。けれどやはりその全てを燃やすことはできず、ブースターの毛皮を血で滲ませる。

けれどブースターはそれにはもう臆せず、その刃に体を切り付けられながらも素早くカルミアの懐に飛び込んだ。

「『守る』」

ブースターはその尾でカルミアを斬り上げるも、それはすんでのところで強固な壁に阻まれる。

「もう一度!」

「『守る』!」

さっきは空中だったために連続で攻撃するには難しかったけれど。今回は地面に足がついている。態勢を整えて即座に次のモーションに移ることも、難しいことではない。

とっさに秋島はカルミアに『守る』の指示を出したけれど、『守る』や『見切り』の類の技は連続では成功しにくい。

ブースターは一度弾かれた尾をもう一度構え振りぬく。再び作られたその壁は砕け散り『アイアンテール』はカルミアに叩きつけられた。

カルミアは特殊攻撃力、特殊防御力、それから素早さに秀でているけれどその代わりに物理耐久は低い。華奢なカルミアはその衝撃に耐えられず、バトルフィールドの壁に叩きつけられる。

しかしその攻撃は、致命傷ではあったけれど戦闘不能に追い込むには至らなかったようで。まだ立ち上がってこちらを睨んでいる。

代わりに、その視線の先にいるブースターの様子がおかしかった。

「なっ……ブースター!」

攻撃した側であるはずのブースターがふらふらと倒れこむ。

――時間切れ。

つまり、スリップダメージが限界を超えてしまった。ブースターは倒れたまま立ち上がらない。

「ブースター戦闘不能!ロズレイドの勝ち!二組大将の勝利!」

審判の声が響く。僕の負けが確定する。その声を合図に、秋島はパートナーをボールに戻す。

「カルミア、頑張ったねー」

僕にはその声が、とても遠くから聞こえてきた気がした。

部内戦の時と同じ。今回は一矢報いることこそできたけれど、結局あと一歩及ばなかった。

また。あと一歩で。

負けたくないと願っていたけれど。願いだけでは。想いだけでは。

僕は、あんな小さな約束も守れない。守るだけの力もない。

僕は。僕は――


一回戦 第三試合。

秋島対桜城。

――秋島の勝利。
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感想

お名前:北埜とら さん
おおう、負けてしまった……これは予想外の展開です
>そうならないからまけていいよ
の台詞で「日向くん言うじゃん!!」と期待が高まってからのこれ!しかも相手は一度負けている秋島さんで、タイプ相性的には有利なはずのロズレイドですからね。必中技のマジカルリーフとやどりぎのタネの合わせ技でどくどくを当てるというコンボには舌を巻きました、お見事! 素人目ですがロズレイド相手に炎技ではなくアイアンテールで攻撃を仕掛けようとしているのが気になります。これからひのこ以外の戦える炎技を覚える布石になっているのか、何か理由があるのか……
ぬおお今後が楽しみです……日向くんに結衣ちゃんはどんな言葉をかけるだろうか……日向くんがんばれ……
書いた日:2018年01月07日
作者返信
負けちゃったんです......あれだけ勝てそうな雰囲気だったのに......
技のコンボとか特性と技のコンボとか個人的に好きでこれからもいろいろ出していきますよ~!(多分
感想本当に励みになります、ありがとうございます......僕は基本的にちょろいのですぐにモチベが上がってしまいます......次話の更新も楽しみにしていただけると幸いです。
日向君には強く生きてもらうしか......頑張れ日向君......
書いた日:2018年01月07日