第83話 真実の力とブレスレット

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「そこのちっこいの!」
「へ? わたし?」
「そうだ! お主、カイリュー使いじゃろう!」

 ポケモンセンターに着き、戦いで疲れたポケモン達を癒すために預けていたら長い薄紫の髪を耳の横に二つにまとめた(所謂卑弥呼さま式髪型スタイル)お婆さんに声を掛けられたマイ。

「カイリュー使い? なんですか、それ」
「あー確かフスベシティにはドラゴンを自由に操れる一族がいるとかって有名だったな。その一族と勘違いされてんだよ、きっと」

 ゴールドは呆れた顔でお婆さんを見る。両腕を頭の後ろに回して白けた目を向けていたせいか、お婆さんは持っていた杖でゴールドとマイの頭を叩いてきた。マイは完全にとばっちりである。

「痛い痛い! なんでぇー!? ゴールドならともかくわたしまで……」
「なんか言ったかマイ」
「全くお前達話を聞け! 見たところちっこいのポケモントレーナーじゃな?」

 涙目でゴールドを見上げるマイに威圧感を与えている最中、お婆さんはマイを呼ぶ。そうですけど、と答えればため息をつかれる。

「その実力ではこのフスベシティジムリーダー、イブキには勝てそうにないのぅ」
「なっなにを「なにをぉー!?」ま、マイ?」
「大体お婆ちゃん名前何て言うの? わたしはちっこいのじゃなくてマイっつー名前があるの!」

 一応トレーナーの端くれであるから、プライドを傷つけられたのかマイはカッとなりお婆さんを問い詰めると余裕がある笑いで返され、二人が座っていたソファに座る。

「わしはキワメ。普段はこんなところに住んでおらん! 2の島に住んでいる。気分転換に来たお嬢ちゃんよ」
「キワメお婆ちゃん」
「キワメお嬢ちゃんじゃ、まったく。ん? マイ、その右腕の銀の輪……」

 わざわざキワメお婆ちゃんを訂正されたがマイは気にしない。逆にゴールドは乱暴な言葉を使ったマイに目を白黒させている。
 キワメ婆はマイの右腕を軽い力で掴み取って銀色のブレスレットを凝視する。

「これはソラにいちゃんからもらった大事なものなの!」
「ソラ……? まあよい。その輪、意味は分かっているな?」
「ブレスレットに意味があるのかよ」

 庇うようにブレスレットを手で覆うマイを守るようにゴールドが一歩前に出た。
 キワメはソラという人物に覚えがないのか年からの呆けなのかさて置き首を傾げるが話を続けた。

「その輪、ドラゴンタイプの究極奥義、流星群を引き出すためのもの。しかしオカシイな、その輪を付けている間わしからは二十寸離れられないはずなんじゃが……ふうむ」
「故障じゃねーの? ま、よくあるこった気にすんな!」
「マイ、その輪を付けていて激痛が走ることはなかったかの?」

 キワメは一人で話を進めていたがゴールドが話を遮ることでマイに話を振る。

「うん、すっごい痛い時があるよ。ついこないだも……リューくんがなんだかよくわからない技を使ってくれた時なんかすごく痛かった。けど、これはこの痛みは……わたしの判断ミスで受けた電撃からで」
「うーん。何にしろきっかけがあったわけだな。そこの爆発頭の方が説明がうまそうだ、その電撃とやらを受けた話をしてくれんかの?」

 マイが頷き言葉につっかえながらも必死に説明をするがキワメには理解が出来ずにゴールドを頼る。
 電撃を受けたというのはまだ暑い夏の日、エンジュシティの歌舞練場でのバトルでサンダースの電撃を受けたことを話す。カイリューはまたボールの中で大きな身体を丸ませて頭をさげ、そんなカイリューにマイは笑いかけて気にしないでよ、と言う。

「なるほど。この輪、どういうわけかこんな小洒落たモンになっておるが実際、究極奥義を引き出すための輪。本当ならばこれを付ければわしからは離れられんのだが……。しかも付け外し自由なんて聞いたことない! まあ、何にせよその電撃で輪が本来の力を作動させようとマイの身体に影響を与えたわけだ」
「マイ? 話について来れてるか?」

 キワメの長々とする説明に目を回すマイはポケモンセンターの受付のソファに背を任せ倒れこむ。

「まあ、このブレスレットは究極奥義を出す道具で、お前に激痛が走るたびにリューくんの攻撃力やら身体能力がアップしてたわけ」
「でも普段戦ってても痛い時はあんまりないよ? 昨日はほんとに痛くて泣きそうだったけど」
「発動条件があるんじゃな。昨日はどうして痛いと思った?」
「昨日は……ルギアにゴールドがやられちゃって死んじゃうかと思ったからで……助けたいと思って、えっと……」

 ゴールドの説明に理解したマイは起き上がりシャンと背筋を伸ばして座りなおす。再びキワメに問われればしどろもどろに答える。

「なるほど、わかったぞい。つまりこの小僧のことになると必死になるという訳かい。クッフフフ、若いのう、青いのう!」
「マイはそんなんじゃないと思うけど」
「わたし青くない!」
「「 そういう意味じゃない 」」

 キワメは納得すると腰を上げてソファから立ち上がり、こちらを見るとニヤニヤと嫌らしい顔つきでマイに言う。

「その銀色の輪の塗装が完全に剥がれ落ちる時、真実の力を得るじゃろう。まあ、それまで痛みは辛抱じゃ! カッカッカッ!」
「えっこれ銀色じゃなくなっちゃうの?」

 銀色の塗装が剥がれ落ちる事を教えていないのにキワメ婆は分かっている顔つきで杖を手に取って言葉を紡ぐ。

「まあ何よりも若い! がんばるんじゃよ、ほれカイリュー帰るぞ」
「あっカイリュー! キワメお婆ちゃんもカイリュー持ってるんだ!」

 ポケモンセンターから出るキワメ婆を追いかけて見たものはカイリュー。マイのカイリューとは風格がまるで違う、威風堂々とした姿はドラゴンの中のドラゴンとも言える。

「またねー! キワメお婆ちゃん!」
「キワメお嬢ちゃんじゃ! まあ、困ったらいつでもおいで! 来れるモンならじゃがの! カッカッカッ!」

 あっと言う間に空高く昇って行くキワメ婆に手を振るマイに上機嫌な笑い声を上げて遠い空に消えていった。
ゲームではタツさんだったような気がしますが、キワメさん好きなんで…

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