第33話 特製:もらい火

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 青い着物の舞妓さんが出したポケモンは、イーブイの進化系ブースターだ。

「ならわたしはこの子! キューくん!」
「あら? 同じ炎タイプですの? まあワタクシのブースターは炎タイプの技しか覚えさせてないけれど、まああなたレベルならば楽勝でしょう」
「マイ! 別のポケモンに変えるんだ、ロコンはまだ経験が足りない!」

 煙と光に包まれて出てきたロコンに対してゴールドは正論を述べた。まだ小さいロコンにはバトルの経験がなさ過ぎる。
 不安を真正面からぶつけてくるゴールドに対してマイはそんな顔を一切しないで自信に満ち溢れた表情をして言い返す。

「だいじょーぶ! キューくん、いけるよね」
「きゅー!」
「ほらぁ! だいじょうぶって言ってるもん!」
「あ、あのなぁ……まあいいか。がんばれよー」

 舞妓さんの名前はアオコ、ブースターに余程自信があるのだろう、さっきから、うちの子は攻撃力が高いオホホホと自慢をしている。

「さ、ブースター。決めてしまいまひょ。炎の渦!」
「わあ! あっつ! キューくんだいじょうぶ!? どうしよう炎に囲まれちゃった!」

 ステージ場に大きな炎のリングが地べたを囲い、その中にロコンとマイが入ってしまった。相当暑いのかパーカーを脱ぎ、腰に巻くマイ。それでもロコンは平気なのかマイの指示を待っている。

「うん、やっぱり自慢するだけあるね。炎がすっごく熱いや……ふう」
「マイ! 平気か! 早く降参しろ! お前がどうにかなっちまうぞ!」

 外側からゴールドが必死に声をかける。アオコは余裕の表情でマイを見ていて助ける気配はない。

「降参なんて真っ平ごめんだ! キューくん、こんな炎突っ走ってブースターにしっぺ返し!」
「キュー!」
「そうか! ロコンの特性、もらい火! これでダメージを受けることはねえ!」

 暑さを微塵にも感じさせないロコンにブースターはたじろぐ。あんだけ特大の炎を目の当たりにした、この返しはデカイ。
 そもそもしっぺ返しは二倍の威力を発揮する、何もダメージを受けていないが主人を危険な目に合わせたと、ロコンは怒りに身を任せ、ブースター目掛けて突進をくりだす。

「ブースター!? つ、強い! なんて強さなの! い、いいえ。これはしっぺ返し、つまりワタクシのブースターが強いってことね」
「しかしなんで、このロコン強いんだ? まだゲットされたばっかりなのに……」
「キューくん、相手は炎系の技しかないみたいだから安心してね!」

 アオコはブースターの受けたダメージの大きさに目を大きくさせるが何故か喜んでいて、ゴールドは懐いているロコンに疑問を抱き、マイはロコンに待機をさせる。

「ブースター、負けてられないわ! 大文字! 気合で突破よ!」
「キューくん、その炎受け取っちゃって!」

 ブースターがヤケクソの炎を口から出すと、名前の通り、炎が「大」という形をしてロコンにぶつかる、しかしダメージはなくロコンの攻撃力は上がる一方。

「そうか、フレンドボール! それでロコンはあんなに懐いているのか!」
「ゴールドなんか言った!? キューくん、しっぺ返し!」

 疑問が解決したところでゴールドは顔をあげ、ブースターがぼろぼろの状態に気づいた。
 マイが炎の渦の中でゴールドに大声で聞いたには聞いたが、聞く気はないようでバトルに集中している。

「完敗です。これ以上、ブースターを傷つけることなんてできません! 負けました。降参です!」
「ふうー! 暑かったぁ~はぁ」

 バトルで活躍したロコンの頭を撫でてボールの中で休むように戻してやる、そしてゴールドのニョロモが水鉄砲で炎の渦を消した。
 どうやらレベルの高いポケモンの技はボールに戻ったとしてもフィールドから技が消えないらしい。

「ニョたろう、ありがとうね! 涼しくなったよ!」
「たくよォ、火傷でもしたらどーすんだ」
「あてっ! えへへ、ごめんなさーい」

 炎を消してくれたニョロモにも忘れずに礼を言ったらゴールドに駄目出しをされてしまった。まだ嫁入り前の娘だ、顔に傷跡が残ったらマイだけではなくウツギだって悲しむ。
 その意味でマイの頭を一発軽く殴ってやる。もちろん、かるーくだが。

「ポケモンも大事だが、マイだって同じくらい俺は大事なんだ。無茶すんなよ」
「うん、でもホントに危なかったら助けてくれるでしょ?」

 ゴールドは照れたのか頰を軽く右手でかきながら、まあなと答える。アオコが一連の流れを温かい目で見つめ、一礼すると奥に入って姿を消すと同時に赤い着物をきた舞子さんが出てきた。

「さあ、今度はウチどすえ。アカコと言います、どうぞよろしゅう」
「俺はワカバタウンのゴールド! 次は俺の番だ!」
「あらら、元気なことで。そら、お行き。シャワーズ」

 モンスターボールから出てきたのはシャワーズ。これまたイーブイの進化形で、水のエキスパートだ。半魚の哺乳類のような姿をしたポケモンで体色は青色をしている。 尻尾は魚の尾ひれのようになり、耳は魚の鰭のような形状へと変化している。

「きれー……。はっ! フィーちゃんも美人さんだよ!」
「ふふふ、そうでしょうそうでしょう。本当はエーフィが……ゴホン」

 マイがその美しい見た目に目を奪われるが、エーフィがボールの中から鳴き声をあげ、現実に引き戻される。アカコがトンデモな発言をしたが聞かなかったことにしよう。

「よし、そっちが水タイプなら俺はキマたろう!」
「キマちゃんね」
「キマたろう! だ!」

 草タイプのキマたろうを出したゴールド。相性も大丈夫だ、しかしレベルの差が激しいような気もするのだが……。
 トリッキーな作戦でもあるのだろう、余裕な顔でマイを後ろに下げる。

「キマちゃんがんばってね!」
「キマたろう!」

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