第117話 ポケモンリーグ・シロガネ大会 第三予選

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「俺はこいつだ、テル!」「ピーくん、君に決めた!」

 同時に発せられた言葉からバトルフィールドに飛び出してきたポケモンは、ライチュウとピカチュウ。
 予選とは言え最終試合だ、会場は今日一番の盛り上がりに包まれる。歓声に怯えるようにマイはゴールドから借りた帽子を深く被るが、はっとして浅くかぶり直し、真っ直ぐ対戦相手であるオレンジを金色の瞳で見つめる。

「ライチュウ!? 可愛いけど強そう……。ピーくん頑張って! わたしも頑張るから!」
「ちぇーキャラ被ったかー。けどまぁ、俺のテルの実力見せてやるぜ! ロケット頭突き!」
「ライラーイ!」
「ビィッ!」

 まさかの同じ系統ポケモンにマイは目を開く。いまだ続く頭痛と熱に身体が思うように動かず先手を取られる。
 ライチュウによる体重を使った重い一撃にピカチュウはバトルフィールドの端から端へ飛ばされ、壁に打ち付けられた。

「ピーくん、起き上がって! ライチュウに同じ電気技はそんなに効かない……! ならっアイアンテール!」
「ピィィカッ!」
「早い! テル避けてくれー!」
「ライチュウはパワーが強い分、スピードはピカチュウには負ける! 絶対避けれないよ!」

 ピカチュウが電光石火の速さでライチュウの元へ走り、その間に尻尾は黒く光り戦闘態勢へと変る。

「ピッカァ!」
「テル、大丈夫か! お前、俺のテルにダメージ与えるとか中々やるな! よーし、テルの攻撃力なら負けないぞ! 本当の電気の力を見せてやるぜっ雷パンチ!」

 重く鉛になったピカチュウのアイアンテールを顔面に食らったライチュウは歯を食いしばりながらもその場に止まる。地面に足がめり込みながらも立つその姿は敵ながらアッパレ。
 ライチュウは顔を数回横に振って己を取り戻すと電気の力をバチバチと音を響かせ、右拳に集めるとピカチュウ目掛けて振り下ろす。オレンジも右手を前に突き出して同じポーズをしていた。

「遅い! ピーくん穴を掘る!」
「逃げるってか!? 出て来た所をはたき落とすんだ!」
「真下がガラ空きだ! 草結び!」

 雷パンチのダメージを受けるわけにはいかない。素早く地中に潜り込み攻撃のチャンスを伺う。試験のために勉強した事がここで役に立ったと、ゴールド含めマイに関わった人物は思う。
 ライチュウは辺りをキョロキョロと見渡しピカチュウを探すが見つからない。それもそのはずピカチュウは移動する訳ではなくその場に潜っただけ。

「テル、雷でピカチュウの動きを封じるんだ!」

 草結びによってその場に倒れるライチュウは倒れこむ動きのまま雷を呼び込みピカチュウにくらわせる。

「ピーくん、空元気!」
「そう来たか! だったらこっちは――なんだアレは?!」
「そうやって不意打ちを……ってええええ!?」

 異常状態の時こそ出来る技もある。麻痺状態になった事実を受け止め、有難くも利用させてもらう。
 オレンジが次の指示をしようとした時、バトルフィールドに大きな影が降り注ぐ。何事かとオレンジやマイ、会場全体は上空を見るとそこには。

「はーっはっはっ! リーグにいるポケモンはみーんなアタシ達がいただくよー!」
「なんだアレ!?」

 ニャースの顔をした気球が浮かんでいた。その気球の下には大量のモンスターボールが入った網袋が吊るされていて、みんなが自分たちを確認するのを待っていたように気球からアナウンスが流れた。

「何だかんだと聞かれたら!」
「答えてあげるが、世の情け。我らの名は!」
「ミサト!」
「ミサキ!」

 どこからか出て来たか分からない煙と一緒にミサトとミサキは気球から顔を出してポーズを決める。

「誰だよ! バトルの邪魔をするなよー!」
「「それはこっちの台詞だ!」」
「ご、ごめんなさい!」

 ライトアップまでする二人組にマイは声を荒げたが、二人に怒られてしまいシュンとする。その間にピカチュウはマイの元へ走り、胸に飛びついた。ライチュウもオレンジの元へ行き、ふくらはぎにぴたっと抱きついた。

「オッホン……。ジョウトを駆ける二人には!」
「地位と名誉と上がった株が待った無し!」
「我こそはー!」
「「チーメーカー!」」

 咳払いをしてまた茶番を始める二人に会場は開いた口が塞がらない。
 マイは大量のモンスターボールの中にポケモン達がいる事に気付きバトルフィールド中央まで駆け寄るとオレンジをここまで来いと呼ぶ。

「そこ! チョロチョロ動かない! アタシ達の目的は他人のポケモンを奪い、売りさばく事なんだから!」
「そーして俺達の地位と名誉と株をあげるのさー♪」
「サイテーだよ! もー怒った! オレンジ、さっき言った通りによろしく!」
「おう!」

 地上で動き回るマイとオレンジに腹を立てたミサトとミサキは苛立ち、言わなくてもいい事を言う。
 会場は完全にパニックに落ちていた。突然チーメーカーと名乗る頭のおかしい二人組から逃げようとする一般市民、トレーナー、ポケモン達が我先にと逃げようとする。ゴールドもマイの元へ急ごうとその場から立ち上がるがレッドが肩に手を置いて首を横に降る。

「何スかレッド先輩! マイが危ないんだ! 離してくれよ!」
「マイに任せよう。見ろよ、あの顔。何か思いついたみたいだぜ?」
「でも……!」

 肩に置かれたレッドの制止を振りはなそうとした時、オレンジがメガホンを使って叫ぶ。因みにこのメガホンは目立つ事が大好きな為リュックの中に入れて持ち歩いているそうな。

「テル! ピカチュウの尻をロケット頭突きの要領で気球まで吹き飛ばせ!」
「ラァァアアアイッ!」
「ピーくん! 身体中に電気をためて気球に突っ込んで!」
「ピィィィカッー!」

 ライチュウによって上空に飛ばされるピカチュウは身体に電気をまとって気球に突っ込み、更に空へ飛ぶ。

「あら?」

 ミサトが不思議そうに上を見ると気球の裏側から綺麗な青空が気球から「こんにちは」をして見えた。

「網袋をアイアンテールでぶった切れェ!」

 ピカチュウが貫いたら後はそのまま下に落ちるだけ、その途中にアイアンテールで網袋と気球が繋がるロープを切り取った。
 落ちてくる無数のモンスターボールを踏み台にしてくるピカチュウをマイはがっしりと受け止めた。

「「やな感じー!」」

 気球と一緒に何処かへ飛ばされるチーメーカーを見届けると会場は絶望の叫びから希望の拍手喝采へ変る。さぁ、いざ勝負の続きと思いライチュウを見るとぐったりとしていてオレンジに抱き抱えられている。

「俺の……負けだ!」
「へ?」
「ロケット頭突きをする時にお前のピカチュウ、どさくさまぎれに叩き落すを使ったんだよ!」
「あー……なんかごめん」

 どうであれライチュウは戦闘不能となり、マイのピカチュウがバトルフィールドで立っている結果になった。
 邪魔が入らなければライチュウも負けていなかったかもしれないとマイは思い謝るがオレンジが鼻を鳴らしてこう言う。

「ハッ。お前のピカチュウはサイコーだよ。俺の負け! マイ! いいか! お前はリーグで優勝しろ! なんてたって俺を倒したんだからな!」

 オレンジの潔い台詞に会場が拍手をまた送る。俯く事もなく真っ直ぐ前を向いたまま東ゲートにオレンジは胸を張って戻って行く。

「勝った……? 勝ったんだ! わたしっ勝ったんだー!」

 マイ、コウ、アヤノ、ソラのポケモンリーグ出場が決まった瞬間である。
 ゴールドやクリスが手を叩き合ってはしゃぐ中、レッドだけが口元に手を当てて何やら難しい顔をしていた。

(マイがピカチュウに指示した技はボルテッカーか? そんな力どこにあったんだ? ゴールドが教えれるとは思えないけど……面白い奴に会っちゃったなぁ!)
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