第115話 リーグはみんなで創り上げるモノ

※作品によって表示に時間がかかります
 ポケモンリーグ予選最終日。
 彼女の自室にゴールドが起こしに来たのはいいのだが、起きた時の本人の顔がリンゴのように赤くなっていたので熱を測ればーー

「三七.五度……。試合まで時間がある寝てろ」
「えー……でもでもでもソラ兄ちゃんの試合見たいし……」

 昨日「明日は図鑑所有者全員集合!」なんて盛り上がってしまいドンチャン騒ぎをした結果だ。しかし、その図鑑所有者はカントー地方のとある事件によって来れなくなってしまった。

「他の連中に連絡してくるからよ、ちょっくら目ぇ瞑って待ってろよ。あと、薬持ってくる」

 慣れた手つきで勉強机に置いてあった、お薬箱からオデコに貼るタイプの熱冷ましシートを出して、いつもなら全力でオデコを見せるのを拒否するマイの前髪を左右にわけてから貼り付け、部屋を出た。

「ソラ先輩達の試合時間は午後一時だ。今は午前九時だから寝てればまだ間に合う」

 熱が出ると吐く事も少なくないので、吐き気どめの薬と落としても割れないプラスチックのコップに水を入れて戻って来た彼から薬をもらい飲み込んだ事を確認してからそう言う。
 
「ソラ兄ちゃんはゴールドにとっては、ソラ先輩なの? どうして? なんで?」
「俺より年上だし、お前の扱いに長けてる意味でだ! ンな事より寝てろって!」

 今聞かなくてもいい事を聞いてくるあたり頭の回転が追いついていないようだ。

「ソラ先輩にも言ってあるから心配いらねぇよ。それに相手の選手も協力してくれるらしいぜ」
「きょう、りょく?」
「時間を長引かせるために、だ。お前は最終試合だからな、ソラ先輩達の試合が終わった後だからいくらでも時間は長引かせる」
「そうなんだ……」

 マイが不安さを込めて心配そうに顔を歪めるので泣かれる前にゴールドが先手を打って言葉を放った。その言葉に意味が分からずにマイは首を傾げながら聞くとゴールドが簡潔に言った。

「まぁたそんな顔しやがって! よくあるこった気にすんな」
「わわ、ありがとう……」

 布団に顔をうずめるようにマイの頭を雑に撫でてやる。マイが乱れた前髪を戻しているとゴールドが右手の人差し指をピンと立てる。

「それに、もし試合が終わっても体調が戻らなかったらパープルって奴がホウエン地方で人気になってる『ポケモンコンテスト』とか言うやつをやって時間をかせいでくれるらしいしな」
「わー、大感謝だよー……」

 カントー地方、ジョウト地方では流行っていないがホウエン地方ではすでに「ポケモンコンテスト」と言う、ポケモンの技と技のぶつかり合いではなく技の"美しさ"を競うコンテストがあるらしい。トレーナーとの息が合うと綺麗に技が見えて、その点数を競う。
 それを時間稼ぎでパープルがアヤノやコウ達で模擬コンテストとしてやってくれるときた。

「な? だから今は寝てろ! それが今のマイに出来ることだ! 何かあったらポケギアに電話しろよ? 俺は様子を見にリーグまで行って来っから!」
「うん、いってらっしゃい」

 恐れを隠すようにわざと明るく振る舞うマイに気を使ってゴールドも、いつもよりテンションを上げて別れを告げた。

「からだ、ぽっぽっする……」

 残された部屋で熱のせいではない、別の何かのせいで彼女の顔がまた赤くなっていた。
 ふわふわと夢の中で空中を歩いているように浮ついた頭なのに、心臓……心だけはドクドクと素早く脈を打って熱よりも熱く、にがくて、苦しくて、もどかしいのに、どこまでも甘い。この気持ちは何なんだろうか、まだ彼女には分からなかった。

◆◆◆

「あっ! ゴールド君、こっちこっち!」
「ソラ先輩! 相手選手は何て言ってたんスか?」

 リーグ会場まで着くとまだ十時前だというのに人で溢れかえっていた。会場に入るとまず大きなスクリーンが見える、その付近に植木鉢が無駄に置かれたコーナーがあるのでそこに集合場所となっていてすぐにソラを発見出来た。

「うん、バッチリ。なるべく試合時間を伸ばしてくれる戦いにしてくれるみたいだ」
「そっすか、よかった……。パープルには会ったすか?」
「おう、それもOK! 最終試合に華を添えるみたいでステキですね~って言ってたぐらいだしなぁ! じゃあ俺、ユウナとまだ話があるから!」

 今日が試合なのか、たまたまなのかソラの髪型がいつもより整って見えた。マイを心配しつつも試合の事も心配しているのか強気の緑色の瞳がいつもより弱々しい。それでも後輩に悟られないようにソラは声を上げた。
 相手選手のユウナと作戦会議をするようでソラはそう告げると控え室へと早足で歩く。

(この人もこの人で大変みたいだなァ。俺も何か出来ないか探さねぇと)
「なぁ! おーい! おいってばー!」

 ゴールドが辺りを見渡して他に知っている奴がいないか探そうとすると声を掛けられた。その方向に顔を向けるが知っている顔はナシ。

「ん? 気のせいか」
「違う違う! そこの爆発前髪!」
「ああ!?」

 半袖の黒色Tシャツに黒いジーンズに身を包む男の人がゴールドに向かって走って来る。恰好は地味なくせに頭がオレンジ色をしていてやけに目立つ。
 しかも初対面のわりにフレンドリーなこの男。

「俺はオレンジ! なぁお前、マイの知り合いだよな? あいつ、何かあったのか?」
「オレンジィ? 聞いた事ねぇ名前だな……マイの知り合いっつーか、相棒というか、なんつーか」
「なんでもいいよ! マイの知り合いだよな!?」
「まー、そうだけど」

 自身を指さすように向けた人差し指でオレンジと自己紹介をしてきた少年、オレンジはマイの対戦相手だ。ゴールドは知る由もないので眉を寄せて身体をそらす。ゴールドの威嚇だ。

「もう来てるはずなのにいないんだよ、どこにいるか知ってるか?」
「知ってるけど答える義理はねェな」
「なんだよ、それー! 俺、対戦相手なんだけど」

 ゴールドはオレンジが嫌いなタイプの様子。ポケットに手を入れたままオレンジの話を聞いているが答える気はない。しかし、対戦相手と聞いて目の色を変えた。

「マイは今熱出してる。けど、お前と戦うために自分とも戦ってんだ、邪魔すんなよ」
「そうかぁ……あいつ、弱っちぃかと思ったけどファイトのあるヤツだったんだな! 見直したぜ! 試合には出るんだよな!?」
「おう。モチロンそのつもりだ! 首洗って待っとけ!」

 ツバを吐き捨てるみたくゴールドが冷たく言い放つがオレンジは良い方向に受け止めたようで顔色を変えない。むしろポジティブに対応されてしまう。
 これ以上冷たく当たっても仕方ないと思ったゴールドは勝利宣言を突き立てその場を去って行った。
前に戻るもくじ次へ進む

読了報告

 読了報告及び評価をするにはログインが必要です。

感想フォーム

 この小説は感想を受け付けていますが、感想を書くにはログインをしている必要があります。

 そのため、感想を書くにはアカウントを所有している必要があります。

感想

 この小説には感想がついていません。