第101話 そんなハズない!

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 ウツギ宅の玄関前でアヤノは胸いっぱい息を吸って一気に空気を言葉と共に吐き出した。

「起きなさい!! マイ! 早く出て来るのよ!」

 そんな怒号に近い何かを庭から聞こえて来たマイは跳び起きて着替えながら玄関まで走って来たのだが、訪問者がそこでようやくアヤノだと知り、ため息を軽くついてから部屋へ戻ろうとする。
 それ以上先には行かせまいと、アヤノは靴を脱いで向きを揃えるとマイの肩を掴んで無理矢理振り向かせると鬼のような形相でマイを見て不敵に笑った。

「わかった、行くよ……」
「まったくオーキド博士から大事な話があるって聞いたから迎えに来たのに、遅れるところだったじゃない! ギャラちゃんお待たせ。じゃ、カントー地方マサラタウンまで空を飛ぶ!」
(というかなんでわたし着いて行く必要あるんだろ、聞いてないけど……)

 大きなため息をつくと一緒にアヤノの後を付いて行くが廊下を歩いている間にも文句をたらたらと言われて朝から頭が痛くなるマイであった。
 玄関を開けるとギャラドスの鮮やかな青色をした胴体がお出迎え。その頭にはコウが乗って待機していて二人が尻尾に乗るとギャラドスが尻尾を頭の方まで動かし二人がジャンプして頭に到着。

「ギャオーン♪」
「へえ~こんな感じで空を飛ぶんだ」

 ギャラドスで空を飛んだことがなかったマイは新鮮だったため、身を乗り出して下に見えるワカバタウンを覗き込む。カイリューによる空を飛ぶは非常にスピードが速くゆっくり風景を見れないのだ。そもそもギャラドスは空を飛ぶを覚える事のないポケモンなのだが、幼少期のアヤノによる「空を飛ぶを覚えて欲しい」という無茶振りに近いお願いを間に受けたコイキング時代。ギャラドスに進化してから死に物狂いで覚えたとっておきの技だった。
――マサラタウン、オーキド研究所に着くとアヤノとコウは緊張した顔持ちで扉の前に立つ。

「何つったってんの? 早く入ろうよ」
「ばっばばばか! あんたここがどこだか分かってるの!? オーキド博士の研究所よ!」
「そそそうだぞ。心の準備が――」
「たのもーっお邪魔しまーす!」

 扉の前に立ったまま動かない二人にマイは首を傾げて意見を聞いていたが待つのが嫌になったのか勝手に扉を開けて中に入ってしまった。
 中にいたオーキド博士は「おーアヤノ、コウ。よく来た……ま、マイ!? なんでここにいるんじゃー!?」なんて言ってから座って居た椅子から後ろに転げ落ちた。

「なんでってアヤノが、オーキド博士が呼んでいるから早く来なさいってうるさくて」
「今のってアヤの声真似か? 中々似てるな」
「コウ、そこは褒めるところじゃないぞ。はぁ、来てしまったのか……」

 尻もちをついたオーキド博士にずかずかと近寄り手を差し伸べてマイはオーキド博士を起こしてやりながら答えてやる。あとはコウの言葉通りだ。
 雑に起こされながらも椅子に座るとオーキド博士は額に右手をついて頭を左右に緩く振る。

「え、まさかマイは呼ばれてなかった?」
「そのまさかじゃ……まあ、マイ。そこで遊んでいてくれ」
「なにその扱い!? わたしにも話あるんじゃないですか~!」

 アヤノの鋭い指摘に苦虫を食い潰したようなオーキド博士。すかさずマイが食いついて座って居るオーキド博士の肩を揺さぶる。

「分かった分かった。聞くだけだからな文句は言うんじゃないぞ」
「うん! 分かりましたっ! 聞くだけ聞くだけ!」
「今日君達を呼んだのは他でもない。君達にある物を与えたくてな」

 肩から手を外させてマイを大人しくさせると話を始めた。しかし、ある物に心当たりのあるマイは話しに割り込もうとしたが、コウの手によって口を塞がれ結局三人で二人掛けのソファーに座った。

「君達は知らないかもしれないが、まずはこれを見てくれ」
「これって、歴代図鑑所有者図鑑! 私が載ってる! わあっ!」

 黙ったマイを確認すると博士は白衣の中から分厚い本を取り出しアヤノとコウとマイに渡した。手渡されたアヤノの顔はみるみる赤くなって目を嬉しそうに細めた。

「そうだ。ほら、コウはその次のページじゃ」
「あっ本当だ……すごい……俺の顔、変に映ってないかな」

 年相応の喜び方をするアヤノと違いコウは控えめに声を上げた。マイは目を輝かせてゴールドのページを眺めていた。顔写真ばかりに目が言って内容を読んでいないのだがマイが疑問を投げかける。

「ねえ、わたしのページは?」
「ウッ……さ、さてどこじゃったかな?」
「ああ、そういう事ですか! ふふっマ~イ~あなた、まだ功績が認められてないのよ。だから載らない。載せられない、そういう事ですね!」

 そうなのだ。一番始めのページから最後まで見てもマイの写真はどこにもない。

「そんなハズない! ねえ、オーキド博士教えてよ! わたしはどうしてこの図鑑に載ってないの!」

 立ち上がったアヤノの人差し指で刺されたマイはムッと顔をさせてアヤノに食らいつく。少しだけ身長の高いアヤノの首元に手を掛けたままオーキド博士の方へ顔を向ける。コウが二人の間に割って入ってようやく二人は落ち着きを取り戻す。

「まあ、始めからよーく読んでみろ。きっと答えが分かるはずじゃ……いやしかしマイに関しては本当にすまないと思っておる……ははは……」

 意味深な言葉に全員が首を傾げるが言われた通り読んでみる三人。アヤノがまずは私から、と声に出して読もうとしたのかコウも続けて俺が読む、なんて言っているあたり仲は良いらしい。

「レッド……ポケモンバトルの腕前は超一流【戦う者】」
「グリーン、ポケモンの育成に長けており、祖父であるオーキドからの評価は【育てる者】へえ」
「ブルー、進化に造詣が深く、オーキドからの評価は【化える者】あれ、ゴールドが電話でシルバーさんのと言ってたのと同じ?」
「イエロー……ポケモンの傷を癒す。癒す!? なにそれすごい……代名詞は【癒す者】」

 聞いたことのない名前に三人は顔を合わせるが答えは出てこない。オーキド博士は待ってましたとばかりに顔を二ヤつかせて「君達の先輩じゃよ」と教えてくれた。アヤノとコウ、そしてマイも目を丸くしてこの人たちが!? と顔写真を見て驚いていた。

「はいはい! 次、わたしが読む! ゴールドは【孵す者】ゴールドが孵化させたタマゴから生まれたポケモンは、特殊な能力をもつ!」
「クリスさまは私が! 【捕らえる者】ふふっ言う間でもないわねっこのページだけ写真撮っておこう!」
「ならシルバーさんは俺が。ポケモンの通信交換とそれに伴う進化に特別な才能を持つ【換える者】」

 知っている人物について読むとそれぞれ満足そうな顔でにこりと笑い合った。ブルーとシルバーが同じ読み方をしているが意味が全く違うことを知ったマイは、ゴールドが電話で言っていたのはこの事かと理解した。

「さて、次のページからは君達の番じゃ」

 オーキド博士が放つ言葉につばを飲み込んでからアヤノは声に出した。
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感想

お名前:ioncrystal  さん
Ionです。
つーかすげえ!マイさんの立場がゴールド原作オマージュだ! 前回の回でも素直に等身大の姿を描写されたり(黒いモヤ)、すぐに気を取り直したりする彼女、良い子なんですね。
ここから改めてシリアスモードになるのか、否か。
順々に追っていこうと思いますです。ありがとうございました。
書いた日:2018年01月19日
作者返信
こんにちはイオンさん! 二度目まして!
そうです! オマージュ! 良い言葉! そーなんですよー!(二回目)悪い言葉はパクり(笑)
良い子だと思ってくれてありがとうございますー! マイはモヤモヤしてもすぐに立ち直るタイプなので、そこの所もゴールドオマージュ? 性格が似てきた……?
感想ありがとうございました! またよろしくお願いします〜!
書いた日:2018年01月19日