92話 連撃を越えてJ

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「さらにこのブラッキーにはポケパワー、月隠れというものがあるの。このポケモンがバトル場にいるとき自分の番に一度使えるポケパワーで、コイントスをしてオモテならこのポケモンとついている全てのカードを手札に戻せる。ヤワな攻撃をされても、このカードを戻してしまえば問題ないってことよ」
 蜂谷のバトル場にはW無色エネルギーがついたチラチーノ90/90、ベンチにメガヤンマグレート70/110、ヤンヤンマ10/50、ヤンヤンマ50/50。そして残りのサイドは四枚。
 一方で佐藤さんのバトル場には特殊悪、ダブル無色のついたブラッキーグレート100/100。ベンチにはエーフィグレート100/100、エーフィ90/90、ブラッキー90/90、特殊悪のついたドラピオン100/100でサイドは三枚と佐藤さんがやや優勢。
 そして一撃でブラッキーグレートを倒せないと上述のように月隠れで逃げられてしまう恐れがある。
「くっ、俺のターン!」
 今蜂谷の手札は八枚あるが、どれも扱いにくいカードが溜まっている。ブラッキーグレート100/100を一撃で沈めるためにはチラチーノの友達の輪で100ダメージを叩き出さないといけない。
 友達の輪は自分のベンチのポケモンの数×20ダメージのカードで、今のベンチにはポケモンが三匹。あと二匹をベンチに出さないと倒すことが出来ないが、生憎と手札にたねポケモンはない。
「俺は、サポートカードのチェレンを使う。このカードによって、俺は山札からカードを三枚ドローする。ドロォー!」
「おおっ!」
「へへ、手札からチラーミィ(60/60)を二匹ベンチに出す!」
 あの状況からたねポケモンを二匹も手札に加えるなんて、すさまじいドロー力だ。余裕綽々と構えていた佐藤さんにも若干焦りが見える。
「チラチーノで攻撃、友達の輪!」
 ベンチポケモンから放たれる優しげな白い光を打ち出してブラッキーグレートに攻撃する。ベンチが五匹で埋まったため、友達の輪の威力は20×5=100ダメージ、ブラッキーを一撃で撃破だ。
「よし、サイドを一枚引く。これでようやく追いついた!」
「追いつかれたら追い抜き返すだけ! 私はドラピオンをバトル場に出すわ。そして私のターン、まずはドラピオンにダブル無色エネルギーをつける。このダブル無色エネルギー一枚で無色エネルギー二枚分として扱うことが出来る。そしてサポート、オーキド博士の新理論を発動。手札を全て山札に戻してシャッフル、その後六枚カードを引く」
 オーキド博士の新理論を使うことによって佐藤さんの手札は二枚になったが、この効果で手札が六枚まで増える。新たに手札となったカードの左から三番目のカードを抜き取ると、それをバトルテーブルに叩きつけるように置いて発動する。
「行くよ、ポケモンキャッチャー!」
 グッズカードのポケモンキャッチャーは相手のベンチポケモン一匹を選択してそのポケモンをバトル場のポケモンと強制的に交代させるカード。佐藤さんはメガヤンマグレートを引きずり出した。
「ドラピオンでメガヤンマに攻撃。毒々の牙!」
 佐藤さんがコイントスのボタンを押すと同時にドラピオンがその大きな腕を伸ばして鋏でがっちりメガヤンマの体を押さえつけると、そのまま大きなキバでメガヤンマに喰らいつく。HPバーが50下がってメガヤンマの残りHPは20/110。そして佐藤さんのコイントスの結果はオモテだ。
「ドラピオンについている特殊悪エネルギーは悪ポケモンについているときにバトルポケモンに与えるワザの威力がプラス10される。そして毒々のキバはコイントスをしてオモテだったとき、相手を毒にする。この毒で受けるダメージは従来の10ダメージではなく20ダメージ!」
「まっ、また強力な毒か!」
 ポケモンチェックに入ると毒の判定が入る。苦しむメガヤンマの残り少ないHPバーは、毒々のためにさらに削られてしまい気絶してしまう。
「サイドを一枚引くわ」
「俺は新しくバトル場にチラチーノを出す。俺のターンだ! よし。ドーブルをベンチに出し、ベンチのチラーミィにダブル無色エネルギーをつけてそのチラーミィをチラチーノ(90/90)に進化させる」
 ドーブル70/70が新しくベンチに並んだことで再び蜂谷のベンチには五体のポケモンが揃った。だがその一方でベンチにはヤンヤンマばかり並び、なかなか進化することが出来ない。特に残りHPが10/50のヤンヤンマはほんのちょっとしたダメージで気絶してしまうために出来るだけ早くに進化させたいのだが……。
「くっ、とりあえず今は目の前の敵を潰ーす! チラチーノで攻撃、友達の輪!」
 負けじと蜂谷も押し返す。100ダメージの大技が炸裂し、ドラピオン0/100の体躯が吹き飛ばされて一撃でKO。先ほどからどちらかが倒されれば一方が倒しかえすという激しい攻防が続いて目が離せない。
「よし、サイドを一枚引くぜ」
 新たにバトル場に現れたのは佐藤さんの三匹目のグレートポケモンであるエーフィ100/100。今度はどんな攻撃をしてくるか。
「私のターン。エーフィグレートにレインボーエネルギーをつける。このエネルギーをつけたとき、つけたポケモンにダメカンを乗せる」
「自分でダメカンを……」
 だが、その代わりこのレインボーエネルギーは全てのタイプのエネルギー一個ぶんとして働くことが出来る強力なカードだ。
「ズバット(50/50)をベンチに出して、エーフィグレードで攻撃。エーフィグレートのポケボディー、進化の記憶は、ワザに必要なエネルギーがついているなら自分の場のイーブイから進化するポケモンのワザを全て使うことが出来る!」
「な、何っ!?」
「何だと!」
「その効果でベンチのエーフィのワザをエーフィグレートのワザとして使うよ、太陽の暗示!」
 エーフィグレート90/100の額が強く輝いて場を覆う。思わず右腕で両目を覆うように隠してしまった。
「このワザは、自分のポケモンのダメカンを四つまで取り除き、取り除いた分のダメカンを相手のポケモンに好きなように乗せることが出来る。私はエーフィグレートのダメカン一つをベンチの残りHPが10のヤンヤンマに乗せる!」
 ようやく強烈な光が収まると、エーフィグレートのHPは100/100に全快してベンチの蜂谷の死にかけだったヤンヤンマのHPは0/50となりそのまま倒れてしまう。
 なるほど、このワザを成功させるためにわざとレインボーエネルギーでダメカンを乗せたのか。
「さあ、サイドを一枚引いてターンエンド。これで残りのサイドは一枚よ」
 佐藤さんが早くも勝利に王手に手を掛けてしまったことになる。ここから逆転は至難だ。
「まだまだ! 俺のターンだ。やっと来た! まずはベンチのヤンヤンマを進化させる。現れろ、メガヤンマグレート!」
 ようやく蜂谷の手札にエースカードのメガヤンマ110/110が再臨する。しかし、手札にたねポケモン及びそれらを呼び寄せる可能性のあるカードはない。友達の輪でエーフィグレートを突破する手立ては、ない。
「蜂谷」
「翔、何も言うなよ。……目の前の敵が倒せないなら、こうだ! ポケモンキャッチャーを発動。ベンチのエーフィをバトル場に出させる!」
 蜂谷の場から突如捕縛網が佐藤さんのベンチのエーフィ90/90めがけて飛んでいく。すっぽり覆われて動けなくなったエーフィを強制的にバトル場に出させ、エーフィグレートをバトル場から退けた。
「さらにプラスパワーだ。このグッズカードを使った番に、自分のポケモンがバトルポケモンに与えるダメージはプラス10される! そしてチラチーノでバトルだ。友達の輪!」
 今の蜂谷のベンチは四匹、さらにプラスパワーの効果で与えるダメージは20×4+10=90ダメージ。ジャストでエーフィを気絶させることが出来た。
「これで太陽の暗示はもう使えないぜ? サイドを一枚引いてターンエンド」
 残りの蜂谷のサイドも一枚となった。佐藤さんが再びエーフィグレート100/100をバトル場に出す。蜂谷の引いたサイドは草エネルギー。相変わらずたねポケモンが引けない。もしチラチーノが場に残ったままで蜂谷の番が回った時、次のドローでたねポケモンを引いてそれをベンチに出して友達の輪で攻撃すればエーフィグレートを倒して逆転勝ちすることが出来る。
 何はともあれまずはこのターンを凌ぎ切らなければいけないのだが。
「私のターン! むう。バトル場のエーフィに超エネルギーをつけてグッズカード、クラッシュハンマーを発動。コイントスをしてオモテなら相手のポケモンのエネルギーカード一枚をトラッシュさせる! ……オモテ、バトル場のチラチーノのダブル無色エネルギーをトラッシュ!」
「うっ!?」
 チラチーノの上部に大きな赤色のハンマーが現れる。そしてそのハンマーが勢いよく振り下ろされてチラチーノを殴りつける。チラチーノが殴られる寸前にチラチーノの体から無色のシンボルマーク二つが飛び出してハンマーに粉砕される。そして同時にハンマーもふっ、と消滅したのだった。
「エーフィはポケボディー、進化の記憶の効果で全てのイーブイの進化系のワザを使うことが出来る。私はブラッキーのワザ、月影の牙を選択して攻撃!」
 ふいにエーフィの姿が消えたと思うと、チラチーノの影から現れて首筋をガブリと一噛み。ダメージは30だけなので60/90とまだまだチラチーノのHP自体には問題ないが、必ず何か効果があるはず。
「このワザを使ったポケモンは次の相手の番、ポケパワー、ポケボディーを持つ相手のポケモンからワザのダメージや効果を一切受け付けない!」
 蜂谷の場のポケモンでその条件に該当するのはドーブルとメガヤンマの二匹。チラチーノで攻撃すれば問題はない。だが、チラチーノはクラッシュハンマーで要のダブル無色エネルギーをトラッシュされてしまった。
 友達の輪を使うためにはエネルギーが二つ必要になる。ダブル無色エネルギーが今の蜂谷の手札には無く、草エネルギーのような基本エネルギーでちまちまつけていくと最低でも蜂谷のターンで数えて二ターンはかかってしまう。そうやってちまちま時間がかかっているうちにエーフィにやられてしまう。全体を睨んだ上手い攻撃だ。
「まだだ! 俺のターン!」
「おっ」
 思わず良いカードだと口が滑りそうになった。今引いたカードはまたまたポケモンキャッチャー。俺には見えたぜ、勝利の方程式。
「……そうか! まずはチラチーノに草エネルギーをつける。そして今つけた草エネルギーをトラッシュすることでチラチーノをベンチに逃がすことが出来る。俺は新たにバトル場にメガヤンマを呼び出す!」
「え? メガヤンマ? さっきも言ったけど月影の牙はポケボディーがあるポケモンからダメージは受けないのよ?」
「俺のグゥレートなポケモンを舐めちゃダメだぜ。手札からグッズカードを発動。ポケモンキャッチャー! 佐藤さんのズバットをバトル場に出す!」
「しまった!」
 いいぞいいぞ! ズバットのHPは僅か50/50。そして今の佐藤さんの手札は六枚、一方の蜂谷の手札も六枚。条件は全て整った!
「メガヤンマグレートのポケボディー、インサイトは互いの手札の枚数が同じ時、このポケモンに必要なワザエネルギーは0となる。トドメの一撃、ソニックブーム!」
 このワザの威力は70。深く息を吸い込んだメガヤンマは、空気の刃を三つ四つ射出する。その刃を慌てて一つ、二つとズバットがかわしていくが最後の刃がズバットの体を襲う。弾かれて、重力のままに落ちていくズバットのHPバーは0/50。蜂谷が最後のサイドを引くことで長い戦いもこれでゲームセットだ。
「っしゃ勝ったあああ!」
「うーん、やられたね」
 だがバトルベルトの風のエフェクトのせいで地面に敷かれていたブルーシートはことごとく吹き飛ばされ、バラバラに散らかってしまった。
「……さあお片付けしようか」
 にっこりほほ笑む佐藤さん。
「えっ」
「えっ」
「二人揃えて言っても、きちんと後片付けはしてもらうからね」
「ええええ、俺観客だし関係ないんじゃあ」
「そういう問題じゃないの。ほら、窓側の方よろしく!」
 蜂谷は、まあ自分に責任があるのは当然のことだと言わんばかりに既に階段側のブルーシートを敷き直し始めている。佐藤さんも壁際にいって自分のすべきことを行っている。
 なんだこれ。不満だ、不満だ!
「ちくしょー、ほんとに蜂谷と一緒に来るんじゃなかった!」



翔「今日のキーカードはメガヤンマグレート。
  なんといっても魅力はインサイトだ。
  エネルギーなしでワザを打てる、まさに理想のポケボディー!」

メガヤンマ HP110 グレート 草 (L3)
ポケボディー インサイト
 自分の手札と相手の手札が同じ枚数なら、このポケモンのワザに必要なエネルギーは、すべてなくなる。
草無 ちょくげきだん
 相手のポケモン1匹に、40ダメージ。[ベンチへのダメージは弱点・抵抗力の計算をしない。]
草草無 ソニックブーム  70
 このワザのダメージは弱点・抵抗力の計算をしない。
弱点 雷×2 抵抗力 闘-20 にげる 0

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