65話 ライバル!

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「おれのターン!」
 今のおれの場は闘エネルギーと達人の帯をつけたカブトプス50/150。ベンチにはプテラ80/80とヤジロン50/50とこうらの化石50/50に水エネルギー一つのオムナイト80/80。
 それに対して如月のバトル場はユクシー70/70。ベンチにいるポケモンは闘エネルギー一つ乗っているグライガー60/60と闘二つのルカリオ90/90、そしてガーディ70/70だ。スタジアムは今ハードマウンテンが発動している。
「手札の闘エネルギーをこうらの化石につけることでロックリアクションが発動される。こうらの化石をカブト(80/80)に進化!」
 ロックリアクションは自分の番に手札から闘エネルギーを出してこのこうらの化石につけたとき、自分のデッキからこのポケモンから進化する進化カードを一枚選んでこのカードの上に乗せて進化させる便利なポケボディー。手札にカブトが無くても使える分、デッキ圧縮にもなって良いアドバンテージとなる。
「さらにヤジロン、オムナイトもネンドールとオムスターに進化させる」
 これで俺のベンチのポケモンが徐々に戦闘体勢になりつつある。オムスター120/120はカブトプスに次ぐこのデッキのキーカードだ。そしてネンドール80/80は強力なドローソース!
「ネンドールのポケパワー、コスモパワーを発動。手札を二枚戻してデッキから六枚になるように、つまり六枚ドロー!」
 デッキポケットに表記されている残りのデッキ枚数を確認すると残り二十八枚。デッキ切れには気をつけたいものだ。
「プテラのポケパワーの発掘を発動。デッキから化石カードを一枚手札に加える。おれが加えるのはひみつのコハクだ。更に化石発掘員を使用してトラッシュのひみつのコハクを手札に加える」
 化石発掘員はデッキかトラッシュにある化石と名のつくトレーナーか、化石から進化するポケモンを一枚選んで手札に加えるサポーターだ。化石をトラッシュしながら攻めるカブトプスとは相性がいい。
「そして手札のひみつのコハクをトラッシュしてカブトプスで攻撃。原始のカマ!」
 カブトプスの鋭い両腕のカマがユクシーを切り裂く。このワザの元の威力は20だが、手札の化石カードをトラッシュすることで威力を50上げる。更に達人の帯の効果を含めて20+50+20の合計90ダメージ。HPが70しかないユクシーは即気絶だ。
「やるわね。わたしはルカリオをバトル場に出すわ」
「サイドを一枚引いてターンエンドだ」
「わたしのターン! ルカリオに闘エネルギーをつけて、ベンチのグライガーをグライオン(80/80)に進化。そして新たにグライガー(60/60)をベンチに出すわよっ」
 ここまで激しい手札消費をしたのにまだ七枚も残っている。手札にはまだグライオンLV.Xがいるのは分かっているが、いったい何が来るか。
「へへーん。ルカリオもレベルアップさせるわ! そして見極めを発動!」
 見極めはルカリオLV.X110/110がレベルアップした時に使えるポケパワー。このカードを手札から出してレベルアップさせたときのみ一度使えて次の相手の番に相手のワザのダメージや効果を受け付けなくするものだ。さっきの逃げたグライオンLV.Xといい小癪な真似をする。
「ルカリオLV.Xでインファイト!」
 ルカリオLV.Xは軽い身のこなしでカブトプスに近づき、手や足、体全体を使ってカブトプスに激しい物理攻撃の連打を見舞いする。80ダメージを受けてカブトプスはそのまま気絶する。おれの次のポケモンは……オムスターだな。
「インファイトを使った次のターン、このルカリオLV.Xが受けるダメージは+30されるけどもまあどうせダメージ受けないしいいわ。達人の帯の効果でサイドを二枚引いてターンエンドよ」
「おれのターン! ダメージを受けないのはそのルカリオLV.Xだけ。だったらワープポイントを使えばそれでいい!」
 開いたサイドの差は力で押し縮める! ワープポイントは互いのバトルポケモンをそれぞれのベンチポケモンと入れ替えるもの。これでルカリオLV.Xの見極めの効果は無視してターンを行える。
 おれはオムスターとカブトを入れ替え、如月はルカリオLV.Xとグライオンを入れ替えてきた。
 なるほど分かりやすい。カブトプスでいくら攻撃してもこのターンで出せる火力は(達人の帯を考慮しなければ)70であってグライオンの80/80を削ることはできない。そして次のターンにバーニングポイズンで逃げるということか。
「おれはバクのトレーニングを発動。デッキからカードを二枚ドローする。そしてカブトに闘エネルギーをつけてカブトプス(130/130)に進化させる。プテラの発掘を使ってデッキからかいの化石を手札に加える!」
 御膳立ては整った。
「手札のかいの化石をトラッシュしてカブトプスで攻撃。原始のカマ!」
「残念だけど、いくら手札の化石カードをトラッシュして原始のカマの威力を50上げたところで70ダメージ。グライオンのHPはギリギリ10残るわよ」
「バクのトレーニングがバトル場の隣にあるとき、このターン自分のポケモンが相手のバトルポケモンに与えるダメージは+10される」
「嘘っ!?」
 カブトプスの鋭い一撃がグライオンを仕留める。これでグライオンLV.Xのループは一旦止まった。如月は再びルカリオLV.Xをバトル場に繰り出す。
「サイドを一枚引いてターンエンドだ」
 しかしこれでもサイド差は一枚不利。こうなれば相手の戦えるポケモンを封じ込めてひたすら攻めきるしかないか……。
 ん? 如月が拳を作ってうつむいている。どうやら体も少し震えているようだ。
「絶対こんなやつに負けたくない……。わたしなんて頑張って頑張って可愛く見てもらえるように必死になってるのに、あんたより絶対私の方が可愛いのに! たまたま大会で戦ってその後偶然遭ったからってだけで大した苦労もしないで、それなのにわたしよりも翔様の近くにいるなんて許せない!」
「……」
 急に飛び出た本音に気圧されてしまう。しかしなんでおれと翔が再会したことまで知ってんだ。
「わたしはあんたのような男みたいなやつには絶対負けたくない! あんたなんて翔様とは不釣り合いよ!」
 流石にこの言葉には衝撃を、というかショックのようなものを受けた。
 確かに言う通りかもしれない。自分なんかじゃ確かに不釣り合いかもしれない……。
「行くわよ! わたしのターン! 手札からミズキの検索を発動。このカードの効果によって手札を一枚デッキに戻し、デッキから好きなポケモンを選択して手札に加えることができるわ。わたしはウインディを手札に加えてベンチのガーディに進化させる! そしてウインディに炎エネルギーをつけるわ」
 ウインディ100/100にはフレアコンディションというポケボディーがある。このポケボディーは炎エネルギーがこのウインディについているなら、ウインディの弱点は無くなるというものだ。
「更にベンチにロコンを出すわよ」
 ベンチにロコン60/60が現れると、一気に如月の場の炎ポケモンの比率が上がる。グライオンLV.Xによるヒットアンドアウェイが通じないとわかったからの戦法転換か。
「40、80。ちょっと足りないわね。ルカリオLV.Xでインファイト!」
 如月のさっきまでの可愛らしげな様子から一変して、猛る獣のような雰囲気を受けれる。つまり、勝ちたいのだ。
 この大会に優勝したいのではなく、この試合に。
 ルカリオLV.Xは命じられた通り一瞬で間合いを詰めて拳や蹴を含めた多連段攻撃をカブトプスにぶつける。80ダメージの威力を受けたカブトプスのHPは50/130。次のインファイトは喰らうとおしまいだ。
「ターンエンドよ」
「……」
 気持ちは揺らいでいた。確かに翔は好きだ。だからこそ幸せになって欲しい。おれが勝ったところで本当に翔は喜ぶのだろうか。
「なーに弱気になってんのよ! それでもあんたはわたしのライバルなの?」
「ライバル……」
「ライバルよライバル。あんたとわたしはライバルよ。もしかしてわたしがさっき言ったこと気にしてるの?」
「……うん」
 そういえば如月は年下だったなと今さら関係ないことを思い出す。
「これからがあるじゃない! あんたがそのことで気にかけるならこれからなんとかしていけばいいの。可愛くなりたいとかそんなこと思えれば今はそれでいいじゃない。もちろん、わたしに勝ってからだけどね」
 背丈も差があるはずなのに、年上に説教された気になった。が、嫌だとはまったく思わなかった。むしろこんな自分にここまで声をかけてくれただけでもうれしい。そう、これからだよね。
『薫、もし父さんが何かあったら俺のでっかい化石を掘る夢を頼むな』
 小さい頃から父さんがよく言っていたことだった。そんな憧れの父の背を見て成長していた自分は小学校のころから今のような感じでオトコオンナと言われることもあったが別段気にはしていなかった。父の夢を追おうとするのに一生懸命だったからそんなことは別段どうでもよかった。
 しかし、そんな父とは対照的に母はこう言った。
『薫は自分がやりたいと思ったことをやりなさい。お父さんの言う事は……、まあそんなに心に受けないで自分で決めなさい?』
 今分かった。自分がやりたいことが。
「お、お……」
「お?」
「わ、あ、あたしのターン!」
 不安ながらも如月を見ると、そこには僅かながらも笑顔のようなものが見受けられた。
「あ、あたしはオムスターに水エネルギーをつけて、プテラの発掘でデッキからこうらの化石を加える……わ」
 インファイトを使ったルカリオLV.Xは、その反動としてこのターンに受けるダメージが+30されるデメリットを抱えている。そこをうまく突きたいのだが、これもまたさっきのグライオンと同じ。
「いくらインファイトで弱ってるからって、原始のカマしても10余るわよ? 流石にさっきと同じ展開にそうそう上手く行くわけないわよね」
「サポーター、化石発掘員を発動。このカードの効果によってデッキまたはトラッシュから化石カードまたは化石カードから進化するポケモンを手札に加えれる。あ……あたしが加えるのはトラッシュにあるカブトプス!」
 残念ながら如月の思惑通りになるもバクのトレーニングは手札にない。そして達人の帯も。自分のデッキの中で打点を強化するこの二枚が手元にない。だったらとりあえずダメージを与えることが先決。
「手札のひみつのコハクをトラッシュして原始のカマ!」
 元の威力20にひみつのコハクをトラッシュして+50。更にインファイントの効果でダメージは+30加わり100ダメージ。インファイトの反動で片膝を立てているルカリオLV.Xはカブトプスの攻撃を受けて倒れこむ。うんしょと体全体を使って立ち上がるもののHPは10/110。
 ここまでいけばダメージを少しでも与えれたなら倒せる! まだ如月のベンチは戦える準備が不完全だったのでこのターンのうちに仕留めておきたかったがそこまではいかなかったようだ。
「さあ、わたしのターン! 手札のサポーター、ライバルを使うわ。デッキの上から五枚をめくって相手に見せ、相手はその中から三枚選ぶ。その選んだカードがわたしの手札に加えられる!」
「ライバル……」
「良い響きよね? さあ、選んで頂戴」
 相手のバトルテーブルの情報がこちらのバトルテーブルに転送される。タッチパネル形式でモニタを確認する。如月のデッキは上からハードマウンテン、キュウコン、炎エネルギー、闘エネルギー、バトルサーチャー。
 キュウコンは相手のアドバンテージになるから余り手札に加えさせたくない。そしてエネルギーも同じく。だがどちらかを選ばざるを得ない。
「じゃあ闘エネルギー、ハードマウンテン、バトルサーチャーを」
「それじゃあ早速グッズカードのバトルサーチャーを発動するわ。トラッシュのサポーターを手札に一枚加える。わたしはミズキの検索を手札に戻すわ。早速もらったばかりの闘エネルギーをウインディにつけて、ベンチのロコンをキュウコンに進化させるね」
 手札にもキュウコンがいたのか! それじゃあさっきわざわざキュウコンを避けて三枚選んだ意味はない。むしろエネルギーを与えてしまっただけだったようだ。
 キュウコン80/80は色化けという変わったポケパワーがある。相手のポケモン一匹と同じタイプになるというものだが、それがどう絡んでくるか。
「ルカリオLV.Xのインファイト!」
 ルカリオLV.Xの他のワザでは威力が最大40まで。こちらもインファイトでしか倒せない歯がゆい状況だ。なぜ歯がゆいかというと、ルカリオLV.Xの他のワザはエネルギーが二つ以下。どうせ次のターンにルカリオLV.Xは気絶させられてしまうだろうから、その前にハードマウンテンの効果で今着いているエネルギーをベンチのウインディなどにつけかえた方が間違いなく勝手がいい。
 しかしエネルギー三つを要するインファイトを使わなければカブトプスを倒すことができないというわけだ。
 二撃目のインファイトを食らったカブトプスはもう立ち上がることができない。ベンチには次のカブトプスがまだいないのでここはオムスターで勝負だ。
「サイドを一枚引いてターンエンド。さあこっからが勝負よ!」



石川「今回のキーカードはルカリオLV.X。
   見極めはレベルアップしたターンしか使えないけど、
   相手のワザのダメージでなく効果もかわす強力なポケパワー!」

ルカリオLV.X HP110 闘 (DP2)
ポケパワー  みきわめ
 自分の番に、このカードを手札から出してポケモンをレベルアップさせたとき、1回使える。次の相手の番、このポケモンはワザによるダメージや効果を受けない。(このポケモンがバトル場を離れたなら、この効果は無くなる。)
闘闘無  インファイト 80
 次の相手の番、自分が受けるワザによるダメージは「+30」される。
─このカードは、バトル場のルカリオに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 超×2 抵抗力 - にげる 1

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