62話 初歩的ミス

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:13分
 射出された弾丸は……二つ!
 弾丸がライチュウLV.Xに衝突するや否や、鼓膜が破れそうな轟音が響き渡る。
「くっ、あぶねえ。首の皮一枚繋がったや……」
 もしライチュウLV.XがレベルアップしていなかったらHPは0となっていた。また、スタジアムのナギサシティジムが無ければそれでもライチュウLV.Xは気絶。まさに間一髪。
 ドサイドンのハードクラッシュによってトラッシュされた八雲のカードはアンノーンQ、闘エネルギー二枚、ハードマウンテン、ミステリアス・パール。
 しかしいずれにせよもう一度アレを食らってしまえばライチュウLV.Xの息の根は止まるもかもしれぬ。
 今の俺のバトル場は雷エネルギー三つのライチュウLV.X10/110、ベンチにはネンドール80/80、ピカチュウ10/60、ピカチュウ60/60。スタジアムは前述したとおりナギサシティジム。
 向かいにいる八雲のバトル場には闘エネルギーが一枚ついたドサイドンLV.X170/170。しかしベンチにはユクシー70/70のみ。
「俺のターンだ。ベンチにいるピカチュウのポケパワーを発動、エレリサイクル。ピカチュウがピチューから進化している場合自分の番に一回使え、トラッシュの雷エネルギーを一枚手札に加える。もう一匹いるピカチュウもエレリサイクルを使うぜ」
 トラッシュを多用する俺のデッキにとって、弾切れは最大の弱点。こうして補給し続けていないと攻めれなくなる。
「ピカチュウ(60/60)に雷エネルギーをつけ、ライチュウLV.Xの雷エネルギーを三つトラッシュして攻撃だ。炸裂玉!」
 再び低速の玉がドサイドンLV.Xに襲いかかる。激しい音と光を纏った炸裂玉は、ドサイドンLV.Xに直撃するとより大きな音を放つ。
「よし、なんとか100ダメージ削ってやったぜ」
 ドサイドンのHPバーは大きく削られて70/170まで落ち込む。
 しかし次のターン、高確率でライチュウLV.Xは倒されてしまう。ライチュウLV.Xの代わりを勤めれるアタッカーがいないので大きなビハインドになるだろう。
「私のターンです。手札からヒポポタス(70/70)をベンチに出してそのヒポポタスにエネルギーをつけます。そしてドサイドンLV.Xのハードクラッシュ攻撃!」
 ドサイドンLV.Xが再び両腕を真っすぐ伸ばす。八雲がデッキの上からトラッシュする五枚のカードのうち、一枚でも闘エネルギーがあればライチュウLV.Xはおじゃんとなる。
「っ、南無三!」
 当たるなと願ったのはいいが、ドサイドンからは弾丸が一つ発射される。
 音に耐えるため両手で耳を塞ぐ。しかし手で妨げる音なんてたかが知れていて、それでも耳をつんづくような音波が発生する。
 これでライチュウLV.XのHPは尽きた。
「俺はピカチュウ(10/60)をバトル場に出すぜ」
「私はサイドを一枚引いてターンエンドです」
 これでお互いに残りのサイドは四枚ずつ。出来ればサイドうんぬんの前に、八雲の場のポケモンを全て倒しきってしまいたいが……。
「行くぜ、俺はピカチュウのポケパワー、エレリサイクルを発動。トラッシュにある雷エネルギーを一枚手札に加える。もう一匹のピカチュウも同じようにポケパワーを使って合計二枚の雷エネルギーを回収する! そしてバトル場のピカチュウをライチュウ(40/90)に進化させ、ベンチのピカチュウに雷エネルギーをつける!」
「ライチュウにエネルギーは乗ってないのに何を……」
 へへっ、と笑って鼻の下を人差し指でなぞる。
「ライチュウでスラッシュ攻撃!」
 ライチュウが尻尾を鞭のように器用に扱い、尻尾で鋭い斬撃を起こす。ドサイドンLV.XのHPバーは40/170まで減り、ようやくゴールが見えてきた。
「スラッシュはエネルギーなしで攻撃出来て、しかも30ダメージも与えれる強力なワザだぜ。でも次のターンにこのライチュウはスラッシュを使えないけどな」
「くっ、私の番です。……」
 八雲はさっきのドサイドンLV.Xの攻撃で闘エネルギー以外にサイホーンが二枚とドサイドン、不思議なアメの四枚がトラッシュされている。相手の残りデッキも25枚。こっちがデッキ破壊のスキルを持っていればよかったなと思った。
「手札の闘エネルギーをヒポポタスにつけて、ヒポポタスをカバルドンに進化させます」
 ベンチにもう一度カバルドン110/110が現れる。折角頑張ってここまで八雲の陣営を削ってきたのに、またまたここでタフなポケモンが現れたか。
「ドサイドンLV.Xでハードクラッシュ!」
「またかよチキショー!」
 ドサイドンLV.Xの両腕から再び弾丸が……。
「あれ?」
 出なかった。バトルベルトのモニターで何をトラッシュされたか確認する。念のために左手で左耳は塞いでいたが、無用だったようだ。トラッシュされたカードはサイドン、レベルMAX、ワープポイント、ドサイドン、シロナの想い。安心して左耳のガードをはずす。
「なんかしっくり来ないけど俺のターン! これ以上ハードクラッシュを打たれると心臓と鼓膜がもたないや。そろそろドサイドンLV.Xには帰ってもらうぜ」
「……」
 あまりにも八雲が冷静すぎて、逆にこっちが冷めてしまいそうになる。いやいや、俺は俺のペースで自分なりに行けばいいんだ。
「ベンチのピカチュウに雷エネルギーをつけ、ポケパワーのエレリサイクルを発動。トラッシュの雷エネルギーを手札に加える。サポーター、ミズキの検索を使って手札一枚をデッキに戻し、デッキからライチュウを手札に加えてベンチのピカチュウに進化!」
 ベンチにもライチュウ90/90が並ぶ。しかしこれでピカチュウのポケパワーは使えなくなってしまった。でもこれだけ手札に雷エネルギーあれば大丈夫だろう。たぶん。
「バトル場のライチュウ(40/90)とベンチのライチュウ(90/90)を入れ替える! ライチュウの逃げるエネルギーは0だから安心して逃げれるぜ。そんでバトル場のライチュウにポケモンの道具、達人の帯を使うぜ」
 ライチュウ90/90の頭に鉢巻きのように帯がつけられる。ぽっこりお腹だから腰には巻けなかったようです。
「達人の帯をつけたポケモンはHPと、与えるワザの威力が20アップ。その代わりつけたポケモンが気絶したとき相手は一枚多くサイドを引くことができる」
 これでライチュウのHPが110/110へ。
 達人の帯は確かに強い。しかしサイドを一枚多く引かせるディスアドバンテージがあるので、この一匹で二匹くらい倒さないとダメなのがネックだ。
「ネンドールのポケパワー、コスモパワーを発動。手札を一枚デッキに戻して六枚になるよう、つまり三枚ドロー。ライチュウでスラッシュ攻撃だ」
 威力20増しの、50ダメージ攻撃がドサイドンLV.Xを襲う。ようやっとドサイドンLV.XのHPが0となったが、一匹倒すのにここまで手間がかかるとはなかなか。
「私はカバルドンをベンチからバトル場に出します」
「俺はサイドを一枚引いてターンエンドだ」
「行きます、私のターン。サポーターのシロナの想いを発動。前のターンに自分のポケモンが気絶された場合、手札をデッキに全て戻してシャッフルし、八枚ドロー」
 八枚ドロー!? たぶん俺が知る限り一番カードを引くサポーターだ。
「闘エネルギーをカバルドンにつけ、カバルドンをレベルアップさせます。そしてカバルドンLV.Xのポケパワーを発動。サンドリセット!」
 轟、と音が鳴り始めて砂嵐が巻き起こる。どうしてこいつのポケモンは耳に優しくないのばっかなんだ、カバルドンLV.X130/130を中心に起こる砂嵐のせいで、フィールドも八雲も見づらいったらありゃしない。
 しかしこの砂嵐が3Dで本当によかった。あまりにも砂嵐が激しすぎて、本物であったら目が一切開けられない状況だっただろう。
「サンドリセットは対戦中に一回使え、互いの場にあるポケモン、サポーター以外のカードを全てデッキに戻してシャッフルする。先ほどライチュウにつけた達人の帯をデッキに戻してもらいます!」
 砂嵐の強風によってライチュウが頭に巻いていた達人の帯が吹き飛ばされて空高く消え去る。そして砂嵐がようやく止んだ。大きな音に慣れ過ぎて、八雲の声が先ほどよりはっきり聞こえない。後で風見に音をどうにかしろとケチをつけないとな。
「カバルドンLV.Xで砂を飲み込む攻撃。その効果で、ダメージを与える前にトラッシュの闘エネルギーを一枚このポケモンにつける。砂を飲み込む攻撃は20に加え、自分についているエネルギーの数かける10ダメージを与える。今、このポケモンに闘エネルギーは四つついているので60ダメージ!」
 再び熾烈な攻撃が始まる。帯がなくなってHPが減ったところに、火力の高いワザが飛んでくる。あっという間にライチュウのHPは30/90。
「くそっ、俺のターンだ!」
 引いたカードはプレミアボール。まだまだ運は俺に味方してる。
「よし、グッズのプレミアボールを発動だ。デッキかトラッシュのLV.Xポケモンを手札に加える。俺はトラッシュからライチュウLV.Xを手札に加え、バトル場のライチュウにレベルアップさせる!」
 しかしそれでもHPは50/110。次の攻撃はとてもじゃないが耐えられない。
「手札の雷エネルギーを二枚トラッシュして攻撃、ボルテージシュート! ベンチのユクシーに80ダメージだ!」
 どこにでも届く紫電が再び八雲の場を荒らす。HPが70/70しかないユクシーもこれで一撃、気絶だ。
「俺はサイドを引いてライチュウLV.Xのポケボディーの連鎖雷の効果でもう一度攻撃する。効果は言わなくても分かるな?」
「しかしそれでもカバルドンLV.Xは倒せませんよ。ボルデージシュートはユクシーでなくカバルドンLV.Xにして、そこから追撃でカバルドンLV.Xを倒すべきでしたね。初歩的なミスです」
「……。ライチュウLV.Xについている雷エネルギーを三つトラッシュして炸裂玉!」
 やはり三つトラッシュはかなりのボードアドバンテージを失うが、100ダメージはそれだけの価値がある。これでカバルドンLV.XのHPは30/130だ。
「私のターンの前のポケモンチェックでカバルドンLV.Xのポケボディー、サンドカバーが発動します。このポケモンがバトル場にいる限り、ポケモンチェックの度に相手のポケモンLV.X全員にダメージカウンターを一つずつ乗せる。よってライチュウLV.XのHPを削って行きます」
 砂がライチュウLV.Xを足元から襲う。これで40/110。しかし今さら10ダメージ、たかが知れている。
「それでは私のターン、カバルドンLV.Xに闘エネルギーをつけます。そしてカバルドンLV.Xの闘エネルギーを二つトラッシュして、ダブルシュート!」
 カバルドンLV.Xの足元の砂から、直方体の砂の塊が現れてそれが俺のベンチへ飛んできた。
「バトル場のポケモンは攻撃しないのか!」
「ダブルシュートは相手のベンチポケモン二匹にそれぞれ40ダメージ与えるワザです」
 ベンチのネンドールとライチュウに砂の塊がぶつかり鈍い音を放つ。それぞれHPは40/80と0/90。
「サイドを一枚引いてターンエンド。そしてカバルドンLV.Xのサンドカバーで再びライチュウLV.Xに10ダメージです」
「俺のターン! さっき、俺が初歩的ミスをしたって言ったよな。でもそれは俺じゃなくてお前の方だぜ! ライチュウLV.Xで攻撃、スラッシュ!」
「しまっ……」
「エネルギーを全てトラッシュしたからもうワザが使えないと思ったその根拠のない余裕が命取りだぜ!」
 最後のライチュウLV.Xの一撃がカバルドンLV.Xにヒットする。ドスンと重い音を立てて崩れ落ちたカバルドンLV.XのHPは0/130、サイドを一枚引くがもう八雲には戦えるポケモンがいないのでここで勝敗が決まった。
「よっし! ありがとうございました」
「ありがとうございました」
 遠くから見ていた翔達に向かって、拳を突き出して親指を立ててニッと笑う。蜂谷も同じように返してくれ、翔や風見はただ頷いてくれた。
 勝利を分かち合える仲間がいるのはなかなかいいもんだな!



恭介「今日のキーカードはドサイドンLV.X!
   出来ればもう戦いたくないな……。
   MAX250を出せるハードクラッシュが脅威だぜ」

ドサイドンLV.X HP170 闘 (DP5)
─ ハードクラッシュ 50×
 自分の山札のカードを上から5枚トラッシュし、その中のエネルギーの枚数×50ダメージ。
闘闘無  なげあげる 60
 自分のトラッシュの闘エネルギーをすべて、相手プレイヤーに見せてから、山札にもどす。その後、山札を切る。
─このカードは、バトル場のドサイドンに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 水×2 抵抗力 雷-20 にげる 4

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想