楽園追放:E→A

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毎日ハロウィン企画:12日目のお話
 それは、この世界が出来たばかりの頃まで遡る。ポケモンとニンゲンの区別もなく、生きとし生けるもの全てが平和に暮らしていた。もちろんギラティナもそのなかにいて、同じ時期に産まれたディアルガ、パルキア、ユクシー、エムリット、アグノムと毎日無邪気に遊んでいるのだった。痛みも苦しみも無い世界。幸せと慈愛に満ちた楽園で、今でも夢に出るような日々を過ごすのだった。

ある日のこと。ギラティナが弱りかけていたポケモンを見て、大丈夫だよ、怖くないよと翼で包んでやると、すっと息絶えてしまいました。その表情がとても穏やかだったことに衝撃を受けたギラティナは、翼をパタパタと動かして、こんな歪な翼でも、できることがあるのだと知りました。ギラティナはこの力をみんなのために役立てようと考えつきました。弱っているもの、悲しんでいるもの全てを包み込んで、救おうとしたのです。

影にひそめば、翼はどこまでも広がっていきます。小さきものも大いなるものも、生まれたばかりのものも終わりゆくものも、分け隔てなく愛を与えよう。ギラティナは、そうして命をどんどん奪っていくのでした。

これに怒ったアルセウスは、赤い鎖を創り出してギラティナを縛り、暗い暗い、底なしの無限空間に閉じ込めたのでした。ギラティナが強い力を持っていることを知っていたので、簡単には出られないよう、ディアルガとパルキアに一本ずつ、ユクシー、エムリット、アグノムに合わせて一本の鎖を渡しました。ギラティナは、どうしてアルセウスが怒っているのかわかりませんでした。かつて自分がそうしてもらったように、世界を愛していただけなのに。みんなを助けてあげたかったのに。闇深く堕ちていく中、アルセウスが怒りを向けたことがただただ悲しくて、ポロポロと涙を流すのでした。

そのうち地面なのか、壁なのかもわからないような場所へ体が叩き付けられるようにして、落下が止まりました。音もなく、光もなく、身動きも自由に取れない。ギラティナはせめてもあたたかさだけはと、翼で自身を包むのでした。

一方、ギラティナのいなくなった世界では、問題がおきていました。悲しみと苦しみが解放されなくなり、行き場を失った想いが溢れてしまったのです。この時、全ての病が生まれてしまったと言われています。また、死後の魂も溢れかえっていました。救いがないのでどこにも行けず、そこかしこに溜まるようになってしまったのです。その時、物に宿ったものたちが、後にゴーストポケモンになったと言われています。

アルセウスは事の重大さに気づき、ギラティナを閉じ込めた場所の一部を世界と繋げ、魂たちをここで管理することを条件に鎖から解き放ちました。ギラティナは、アルセウスが自分にしかできない重大な使命を与えてくれたのだと受け止めて、またポロポロと泣いてしまうのでした。

それから気の遠くなるような年月をかけて、ギラティナは立派に務めを果たすようになるのですが、それを語るには、余りにも夜は短すぎる……。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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