あんだーものがたり
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読了時間目安：11分
ある日の事。ゴビットが山で新しい技の練習をしていると、積もった枯草に足を滑らせて、地面に開いた穴に落っこちてしまいました。
ひゅーっと落ちていくと、なにか柔らかいものに当たりました。触ってみると、黄色い花が落ちてきたところの周辺に、カーペットのように敷かれていました。これで命拾いをしたようです。
見上げると空は丸く遠くなっていました。流石のゴビットも、登り切って地上に出るのは難しそう。困ったなぁと考え込んでいると、声をかけられました。振り返ると、そこにはサボネアが笑顔で腕を振っていました。
「きみもここに落ちて来たんだね。ぼく？ぼくもむかーしに落ちたのさ。 お日様の光はここにしか届かないから、ぼくはここで咲いているしか出来ないんだ。もちろん地上へ帰ろうと思ったさ。でもこの地下には怖い怖いポケモン達が住み着いていて、ぼくの邪魔をするんだ。……きみ、強そうだね。お願い、怖いポケモン達を倒してよ。道案内はぼくがするからさ！きみだって地上に帰りたいだろう？」
ゴビットはポケモンと人を守ることを目的に造られたポケモンなので、ひ弱そうなサボネアを守り、地下世界を冒険する決意をしました。怖いポケモン達だって、バトルすればわかってくれると信じているようです。
ゴビットが無言で頷くと、サボネアは意気揚々と前を歩き始めました。ゴビットはただそれについていきます。
見たことのない花や星の欠片のようなものがキラキラ光り、地下世界はちっとも暗くありません。てっきり深い闇の中だと思っていたゴビットは、ちょっと驚いているようです。
「あっ！あいつだよ！」
サボネアが示す方にはケンタロスがいました。けれど、おだやかに草を食んでいるだけで、悪いポケモンには見えません。
「えっ？悪いようには見えないって？そ、そんなことないよ！あいつはいっつも……」
言い終わらないうちにサボネアに気付いたケンタロスは、雄たけびを上げて猛スピードで突進してきました。
「ほらいった通りでしょ？ねぇ頼むよ、あいつをやっつけて！」
その場からサボネアを遠ざけて、ゴビットはケンタロスに立ち向かいます。大丈夫、ノーマルタイプのとっしんなんてゴビットには効かないのですから。ゴビットの体をすり抜けたケンタロスは、そのまま大きな岩にぶつかって気絶してしまいました。
「やったぁ！やっぱり君を選んで正解だったよ！さぁさぁ次のところへ行こう。こいつが起き上がらないうちにさ♪」
ウキウキなサボネアになにか違和感を覚えながら、ゴビットは先に進むのでした。
サクサク道を進んでいくと、またサボネアがあれ、あいつらだよと指し示します。見れば、崖の上にデルビルとヘルガーが、険しい表情で立っていました。こちらを監視しているようです。確かに、顔だけ見れば悪いやつにみえなくもありません。
「あの兄弟、いっつもぼくをいじめるんだ。兄のデルビルが相手の動きを弟のヘルガーに伝えて、ヘルガーが攻撃してくるんだ。気を付けて！」
そう言い残すと、サボネアはそそくさと隠れてしまいました。
どんな攻撃をしてくるのかわからないので、ゴビットはまるくなって相手の出方を伺います。そして、かみつこうと牙を光らせて飛びかかってきたヘルガーにタイミングを合わせて、メガトンパンチをおみまいします。
大きく後ろに吹っ飛んだヘルガーを心配して、デルビルが崖から降りてくるのを見計らって、今度はマグニチュードを放ちます。 結果は……マグニチュード4！そこそこの攻撃です。
攻撃を受けたデルビルとヘルガーは足元がふらふらになってしまい、その場に倒れ込んでしまいました。
「いえーい！その調子！どんどんいっくよーーー！！」
ますます上機嫌になったサボネアは、ゴビットの背中をズイズイ押して、歩を進めさせるのでした。
サボネアに押されて進んでいくと、うすぼんやり白い光が見えてきました。 その光は線のようにつながっていて、先を辿っていくと円形になっていました。 そうまるで……クモのいとのように。ゴビットが気が付いた時にはすでに遅く、上からアリアドスが音もなく降りてきました。
「こいつはねばねばする糸を出して、獲物を動けなくするようなヤツなんだ！頑張ってやっつけちゃってよ！君なら余裕だって～」
糸の範囲の外からサボネアの調子のいい声だけがします。
動けば動くほど絡まる糸にゴビットは大苦戦。そうしている間にも、アリアドスの牙が襲い掛かろうとじわじわ迫ってきます。このままでは食べられこそはしないものの、ひどい目にあうに決まっています。
やっとやっと繰り出したほのおのパンチは、距離が足りずアリアドスには当たりませんでしたが、炎で糸が切れゴビットは脱出できました。
糸を伝って炎が燃え移り、アリアドスはやけどになってしまいました
「やったやったぁ！きみってば天才すぎ～♪ささ、こんな悪いやつはほっといて、先に行こう！
え？クモの糸があることを知っていただろうって？あはは、ごめんごめん。次はまたぼくが前を歩くから、それで勘弁してよ」
反省の色が少しも見えないサボネアは、ゴビットの前をスキップで進んでいきます。ゴビットも見よう見まねでやってみましたが、上手くいきませんでした。
それからまた進んでいくと、湖と呼ぶにはちょっと小さい、大きな池にやってきました。静かな水面に、ぽつぽつと見たことのない花が浮かんでいます。
サボネアとゴビットが池を横目に過ぎ去ろうとすると、池から視線を感じます。
近寄って覗きこむと、ヨワシが一匹泳いでいました。どこからどうみても悪いポケモンには見えません。
「ちっちっち！見た目に騙されちゃあダメだよきみ。こいつは弱いフリをして、相手を油断させてから攻撃してくるようなひどいやつだよ」
その言葉通りかどうかはわかりませんが、ヨワシはサボネアを見るなりうるうる瞳を輝かせて仲間を呼び集め、むれたすがたへと変わりました ゴビットたちを押しつぶそうと、大きな体で飛びかかってきます。
戦いたいところですが、水タイプが苦手なゴビットは逃げるしかありません。 池は隠れてやりすごせそうなところもなく、向こう岸へ続く木製の橋が架かっているだけ。サボネアと二匹で必死に追いつかれまいと橋を渡っていきます。 むれたヨワシは大量の水を吸い込んで、みずでっぽうを槍の形に変えていくつも飛ばしてきます。橋はメキメキ壊れ、先へ進むことを余儀なくさせます。
距離はどんどん縮まって、むれたヨワシの口がもうすぐそこまで迫ってきました。ゴビットは振り向きざまにシャドーパンチを放ち、むれたヨワシが技を避けようとほんの少しだけ引いたその隙に、橋を渡り切りました そこから先は水がないので、むれたヨワシは追ってこれません。
「ふぃー、一時はどうなることかと思ったよ。でも渡れてよかった。さーいこいこ♪次が最後だからさ！ふっふ～ん♪」
サボネアは鼻歌なんか歌って、ご機嫌で飛び跳ねながら先へ進みます。 ゴビットはどうして次が最後なんて知っているのか疑問に思いましたが、楽しそうなので聞かないことにしました。
そんなわけで最後にやってきたのは古い城。小さめで、地上にはないような装飾でシンプルに飾られていますが、入ってみると誰もいません。サボネアに言われるまま城内を歩いていくと、王の間からイビキのような「ぐおーぐおー」という声がします。
王の間にいたのは、王冠をまんなかの頭に戴くサザンドラでした。
といっても地上で見るサザンドラよりは小さく、お腹はまるくぷにぷにしています。なんだか楽しい夢でも見ているのか、にっこり笑顔で寝ています。
「やっとみつけた……」
サボネアはなにかぶつぶつ呟きながらサザンドラの頭から王冠を外し、それを床に叩きつけて壊してしまいました。 ゴビットがびっくりしていると、サボネアは邪悪な目つきに変わり、ひどい声で笑いだしました。
「あっはっはっはっはっは！きみってほんっと～～～に馬鹿だよねぇ！知らないところで出会ったやつを信じちゃうなんて！でもありがとう。あの馬鹿共を倒してくれたから、ぼくを縛っていた六つの封印は解けた！あとは七つ目、この世界の封印を解くだけ。そう、きみを倒してね。外の世界から来たきみを倒せば、晴れてぼくは地上へ帰れる。 この大悪卿ノクタス様を封印してくれちゃった、愚かなニンゲンたちに復讐しなくっちゃねぇ！」
なんということでしょう。サボネアの方が悪いやつだったのです ゴビットは今まで自分のしてしまったことに、後悔しました。このままノクタスを地上に行かせてしまえば、ニンゲンたちにも被害が及びます。
ゴビットは造られたあの日の思い出を胸に立ち上がって、ノクタスを倒す決意をしました。
「あはは！歯向かうっての？やれるもんならやってみなよ！」
タネばくだん、ミサイルばり、エナジーボール、どの技も強力で、ゴビットは大ダメージにならない程度に避けるのが精一杯。一方的に攻撃されるばかりで反撃の余地もありません。
くさむすびで足元を取られ、次の一撃が当たればゴビットはひんしになってしまいます。もうこれまでかと覚悟したその時、ノクタスが大きくふっ飛ばされました。気が付いたケンタロスが助けに来てくれたのです。
体制を立て直して再び攻撃しようとしたノクタスに、ほのおのキバが突き刺さります。デルビルとヘルガーも助けに来てくれたのです。 ノクタスが二匹を振り払う間にゴビットは渾身の力を拳に込め、思いっきりきあいパンチをノクタスにぶちかましました。
効果抜群の技をもろに受けて倒れ込んだノクタスは、デルビルによる地獄の業火で焼かれて塵になって消えていきました。ノクタスが消え去った後、ふあ～とのんきなあくびをして、サザンドラが起きました。
サザンドラはノクタスの手によって眠ったままにされていたようです。ゴビットは今回のいきさつを話し、ケンタロス、デルビル、ヘルガー、アリアドス、ヨワシに謝りにいきました。みんな大したけがもなかったので、笑って許してくれました。
それどころか、大活躍だったよと、バターパイやクモの巣ドーナツをたくさんもらって、地上に戻るのでした。落ちてきた穴はどこだったんだろうと見に行きましたが、そこは平たんな地面になっていて、穴はどこにもありませんでした。
きょうのおはなしは、これで……あれ？次の頁がある。
「はぁ～あ、あとちょっとってところまで行けたのになぁ。こんなチリチリにされちゃった。
まあでも。そう、やり直せばいいのさ。何度も、何度も、何度もね。ぼくが地上に戻るその時まで。あは、あはは、あはははははははは！！！！」
どこともわからない暗闇の中で、ノクタスの不気味な笑い声が響いた……。
きょうのおはなしは、これでほんとうにおしまい
ひゅーっと落ちていくと、なにか柔らかいものに当たりました。触ってみると、黄色い花が落ちてきたところの周辺に、カーペットのように敷かれていました。これで命拾いをしたようです。
見上げると空は丸く遠くなっていました。流石のゴビットも、登り切って地上に出るのは難しそう。困ったなぁと考え込んでいると、声をかけられました。振り返ると、そこにはサボネアが笑顔で腕を振っていました。
「きみもここに落ちて来たんだね。ぼく？ぼくもむかーしに落ちたのさ。 お日様の光はここにしか届かないから、ぼくはここで咲いているしか出来ないんだ。もちろん地上へ帰ろうと思ったさ。でもこの地下には怖い怖いポケモン達が住み着いていて、ぼくの邪魔をするんだ。……きみ、強そうだね。お願い、怖いポケモン達を倒してよ。道案内はぼくがするからさ！きみだって地上に帰りたいだろう？」
ゴビットはポケモンと人を守ることを目的に造られたポケモンなので、ひ弱そうなサボネアを守り、地下世界を冒険する決意をしました。怖いポケモン達だって、バトルすればわかってくれると信じているようです。
ゴビットが無言で頷くと、サボネアは意気揚々と前を歩き始めました。ゴビットはただそれについていきます。
見たことのない花や星の欠片のようなものがキラキラ光り、地下世界はちっとも暗くありません。てっきり深い闇の中だと思っていたゴビットは、ちょっと驚いているようです。
「あっ！あいつだよ！」
サボネアが示す方にはケンタロスがいました。けれど、おだやかに草を食んでいるだけで、悪いポケモンには見えません。
「えっ？悪いようには見えないって？そ、そんなことないよ！あいつはいっつも……」
言い終わらないうちにサボネアに気付いたケンタロスは、雄たけびを上げて猛スピードで突進してきました。
「ほらいった通りでしょ？ねぇ頼むよ、あいつをやっつけて！」
その場からサボネアを遠ざけて、ゴビットはケンタロスに立ち向かいます。大丈夫、ノーマルタイプのとっしんなんてゴビットには効かないのですから。ゴビットの体をすり抜けたケンタロスは、そのまま大きな岩にぶつかって気絶してしまいました。
「やったぁ！やっぱり君を選んで正解だったよ！さぁさぁ次のところへ行こう。こいつが起き上がらないうちにさ♪」
ウキウキなサボネアになにか違和感を覚えながら、ゴビットは先に進むのでした。
サクサク道を進んでいくと、またサボネアがあれ、あいつらだよと指し示します。見れば、崖の上にデルビルとヘルガーが、険しい表情で立っていました。こちらを監視しているようです。確かに、顔だけ見れば悪いやつにみえなくもありません。
「あの兄弟、いっつもぼくをいじめるんだ。兄のデルビルが相手の動きを弟のヘルガーに伝えて、ヘルガーが攻撃してくるんだ。気を付けて！」
そう言い残すと、サボネアはそそくさと隠れてしまいました。
どんな攻撃をしてくるのかわからないので、ゴビットはまるくなって相手の出方を伺います。そして、かみつこうと牙を光らせて飛びかかってきたヘルガーにタイミングを合わせて、メガトンパンチをおみまいします。
大きく後ろに吹っ飛んだヘルガーを心配して、デルビルが崖から降りてくるのを見計らって、今度はマグニチュードを放ちます。 結果は……マグニチュード4！そこそこの攻撃です。
攻撃を受けたデルビルとヘルガーは足元がふらふらになってしまい、その場に倒れ込んでしまいました。
「いえーい！その調子！どんどんいっくよーーー！！」
ますます上機嫌になったサボネアは、ゴビットの背中をズイズイ押して、歩を進めさせるのでした。
サボネアに押されて進んでいくと、うすぼんやり白い光が見えてきました。 その光は線のようにつながっていて、先を辿っていくと円形になっていました。 そうまるで……クモのいとのように。ゴビットが気が付いた時にはすでに遅く、上からアリアドスが音もなく降りてきました。
「こいつはねばねばする糸を出して、獲物を動けなくするようなヤツなんだ！頑張ってやっつけちゃってよ！君なら余裕だって～」
糸の範囲の外からサボネアの調子のいい声だけがします。
動けば動くほど絡まる糸にゴビットは大苦戦。そうしている間にも、アリアドスの牙が襲い掛かろうとじわじわ迫ってきます。このままでは食べられこそはしないものの、ひどい目にあうに決まっています。
やっとやっと繰り出したほのおのパンチは、距離が足りずアリアドスには当たりませんでしたが、炎で糸が切れゴビットは脱出できました。
糸を伝って炎が燃え移り、アリアドスはやけどになってしまいました
「やったやったぁ！きみってば天才すぎ～♪ささ、こんな悪いやつはほっといて、先に行こう！
え？クモの糸があることを知っていただろうって？あはは、ごめんごめん。次はまたぼくが前を歩くから、それで勘弁してよ」
反省の色が少しも見えないサボネアは、ゴビットの前をスキップで進んでいきます。ゴビットも見よう見まねでやってみましたが、上手くいきませんでした。
それからまた進んでいくと、湖と呼ぶにはちょっと小さい、大きな池にやってきました。静かな水面に、ぽつぽつと見たことのない花が浮かんでいます。
サボネアとゴビットが池を横目に過ぎ去ろうとすると、池から視線を感じます。
近寄って覗きこむと、ヨワシが一匹泳いでいました。どこからどうみても悪いポケモンには見えません。
「ちっちっち！見た目に騙されちゃあダメだよきみ。こいつは弱いフリをして、相手を油断させてから攻撃してくるようなひどいやつだよ」
その言葉通りかどうかはわかりませんが、ヨワシはサボネアを見るなりうるうる瞳を輝かせて仲間を呼び集め、むれたすがたへと変わりました ゴビットたちを押しつぶそうと、大きな体で飛びかかってきます。
戦いたいところですが、水タイプが苦手なゴビットは逃げるしかありません。 池は隠れてやりすごせそうなところもなく、向こう岸へ続く木製の橋が架かっているだけ。サボネアと二匹で必死に追いつかれまいと橋を渡っていきます。 むれたヨワシは大量の水を吸い込んで、みずでっぽうを槍の形に変えていくつも飛ばしてきます。橋はメキメキ壊れ、先へ進むことを余儀なくさせます。
距離はどんどん縮まって、むれたヨワシの口がもうすぐそこまで迫ってきました。ゴビットは振り向きざまにシャドーパンチを放ち、むれたヨワシが技を避けようとほんの少しだけ引いたその隙に、橋を渡り切りました そこから先は水がないので、むれたヨワシは追ってこれません。
「ふぃー、一時はどうなることかと思ったよ。でも渡れてよかった。さーいこいこ♪次が最後だからさ！ふっふ～ん♪」
サボネアは鼻歌なんか歌って、ご機嫌で飛び跳ねながら先へ進みます。 ゴビットはどうして次が最後なんて知っているのか疑問に思いましたが、楽しそうなので聞かないことにしました。
そんなわけで最後にやってきたのは古い城。小さめで、地上にはないような装飾でシンプルに飾られていますが、入ってみると誰もいません。サボネアに言われるまま城内を歩いていくと、王の間からイビキのような「ぐおーぐおー」という声がします。
王の間にいたのは、王冠をまんなかの頭に戴くサザンドラでした。
といっても地上で見るサザンドラよりは小さく、お腹はまるくぷにぷにしています。なんだか楽しい夢でも見ているのか、にっこり笑顔で寝ています。
「やっとみつけた……」
サボネアはなにかぶつぶつ呟きながらサザンドラの頭から王冠を外し、それを床に叩きつけて壊してしまいました。 ゴビットがびっくりしていると、サボネアは邪悪な目つきに変わり、ひどい声で笑いだしました。
「あっはっはっはっはっは！きみってほんっと～～～に馬鹿だよねぇ！知らないところで出会ったやつを信じちゃうなんて！でもありがとう。あの馬鹿共を倒してくれたから、ぼくを縛っていた六つの封印は解けた！あとは七つ目、この世界の封印を解くだけ。そう、きみを倒してね。外の世界から来たきみを倒せば、晴れてぼくは地上へ帰れる。 この大悪卿ノクタス様を封印してくれちゃった、愚かなニンゲンたちに復讐しなくっちゃねぇ！」
なんということでしょう。サボネアの方が悪いやつだったのです ゴビットは今まで自分のしてしまったことに、後悔しました。このままノクタスを地上に行かせてしまえば、ニンゲンたちにも被害が及びます。
ゴビットは造られたあの日の思い出を胸に立ち上がって、ノクタスを倒す決意をしました。
「あはは！歯向かうっての？やれるもんならやってみなよ！」
タネばくだん、ミサイルばり、エナジーボール、どの技も強力で、ゴビットは大ダメージにならない程度に避けるのが精一杯。一方的に攻撃されるばかりで反撃の余地もありません。
くさむすびで足元を取られ、次の一撃が当たればゴビットはひんしになってしまいます。もうこれまでかと覚悟したその時、ノクタスが大きくふっ飛ばされました。気が付いたケンタロスが助けに来てくれたのです。
体制を立て直して再び攻撃しようとしたノクタスに、ほのおのキバが突き刺さります。デルビルとヘルガーも助けに来てくれたのです。 ノクタスが二匹を振り払う間にゴビットは渾身の力を拳に込め、思いっきりきあいパンチをノクタスにぶちかましました。
効果抜群の技をもろに受けて倒れ込んだノクタスは、デルビルによる地獄の業火で焼かれて塵になって消えていきました。ノクタスが消え去った後、ふあ～とのんきなあくびをして、サザンドラが起きました。
サザンドラはノクタスの手によって眠ったままにされていたようです。ゴビットは今回のいきさつを話し、ケンタロス、デルビル、ヘルガー、アリアドス、ヨワシに謝りにいきました。みんな大したけがもなかったので、笑って許してくれました。
それどころか、大活躍だったよと、バターパイやクモの巣ドーナツをたくさんもらって、地上に戻るのでした。落ちてきた穴はどこだったんだろうと見に行きましたが、そこは平たんな地面になっていて、穴はどこにもありませんでした。
きょうのおはなしは、これで……あれ？次の頁がある。
「はぁ～あ、あとちょっとってところまで行けたのになぁ。こんなチリチリにされちゃった。
まあでも。そう、やり直せばいいのさ。何度も、何度も、何度もね。ぼくが地上に戻るその時まで。あは、あはは、あはははははははは！！！！」
どこともわからない暗闇の中で、ノクタスの不気味な笑い声が響いた……。
きょうのおはなしは、これでほんとうにおしまい