デスマスと考古学者

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デスマスが砂漠で、シンボラーやマラカッチたちと楽しく遊んでいた時の事。シンボラーが侵入者を発見したというので遺跡の方へ向かうと、背負った重い荷物をガチャガチャ鳴らしながら、一人のニンゲンがぶつぶつ呟きながら遺跡の壁や柱を触っていました。

墓荒らしがやってきたと思いデスマスがやめさせようと近づくと、ニンゲンはデスマスを見て大興奮。荷物の中からスケッチブックを取り出して、デッサンを始めました。

どうやら墓荒らしではないようです。嬉しそうにマラカッチやシンボラーのことも描きはじめたので、おかしなニンゲンが来たなぁと様子をうかがっていると、そのうち砂を瓶に詰めたり、柱の模様を書き写したりして、満足した様子で帰っていきました。

ニンゲンは次の日もやってきて、地図を広げてうーんと唸ったり、破片を拾い上げて虫眼鏡でじっと観察していました。デスマスはイタズラしようとページを戻したり、地図を取り上げたりしてみましたが、ニンゲンはそれも楽しんでいるようでした。

それからもニンゲンはやってきて、よくわからないことをしては帰っていく日々が続き、一か月が過ぎた頃。仲良くなったデスマスは、ニンゲンの手伝いをするようになっていました。

ニンゲンはデスマスの事を「古代の民」と呼び、いつも手伝ってくれるお礼にとシャラサブレをくれました。デスマスが喜んでサクサク食べていると、ニンゲンはいつもとは違う表情で語りはじめました。

自分は古代のロマンを求めて考古学者になったこと、今は砂漠になってしまったこの土地がどんな国だったのか知りたくてやってきたこと、ここを見つけるまでに歳をくってしまって、もう長くなさそうだということを。

「のう、古代の民よ。主らの暮らした国はどんなもんじゃったか。ワシは見てみたかったんじゃよ、かつて栄華を極めありとあらゆるものを手にしていたこの国の姿を」
デスマスは、身振りや手振り、石に文字を刻んで伝えようとしたけれど、うまくは伝わりませんでした。

だって、文字を刻んでいる間に、もうニンゲンはうごかなくなっていたのですから。

デスマスは、シンボラーたちに手伝ってもらって、ニンゲンを一番高い砂山に置きました。そこは気の遠くなるほど昔、この国を一望できる場所でした。吹き付ける砂塵が、そのうち彼を歴史の中へ連れて行ってくれることでしょう。

デスマスは自分でも気が付かないうちに、そっと涙を流していました。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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