満月の夜になると、ムウマージはお茶会の準備を始めます。真っ白なテーブルクロスを広げ、銀食器を並べ、お茶とお菓子を盛り付けて。さてさて今日は誰がくるのかな?
歌を口ずさみながら準備をしていると、トントンと玄関を叩く音。あれ?いつもより早いなぁなんて思いつつ扉を開けると、そこには金色のキャタピーがいました。
呼んだ覚えはないけれど、紫蝋で封した真っ赤な封筒を持っていました。これはいつもムウマージが出している招待状です。せっかく来てくれたお客を返すわけにはいかないので、キャタピーを館に入れてあげました。
キャタピーはここへくれば魔法をかけてもらえるかもしれないと思ってやってきたと言いました。どうして魔法にかかりたいのか聞いてみると、彼は色が違うからと仲間はずれにされたり、草むらに上手く隠れられない。そんな自分を変えたいのだそう。
話を聞いてムウマージはひとつお菓子をあげました。魔法がかかったそれは、食べると色が変わるもの。キャタピーが食べてみると、体の色がみるみる深い緑に変わっていきます。
けれどもあれあれ、しばらくしたら色が抜けて元に戻ってしまいました。キャタピーはがっかりしています。
それなら次はと、お茶を淹れてあげました。飲むと透明になれるもので、飲んだキャタピーはするする消えるように透明になりました。
けれどもまた失敗。背中側が消えずにそのままだったのです。しかも、時間が経ったらまた元に戻ってしまいました。キャタピーは今にも泣きそうです。
ムウマージにもプライドがあります。このまま返すわけにはいかなくなって、やれこれそれこれ魔法を次々かけました。でも、何一つうまくいきません。
キャタピーが諦めてしまって帰ろうとしたので、ムウマージは慌てて止めました。あと一回、もう一回だけと宥め、まだ完成していない試作段階の魔法をかけました。えーいっ!
それからのキャタピーは仲間にいじめられることも、天敵の鳥ポケモンに襲われることもなくなりました。 だって、ムウマージの魔法で心ごと固められオブジェになったのですから。 これからはお茶会に来るポケモンたちを見守る穏やかな日々を送ることでしょう。
きょうのおはなしは、これでおしまい