覚悟

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 大人びた子供。もしくは、感じの良い子。
 日頃何も知らない大人たちの、少女の印象への感想は異口同音のそれだった。
 落ち着いた素振り、控えめな口調、整った姿勢。誰もが少女に対してそんな言葉を投げ掛ける。ある程度はお世辞も含まれているのだろうが、やんちゃだの、元気が良いなどとは言われたことがない。
 もっとも、少女本人は全くもって自分がそんな上品な性格だとは思っていなかった。
 そんなものは胸のうちに広がる様々な葛藤や憎悪、これらを取り繕う為の、かりそめの演技でしかない。日頃からよく微笑む子だと言われるが、心からの笑顔を人間に向けた事など殆どない。
 ひねくれていると言われれば、そうなのかもしれない。周りにそんな態度をとっているからといって、決して慕っているというわけでもない。寧ろ、人を信頼するなどもってのほかだと思ってすらいる。彼らほど冷たい生き物はいない。
 少女は歩みを止めた。目の前には重厚な煉瓦作りの建物がそびえ立っている。ヒウンの中心部にある図書館だった。市民に解放されているため、日頃から暇潰しによく足を運ぶ場所だ。
 しかし、今日は単なる時間潰しに来たわけではない。知らなければならない事がたくさんある。未熟な脳に、少しでも知識を蓄えなければならない。
 周りの人間たちは見放した。もう無理だと言っていた。少女も察していた。事態は解決しない。事の行く様を見守るしかない。
 だが、ただ傍観することもできない。一秒でも長く彼女(・・)といたい。悲しい運命が約束されているならば、少しでもあとにまわしたい。その為なら、どんなことでもする覚悟がある。
 温い風が頬を撫でる。長い髪をなびかせ、少女は徐に図書館の入り口へと歩きだした。
 救いたい。唯一私が慕う存在、私の心に寄り添ってくれる者。彼女――セリジェを。
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