episode7━12 最後の親子喧嘩 3

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「まず波動とは何か、から説明していこうか」

父さんはその場に座り、俺と兄さんも釣られて座る。ガブリアスも近付いてきて同じように座った。

「波動は、簡単に言えば波を動かす力。戦闘における意味合いとしては、エネルギーを波として操る力の事を指す。ルカリオという種族は、その力が特に強い」

「つまり、エネルギーの操作に長けている…と?」

「その通りだよガブリアス。ルカリオとガイラルが子供の時にも教えたが…覚えてないようだ」

「…むぅ」

隣で兄さんが唸る。…確かに覚えていないようだ。俺もだが。
父さんは軽く笑い、不服そうな顔で兄さんが質問をした。

「…で?その波動の力を使ってどうやって波動の嵐を止められるようになるんだよ。使うのはともかく、止めるのは違うだろ。その波動の力はあくまで自分が使うときに発揮されるもの。相手が放った魔術を止めれるものじゃないだろ?」

「そうだ。…ここから先は、お前たちにも教えたことがない話だな。…実は、波動にはもう一つ種類がある」

「…もう一つ…?」

俺の言葉に父さんは頷いた。

「エネルギーの波を、導く力。波導だ」

「…波導…?」

「ああ、ルカリオ。波導は、お前たちも無意識に使っている力だ。視力を使わず、少し遠くの物体を感知する能力としてな」

「…!」

確かに、覚えがある。仲間達よりも俺と兄さんは気配の察知が上手い。気にしていなかったが、それが波導だってのか?

「確かに覚えはあるが…やっぱり今の話とは関係が…」

「まぁ聞けガイラル。本題はここからだ。波導には感知の能力とは別に…もう一つ力がある。それが」

父さんは一言溜め、言った。

「エネルギーを導く力、だ」

「…波動とは違うのか?あれもエネルギーを動かす力だが」

「違うさ。波動は自身のエネルギーを動かす力。だが波導はエネルギーを導く力。つまり、相手のエネルギーをも動かせる力だ」

「…!」

俺達に、そんな力が…?俺と兄さんは思わず固まった。

「相手が放った魔術を操作することも勿論出来る。まぁ殆どのルカリオはこれを知らないが。…もう、俺が言いたいことは分かっただろう?」

「あぁ。その波導の力で、親父の波動の嵐を…跳ね返すって事だな」

兄さんの言葉に、父さんは笑って頷いた。

「…そろそろ、俺が自由に動ける時間が切れる。悪いがぶっつけ本番だ。波導を使うときは、ありったけの波動エネルギーを手に集め、対象を操るイメージでエネルギーを放て。細かい操作など今はまだ必要無い。そのまま真っ直ぐに俺に跳ね返せ」

「分かった。…危険だなんて、言ってられないもんな」

「その通りだガイラル。…二人とも、絶対に俺に勝てよ。勝って、先に進め」

「ああ!」

「分かった!」

全員が大きく下がり、ガブリアスが話し掛けてきた。

「万が一、お前達が危険に陥れば…恨まれてでも加勢するからな」

「…好きにしな、ガブリアス。だが、そうはならねぇさ。お前も祈っててくれよ?」

「フッ。そうさせてもらうとも」

ガブリアスは微笑を浮かべ、下がっていった。
そして、父さんがあの構えを取る。

「…行くぞ…!ルカリオ!ガイラル!」

「ああ!」

「上等だァ!」

俺達の返事に父さんは笑い、両手に渦のような波動のエネルギーが込められていく。真正面から受け止めれば、まず間違いなく死ぬ。だが、俺と兄さんは引かない。

父さんから教わったものを、父さんに見せるために。

「『波動の嵐』ッ!!!」

強風と共に、こちらへと強大なエネルギーが放たれる。俺達は教わった通り、波動のエネルギーを両手に込め、前方へ翳す。

「ぐっ…!」

嵐のようなエネルギーが俺達を包み、体のあちこちが切れて血が流れ出る。
それでも、止めない。

「兄さん…どう、だ…!?」

「痛いが…何か…掴めてきた…!ルカリオ!お前は?」

「俺もさ…!何かを、触っているような感覚がある…!」

俺の言葉に兄さんは笑い、前を見た。

「やるな、ルカリオ!なら、このまま…!この嵐を…親父に跳ね返すぞ!」

「ああ!」

身体中をズタズタに裂かれながら、俺達はついに父さんのエネルギーに触れることが出来た。そして、触れたからこそ…父さんの強さをひしひしと感じる。

「こんなエネルギーを…軽々扱えるとはな…!化け物だな、俺らの親はよ!」

「全くだよ兄さん…!俺達の憧れだよ…っ!」

「ハハ、本当にな…!だからよ、俺達だって…負けらんねぇよなぁ!」

「そうだな…ッ!ぐぐ…!!」

他愛の無い話をしながら、徐々に徐々に嵐が反れていく。もとい、俺達のエネルギーに…導かれていく。

「良いぞ二人とも!もう少しだ!」

父さんは肩で息をしながら、こちらを見ていた。その言葉に俺達は笑い、更に力を込めた。

「ルカリオ!行けるか?」

「いつでも!今なら、やれる!」

互いに顔を合わせた後、親父を見た。

「父さん!」

「親父!」

二人は同時に、嵐をねじ曲げて父さんへと放つ。

「「これが俺達の…全力だ!!」」

こちらを襲うだけだった暴風が、俺達のエネルギーに導かれるように…父さんへと跳ね返った。その光景に父さんは驚いた後…笑う。

「見事…!流石は俺の息子たちだ」

跳ね返された暴風が、父さんを包み込む。あれだけの技を撃った後にあの嵐を避けることは不可能。…俺達の、勝ちだ。

………

「…終わった、な」

父さんからギラティナのエネルギーが消え去り、息をついてその場に座った。とても、満足そうな顔だ。

「ありがとう、父さん。父さんから教わった波導…きっとこの先も役立てて見せるよ」

感謝を込め、父さんへと頭を下げた。父さんは少し目を丸くし、その後笑った。

「はは、そうしてくれ。…しかしまぁ、兄弟とはいえ似てないなぁ。ガイラルなんてこんなに真っ直ぐに感謝してくれないのに」

「なっ!?そ、そんなことねーよ親父!俺だって感謝してるさ!」

「冗談だ。…ともあれ、二人がこんなにも成長してくれたのは…本当に嬉しいよ」

その言葉に、目頭が再び熱くなる。だが、堪えた。
ここで泣いたら、父さんは俺達の事を心配してしまう。笑顔で、送るんだ。
すると、ガブリアスがこちらへと歩いてきた。

「俺は、貴方のおかげで今も生きている。…この先に何があろうとも二人を支え、守ると再び誓います」

「…ああ、助かるよガブリアス。君は俺以上に二人の父親のようだな」

「じ、冗談は止して下さい。二人の父親は貴方しか有り得ませんよ」

「ははは。君も中々面白いポケモンだな。…さて、と」

ガブリアスと会話をした直後。俺達の体が淡く光り始めた。時間切れだろう。

「時間、だな。在るべき場所へ、帰らなければいけない」

「父さん…」

「親父…!」

父さんは立ち上がり、笑みを浮かべた。

「それじゃあな、皆。俺はいつまでも、皆を見守っているよ。悪を滅ぼし、平和になった世界を…俺に見せてくれ」

「…ああ、約束する!」

「兄さんや皆と一緒に…必ず勝って見せるよ!」

「さようなら、ミスランさん。俺達は必ず平和を取り戻します」

俺達の決意に安心したかのように、父さんは目を瞑る。

「…だが、泣き虫なのは直しておけよ?二人とも」

「く…うるせーよ…!」

「…っ…!」

視界がぼやけてはっきりと父さんの姿が見えなくなっているが、きっと、父さんは満足したのだろう。

「…闇の中で輝く者達。皆が闇を照らす事を願っている」

そして、意識がプツリと途絶えた。
…必ず、勝つ。父さんの為にも。
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