episode7ー6 氷の魔女 1

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

寒くなりましたねぇ
「私に自我はあるけれど…二人を攻撃しようとする意思だけは反抗することが出来ないの。力もギラティナのせいで大幅に強化されている。だから、全力で私を倒して。大丈夫、私はとっくに死人。遠慮なんか要らないよ」
「………わかった。すまない、ユキメノコ」
「了解しました」

胸を締め付けられる思いで、構える。

「ありがと、キリキザン、サーナイト。じゃ…行くよ!」

ユキメノコは両手にエネルギーを集め、大量の氷柱を空中に出現させた。…ギラティナに強化されている為、昔よりも遥かに濃いエネルギーだ。

「『アイスニードル』」

ユキメノコの声と共に、大量の氷柱が発射される。弾くのは容易いが、問題はこの数。全て捌くのは難しいかもしれない。だが

「『サイコキネシス』!」

サーナイトが咄嗟に技を使い、氷柱を空中で固定させて砕いた。…こちらには圧倒的魔力量の持ち主であるサーナイトがいる。魔術を得意とするユキメノコにとっては天敵だ。

「流石ね。でも」

ユキメノコは悲しげに笑い、砕いた筈の氷が固まり、もう一度俺達へと発射された。

「っ『サイコキネシス』!」

サーナイトは再び魔術で氷柱を止めるが…先程よりも強い魔力が込められており、サーナイトでさえ止めることが精一杯だった。

「この…魔力は…!私並の…!」

更に魔力を込めてサーナイトは氷柱をなんとか砕くが…次の瞬間。サーナイトの肩に氷の矢のような物が勢い良く突き刺さった。

「くぁっ!?」
「サーナイト!」

驚いてユキメノコの方を見ると、氷で出来た弓を構えたままこちらを見据えていた。

「…私の氷魔術の利点は、壊されても直ぐに修正出来るところよ。加えて、ギラティナの力が加わっているから魔力量もサーナイト程までは行かずとも近いレベルの量がある。…全力で、と言った筈よ。二人が全力じゃないと、今の私を倒せないわよ」
「く…」

ユキメノコの話を聞いた後、サーナイトの方を見る。治癒魔術で肩を癒しており、痛みに顔を歪ませてはいるが無事のようだ。

「…油断しました。とりあえず大丈夫です」
「分かった。…ユキメノコの言うとおり、全力を出さなきゃやられるな。…俺が接近する。サーナイトは援護を頼む」
「心得ました」

手から刃を突き出し、ユキメノコへと走る。

「『辻斬り』」

ユキメノコの少し手前で止まり、左から右斜め上へと横凪ぎに刃を振る。ユキメノコは動じず、手を前に翳す。

「『氷の盾』」

ユキメノコはこちらの身長程の大きさの氷で出来た盾を作り出し、辻斬りを防ぐ。が、一撃を防いだだけで粉々に砕け散った。…この程度の脆さなら押しきれる。でも、そうはいかないのだろうな。

「『アイスニードル』」

思った通り、砕いた氷の破片が集結しこちらへと降り注いできた。脆く壊れやすいが、防御と同時に攻撃を行う魔術か。流石はユキメノコ。だが

「キリキザンさん!私の後ろに!」
「ああ!」
「『ロックハンマー』」

サーナイトが俺の前に入り、巨大な岩を具現化させて氷を押し潰した。…こちらは二人だ。冷静に対処すれば問題はない。

「助かった、サーナイト。…今度は、こちらが攻める!」
「了解しました!」

両手にエネルギーを集中させ、刃が突き出していく。ベルセルクから教わった多彩な攻撃の数々。再現するのは非常に難しかったものだが…今は、完璧にこなせる。

「『乱鉄甲剣』!」

ユキメノコに一気に近付き、右手の刃を振るう。それと同時に刃が無数に枝分かれし四方から攻撃を仕掛けた。ユキメノコは少しだけ驚き、自身の周りに氷のエネルギーをばら蒔いた。

「『霰の霧』」

白く輝く霰のような魔術。これは見たことがあるな。あれに触れると威力が削がれてしまうものだ。

「ならば、これはどうだ!」

素早く手を引き、枝分かれしていた刃を一点に集中させ、前へと突き出す。

「乱鉄甲剣『鞭鋼』!」

しなやかな刃と化し、霰の膜の隙間を縫うようにユキメノコへと放つ。ユキメノコは苦い顔をし、避けることが出来ずに横腹に刃が当たった。

「くっ!良いわよ、キリキザン!」
「すまない、ユキメノコ」
「謝ることはないわよ。こっちだって攻撃してるんだから」

ユキメノコは一歩下がった。…攻撃を与えた箇所から淡い光が漏れている。魂だけの存在とはいえ、攻撃は通るようだな。

「このまま…!『リフレクション』!」

サーナイトが続き、空中を乱反射する光線を放った。ユキメノコは冷静にそれを見詰め、目の前に迫る光線に向けて氷の鏡を出現させた。

「『反射氷』」

鏡はそのまま光線を跳ね返し、サーナイトへと迫る。

「く…!やぁ!」

サーナイトは焦るも、エネルギーを込めた手の平でそれを受け止め、消滅させた。

「残念ながら、今の私に単純な魔術じゃダメージを与えられないよ。サーナイト程の実力でもね」
「みたいですね…!キリキザンさん、ごめんなさい!今回はあまり役にたてないかもしれません」
「構わない。手数が増えるだけでも有利だ。…だが、それとは別に頼みがある」

ユキメノコから目を離さずに、サーナイトへと耳打ちをする。それを聞いて、サーナイトは苦笑いを浮かべた。

「そ、それは中々…難しい注文ですね…」
「頼めるか?」
「勿論です。…しかし、その作戦はキリキザンさんもかなり危険ですね…大丈夫ですか?」

サーナイトから問われ、答えた。

「早く、ユキメノコを楽にしてやりたいんだ。この程度の危険など、どうということはない」
「…分かりました。やります」
「すまないな」

サーナイトに礼をしつつ、ポーチからネックレスを取り出す。…俺の特性は少々使いどころが難しい。それ故に常に使うことは出来なかった。だが、今はサーナイトがいる。今なら。

「…特性ね。私はここからずっと皆を見てきたけど、貴方の特性だけは把握してない。一度も使わなかったものね」
「リスクの高さ、そして仮想訓練では練習出来ないものだからな。実戦で使うのはお前が初めてだ。…今、楽にしてやる」

こちらの言葉にユキメノコは微笑み、俺はそっと首にネックレスを掛けた。瞬間、体の底から力が沸いてくる。

すっと息を吸い込み、吐く。両手に力を込めて…特性を発動させた。

「【狂戦士】(バーサーカー)!」

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