この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
遅くなりました
「はっ…はっ…!」
ルトはとある知らせを聞き、ある部屋へと急ぎ足で向かっていた。
目的地の部屋のドア前に着き、勢い良く開いた。
そこには
「…おう、ルト。おはよう」
「シャル…!良かった…」
意識不明だったシャルが目覚めたのだ。ルトはサーナイトからその事を聞き、病室へと急いで向かっていた。
サーナイトから何故病室にいるのかは聞いているようで、シャルは落ち着いた様子だった。
「痛むか?意識ははっきりしてるか?」
「痛むは痛むが…意識は大丈夫だ。…それより、やっぱり信じられねぇがな。ナイトが…裏切ったなんてヨ」
…違った、シャルは落ち着いているようで、内心混乱していたのだ。
………
しばらく話をした後、ルトがこの前サーナイトにされた質問をシャルにも聞いた。…ナイトを、どうしたいかだ。
「………簡単だろ、それは」
「本当に…か?俺には答えられなかったんだが…。因みに、シャルはどうしたいと思ったんだ?聞かせてくれ」
ルトが促すと、シャルは答えた。
「罪は償わせる、それだけだ。裏切りはどの世界だろうがあっちゃいけない事だ。…それに、ナイトが裏切りだけしか罪を犯してないとは到底思えないしな」
「罪…か…。それは…」
━シャルにここまでの重症を負わせたナイトが、これから先ポケモン殺しをしないとは思えない。実際シャルや俺達はガイラルさん達が助けに来なければ確実に殺されていた。
ルトが長考していると、シャルは小さく呟いた。
「…ただ、疑問はある。そこに、ナイトを知るヒントがあるかもな」
「…疑問、だって?」
シャルは続けた。
「あの時、なぜナイトが【穿つ者】を使わなかったのか…だ。あの特性を使ってたなら俺達は抵抗すら出来なかっただろ?明らかに殺しに向かってきたってのに、使わないのはおかしいだろ。加えて、俺への攻撃も違和感がある」
「…あの時は完全に不意を突かれたし、ナイトだって不意を突くつもりだった筈だ。なら何故頭部を狙わない?特性を使えない理由があったとしても、俺の首なり頭蓋を不意討ちすりゃあ即死だ。治癒魔術があるんだから腹を攻撃するのは確実に殺せるとは言い切れない。…あの百戦錬磨のナイトが、そんなミスをするか?」
「…!確かに…」
━そうだ、確かにそうだ。ナイトの特性は到底防げるモノではない。あれを使えばガイラルさん達が助けに来る暇もなく全滅していてもおかしくない。シャルへの攻撃だって不自然だ。何故だ…?
「…ま、今考えても仕方無い事かもしんねーナ。それよりも今は…これからどうするかだ」
「そうだな…」
シャルは一度ナイトの話を止め、これからの事を考え始めた。
すると病室へ、サーナイトを除いた残りの皆が入ってきた。
「シャルさん!よくぞご無事で!」
「うむ、心配したぞ」
「うん、まだ痛そうだけどとりあえず良かったじゃん」
ミリアン、ヤイバ、ルーナはそれぞれ喜んだ。━ルーナ、声出せるようになったんだな。
………
その後、しばらく皆で雑談をし、シャルの病室を出た。
意識が戻ったとはいえ、少し前まで意識不明だったシャルに無理をさせてはいけないと思ったからだ。
「フッ!はぁ!」
ルトは殆ど傷は完治し、無茶な動きを避けつつ無人の広場で木刀の素振りをしていた。折れた刀は今レェリの所へ送られ、補強を兼ねつつ打ち直して貰っていた。
━レェリさんの加工技術は素晴らしい。きっと前よりも扱いやすくなって戻ってくるだろう。
そうルトは確信していた。
暫く素振りをしていると、そこにヤイバが顔を出した。
「精が出るな、ルト」
「ヤイバか。まぁな…治療期間中は全く体を動かせてなかったから、体を動かしたくなったんだ。…ヤイバ、体は大丈夫か?」
そう聞くと、ヤイバは自慢げに腕や足を激しく動かした。
「問題ない。サーナイト殿の治療は的確だ。流石は神殺し一の魔力量の持ち主と言ったところだ。…ところで、ルトよ」
「ん?」
ヤイバは両手に持っていた二本の竹刀から、一本をルトに渡した。
「…少し、手合わせをせぬか?久々にな」
「は、乗ったぜ!受けて立つ!」
ルトはヤイバから二歩離れ、互いに竹刀を構えた。
「そちらから来い、ルト!」
「上等!」
ルトは土を思い切り蹴り上げ、ヤイバの右手側に接近する。左足をしっかりと踏み立たせ、横薙ぎに竹刀を奮う。
「フン!」
鋭い一撃は竹刀で受け止められ、そのままヤイバは竹刀を振り上げた。
「っと!」
勢いで体ごと飛ばされ、着地する。ヤイバは隙を逃さず、一歩で接近して鋭い突きを放った。
「っ!」
ルトはギリギリで体を捻ってそれを避け、右足でヤイバの竹刀を蹴った。ヤイバの手元から竹刀が弾かれ、宙を舞う。
「とった!」
「甘いぞ!」
ルトの素早い攻撃を全てヤイバは避け、大きく屈みながらルトの懐へ忍び込む。そのまま、右手の手のひらでルトの腹を弾いた。
「かっ…!んの…!」
「せぃあ!」
すると同時に宙に浮いていたヤイバの刀がヤイバの元へと落ちてきて、それを握りしめルトの竹刀と激しくぶつかった。
鍔迫り合いだ。
「ぐぐぐ…!」
「はは、やはりルトとの闘いは愉しいな!」
そして、互いに後ろへ下がる。
ほぼ五分五分、だが僅かにヤイバのが上手だ。
「やっぱりヤイバは強いな、中々決まらねぇ」
「そちらもな。その反応の早さ、毎度驚かされるよ」
再び竹刀を構え、両者が走り出そうとした時…同時に何者かの気配を感じて足を止めた。
「…?誰だ?」
「わからん。だが…」
二人が見た先には、一人のポケモンがこちらにゆっくりと歩いてきた。背中に荷物と、剣を背負ったルカリオ族のポケモンだ。
…明らかに、強者のオーラだ。
「…はは、二人とも強いな。サーナイトの言った通り、中々の才能だな」
やがてそのポケモンは二人の近くまで寄ってきた。ルトは少し警戒をしながら話し掛ける。
「…貴方は?」
「俺か?俺は…」
「━━━ルカリオさん!お帰りなさい!」
その男が話そうとした瞬間、サーナイトが遠くから小走りで近づいてきた。
「お、サーナイト!今戻ったぜ!」
「はい!お疲れ様です!」
そしてサーナイトはそのルカリオ族のポケモンに大胆に抱き付いた。
ルトとヤイバは唖然とした。
「んな…!?」
「一体…?」
サーナイトはルト達に気付き、そそくさとルカリオから離れ、わざとらしく咳をした。
「こ、この方は…ルカリオさんです。二人とも知っていますよね?」
「ルカリオ…!?まさか、神殺しの…!」
「ええ!ガイラルさんを兄に持つ、神殺しの英雄です」
━━ルカリオ。ガイラルさんと共にアルセウスを撃ち取った英雄。つまりは…この世界を一度救った生きる伝説だ!
「はは、なんだか照れるな。ま、確かに俺がルカリオだ。英雄って柄じゃ無いけどな」
ルカリオは照れ臭そうに笑い、ルトとヤイバを見た。
「さて、後で二人とも時間とれるか?」
「…構いませんが…?」
「何を?」
疑問を浮かべるルトとヤイバに、ルカリオは笑いながら答えた。
「━━ちょいと、遊ぼう(闘おう)ぜ?」
マテリアの再加工
マテリアが破損、紛失した場合は修理または再加工が行われる。
再加工には主にレェリが担当し、迅速かつ正確に作り直される。その際にマテリア所持者から要望があれば形状を変更したり耐久度の上昇等も行う場合もある。マテリアの元であるコアは数に限りがあるものの、そもそもマテリアが壊れる事は少ない為、今のところ間に合っているという。