episode4━X 終わらない

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永遠のように長く続く闇の回廊、その中をボスゴドラとナイトは歩く。

「ナイト、少し休め。強引に解除しちまったから、歩くのもやっとだろ」

ボスゴドラはそうナイトに言い、ナイトは力なく笑う。

「…そうだね。かなりキテるよ。でも今寝ちゃったらアンタに運んで貰う事になるでしょ?子供みたいで嫌じゃん」
「ハッ、減らず口叩く元気はあるってか。…安心しろよ、丁重に運んでやる」
「……そっか…」

そうナイトは呟き、フラりと前に倒れかけ、ボスゴドラが咄嗟に庇った。
そのまま両腕でナイトを抱き上げ、そのまま歩いていく。ナイトは青い顔をしたまま、眠りについた。

「…本来のお前は優しい奴なんだろうな、寝顔ってのは、本当の自分をさらけ出す。でも…おせぇよ。俺も…お前も」

ボスゴドラは何処か悲しそうに一人言を呟き、前を向いた。

………

「…どうだった?ガランド隊」
「何人かの殉職者は確認しました…そして、行方不明者も。まだ見つかってない可能性を考慮しても…5人以上は連れ去られている可能性が高いです」
「自分は空から周ってみましたが、結果はガランドと同じです」
「…そうか、ご苦労だった。ガランド隊は下がってくれ、後は手の空いている兵士で街のガレキを撤去する」

ガランド隊の二人は頭を下げ、ガイラルから離れていった。

━嫌な予感は当たった…と言うことか。

そこに、呼吸を荒くしたエメルが走ってきた。

「はっ…ガイラル…さん!ナイトが裏切ったって…本当ですか…?」
「…理由はどうあれ、ルト達に攻撃を仕掛けていたのは俺とガブリアスが視認した。恐らく…」
「…!あの…バカ…!何考えてるのよッ!」

エメルはギリリと歯を食い縛り、拳に力を込めて震えていた。

しかし何故なんだ。ナイトは俺ら神殺しに次ぐ実力者で、長年兵士をやっていたベテランだ。もしスパイだったとしても、この数年間…全くその気すら感じさせなかったと?
それにミラウェルの入隊検査には悪しき者を省くために入念な申請を行っている。それらを全てすり抜けたと?…不可能だ。

「…これはどういう事かね?ガイラル君」
「!…ラギ…」

二人がいる所に、一人の男性がゆっくりと歩いてきた。名は『ラギ・オートマン』種族はフーディン。

「ラギさん、だろう。…この作戦は君が指揮したモノだ。当然…責任も君にある。分かっているな?」
「…ハ、ここぞとばかり元気だな?ラギ・オートマンさんよ。言われなくても分かっているさ。…ところでラギよ」

ガイラルは立ち上がり、ラギの目の前まで近づいた。ラギは少し気圧され、一歩下がる。

「…ナイトはアンタが連れてきたポケモンだったよな。それが今日いきなり裏切った。何か知らないか?」
「…何を言うかと思えば。彼女は親を亡くして身寄りがなく、家で育てていたポケモンだ。そして、戦闘の才能があったからミラウェルに入隊させた。それだけだよ。彼女は多くを話さない子でね…詳しくは私も知らないのだよ」
「…そうかよ」

ガイラルは目を瞑ってため息をつき、ラギから離れた。ラギが一息ついた瞬間、ガイラルはラギの首元に剣を勢い良く近づけた。寸前で止まり、ラギの顔から大粒の汗が流れた。

「うっ…!?な、なにを…!」
「アンタが何か隠してるのは知っている。ただ、立場上…あまり荒事は出来ねぇ。今はまだ見逃してやるけどよ…あまり調子に乗るなよ?」
「貴様ッ!私が誰か知っての事だろうな!?」

ガイラルは薄ら笑いを浮かべた。

「知ってるさ、この大陸の権力者様だろう?知った上で言っている。俺は元レジスタンス、多勢に無勢は慣れっこだ。例えお前が権力を翳そうが…俺は止まらねェ。その事を忘れるな。…じゃーな、お前が素直になることを祈ってるぜ」

ガイラルは剣をしまい、エメルを連れてその場から立ち去った。

一人残されたラギは、舌打ちをしガイラルの背中を睨んだ。

「…野蛮なガキが…!私が権力だけの男だと思ったら大間違いだ…!いつの日か解らせてやる!」

ラギは怒りを込めたまま、その場からテレポートして消えた。

………

「…良いんですか?ガイラルさん。あのポケモンはこの大陸の王族の方なんでしょ?活動しにくくなりませんか?」
「問題ねぇよ。ナイトを入隊させ、その成果を半分以上自分の手柄にして甘い汁を吸ってた小物だ。権力こそあるが、ここのミラウェルは更に上の権限を持つ現国王が認めて作ったものだ。ジャロスとも有効な関係を築いている温和な王様さ。今さらアイツがでしゃばってもなんもできねーよ。だからこそイラついてんだろうな」
「なるほど…可愛そうなポケモンね」

そういうこった、と吐き捨ててガイラルは街を歩く。
後ろに付いて歩いていたエメルは、ふと先程の言葉を思い出す。

「ガイラルさん、さっきラギが言ってた責任って…ガイラルさんは何をするつもりなの?」
「…あぁ、その事か」

ガイラルは立ち止まり、エメルを見た。

「被害者の遺族への謝罪をして回るのと、指揮者の責任をとって…俺はミラウェルを辞める。ラギはどうも俺が苦手みたいで、俺がいなくなる事に喜んでたんだろうよ」
「辞め…る…!?そんなっ!いきなりですか!?」
「いきなりでもない。最悪の結果を招いた事とは無関係に、俺は近いうちに辞めるつもりだった。…こんな形では辞めたくなかったがな。…くそっ」

エメルは驚きを隠せず、更にガイラルに問い詰めた。

「でも…これからガイラルさんはどうするんですか?ミラウェルを辞めて、ただの一般市民に戻ると?」
「な訳あるかよ。…なに、ちょいと裏方に回るだけだ。次の支部長は決めてある。俺よりも冷静な判断が下せるガブリアスにな」
「ガブリアスさん…。確かに、あの方なら心強いですけど…そんな簡単に辞めるなんて意外でした。きっと皆も驚くでしょうね」

エメルの何気ない言葉に、ガイラルは目を伏せた。

「すまねぇな、迷惑かける」
「…あっ、いえ、ガイラルさんがミラウェルにとってどれだけ大切な存在かは良くわかっているので。きっと、事情があるんですよね?」

ガイラルは無言で頷いた。

「ああ。…アンノウンとは違う敵…その存在が明らかになった今、俺がやるべきことは変わった。ただ…それだけだよ」

ガイラルは意味深な言葉を残し、兵士の収集を掛けるべく本部へとテレポートした。

………

「…この子らをよろしく頼む。サーナイト」

ガブリアスは五人を担いでとある街に着き、サーナイト族の女性に話しかける。五人は看護師の手により、病院へと運ばれていった。

「はい、任せてください。今病院のほうも手が空いてるので、急ぎ治療します」
「ああ。それと…こいつらが起きたとき、きっと心が傷付いているだろう。親しいポケモンの裏切り…そう簡単には立ち直れない。心のケアも欠かせないでほしい。サーナイトなら大丈夫だろう」
「…ええ、心得ました。ガブリアスさんは相変わらず優しいですね…お任せください」

サーナイトの優しい言葉に、ガブリアスは照れ臭そうに頬を掻いた。

「ではな。これからより一層忙しくなる。サーナイトにも…ルカリオにも、動いてもらうかもしれない。…ルカリオはともかく、サーナイトまで巻き込むのは申し訳ないが…」
「…構いません、私も神殺しの一人…闇が払われるまでは力を尽くします」
「…そうか、じゃあ…戻る。ルカリオにもよろしく頼むぞ」

ガブリアスは礼をし、急いでドットへと戻った。

サーナイトは一枚の手紙を取りだし、空を仰いだ。

「…また、戦いが始まりますね。ルカリオさん。…頑張りましょう」

悲哀を込めた言葉は、虚しく空に消えていった。







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