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可愛さ余って憎さ百倍?(前編)


カラクサタウンとサンヨウシティを結ぶ2番道路は、日々多くのトレーナーで賑わいを見せている。
その理由は実に単純で、そこかしこでトレーナーが自慢のポケモンを戦わせているからである。
道路脇の草場は障害物に乏しく見通しが良いため、バトルを行うにはうってつけの場所なのだ。
見るからにベテランの風格を漂わせる者から、旅立ったばかりでポケモンへの指示はおろか状況判断すらおぼつかない新米まで、己の身の丈に見合った相手を捜すのはそう難しくもない。
サンヨウシティのジム戦が目睫に迫る中、カラクサタウンを発ったアカツキもまた自身とポケモンたちのレベルアップのため手近な相手にバトルを申し込んでいた。

「ハーディ、噛み砕く!!」
「ブルンゲル、水の波動!!」

ハーディがピンクの風船のようなポケモン――ブルンゲル目がけ突進するも、弱点となる攻撃に対して相手が易々と接近を許すはずもない。
ブルンゲルの放った水の波動はハーディを直撃し、積み重なったダメージも相まってハーディは倒れてしまった。

「はい、そこまで」

審判を買って出たチェレンの宣言で、バトルは終了した。
戦闘不能を告げられたわけではなかったが、ハーディが肢体を投げ出して仰向けに倒れたのを見て『まだ戦える!!』と食ってかかるほど、アカツキは馬鹿ではなかった。

「ブルンゲル、ご苦労」
「ハーディ、大丈夫か?」

力を尽くして戦ったポケモンの元に駆け寄り、そっと抱き上げる。
完全に気を失っているハーディが返事を返せるはずもなかったが、彼が傍に来ることが分かっていたように、その口元には満足げな笑みが浮かんでいた。

「お疲れさん。ゆっくり休んでくれ」

全力で戦ってくれたハーディに精一杯の労いを与え、モンスターボールに戻す。
姿と共に腕から消える重さ――代わりと言わんばかりに、心に今回のバトルの反省点がずしりと圧し掛かってきた。
トレーナーとして全力は尽くしたが、残念ながら負けてしまった。
思い返してみれば、改めるべき点はいくつもある。

(どうしようもないくらい相手が強かったってわけじゃない。オレがもっとしっかりしてれば十分勝ててた)

力量の差は確かにあるが、勝とうと思えば十分に勝てる程度の差でしかなかった。
見知らぬポケモンが相手だったとはいえ、ポケモン図鑑でタイプや特性を事前に知ることはできたし、接近戦を苦手としていることはバトルの中で十分に察せられた。
ハーディが得意とする間合いに持ち込めば、逆転勝利も可能だっただろう……そこまで至らなかったのは、その機会を何度も逃した自分の、トレーナーとしての弱さ。見識の狭さだ。
自然な気持ちで己の至らなさを受け入れ、小さく息を吐く。
次は絶対に勝つ――拳を固めながら立ち上がると、バトルの相手が歩み寄ってきた。

「バッジを持ってないと聞いたから、正直乗り気じゃなかったんだけど……いや、なかなか楽しいバトルだったよ。
また機会があったらバトルしてくれないか?」
「もちろん。いい経験になったよ、ありがとう」
「ああ。それじゃあ、またな」

互いの健闘を讃え合い、握手を交わす。
『乗り気じゃなかった』と心情を吐露した相手は、リーグバッジを四つ手にした格上のトレーナーだった。
手応えのあるバトルを求めていたこともあって、バッジを一つも持っていないアカツキからの申し出を最初は断っていたのだが、むしろ格上の相手を求めていた彼はこれでもかとばかりに粘り強く交渉して、どうにかバトルをしてもらえることになった。
結果は当然の帰結であったが、旅立ったばかりとは思えない戦いっぷりに満足した……それが対戦相手の率直な感想だった。
楽しかったという言葉通りの笑みを浮かべ、勝ち星を挙げた相手はカラクサタウン方面へと歩き出す。
ナンダカンダ言いながらもバトルを受けてくれた相手への感謝を胸に秘めて見送りながら、アカツキはカラクサタウンを発ってからのバトルを思い返していた。
二勝一敗。言わずもがな、その一敗は今しがたのバトルである。
ポケモン図鑑で多少なりとも情報を仕入れられることを差し引いても、アカツキにとってイッシュ地方のポケモンのほとんどは未知なる相手。
その『未知なる相手』に勝ち越せたのだから、トレーナーとして着実に力をつけているのは間違いない。
……と、バトルが終わったところでナナとチェレンがやってきた。

「アカツキ。お疲れさま」
「ありがとう。もっとイッシュ地方のポケモンのことを知らなきゃいけないなって思ったよ」
「まあ、知らない割には善戦してたよ」

チェレンは審判として中立の立場でバトルを見て、負けはしたもののアカツキは善戦したと率直に感じていた。
対戦相手のブルンゲルのタイプはともかく、特性までは分からなかったのだろう……バトルの中で感じたことをアドバイスとして口にする。

「ブルンゲルは『呪われボディ』が厄介なんだ。
下手に攻撃すると、その技がしばらく使えなくなってしまうことがある。
戦う時は一撃で倒すか、技を封じられても大丈夫なように養生してから攻撃することが必要だよ」
「そうだなあ……噛みつく攻撃がいきなり使えなくなった時は驚いたよ」

ブルンゲルはイッシュ地方でも厄介なポケモンと称されているが、その理由は『呪われボディ』という特性にある。
攻撃を受けた際、その技を一時的に封じてしまうのだ。
弱点となる技を複数覚えていればまだどうにかなるが、そうでない場合は決定打を与えられるタイミングが遅れ、相手に致命的な反撃を許すことになりかねない。
実際、ハーディはブルンゲルの弱点を突ける技がなくなってしまった……これは相手の特性をしっかりと把握しなかった自分の失態だと、アカツキは素直に認めていた。

(チェレンは進化形の相手にも勝ってたし、イッシュ地方のポケモンのことをちゃんと理解してるんだよなあ……)

チェレンもまた、行きずりのトレーナーとバトルを行ったのだが、シママのボルトとミジュマルのルリスはそれぞれ進化形の相手に見事勝利した。
チェレンの采配が光っていたのも、対戦相手のポケモンに関する知識があったからだろう。

(イッシュリーグに出るんだから、旅に出たばかりとか他の地方から来たなんて言い訳はできない)

今すぐには無理でも、遅くともイッシュリーグが開催される頃までにはこの地方のポケモンについて通り一遍でも理解しなければならない。
やはり、トレーナーとしてのレベルアップは急務のようである。
戦いの矢面に立つポケモンたちは、トレーナーの指示を信じて戦うのだ。言い訳に終始し、いつまでも足踏みばかり続けている姿を見れば、とてもその指示を信じて戦おうとは思わないだろう。
だからこそ、しっかりと頑張らなければ……気張るアカツキの表情に感じるものがあったのか、チェレンは口の端に笑みを浮かべながら言葉をかけた。

「アカツキ。僕のポケモンは大丈夫だけど、君のポケモンは疲れているだろう。
宿の確保も兼ねて、ポケモンセンターで看てもらおう」
「そうだな。行こう」

チェレンの言葉に頷き、アカツキはサンヨウシティ方面へと歩き出した。
周囲では相変わらず、バトルの華が咲いている。
思わず足を止め、見惚れてしまいそうになる高度なバトルがあれば、互いにポケモンへの指示が空回りしているバトルもあったり……十人十色の戦いの光景を目の当たりにしながら、アカツキは思案をめぐらせていた。

(今日はポケモンセンターに泊まっていくとして、回復が終わったら何度かバトルしておきたいな。
特に、シャスはもっとバトルに慣らしておいた方が良さそうだし)

サンヨウジムのジムリーダーは、イッシュ地方最強……ともすれば、実力差は如何ともしがたいだろうが、それでも一番バトルに慣れていないシャスのレベルアップを重点的に行っておきたい。
ソロはゾロアークに進化できるだけの力があるし、ハーディも進化形だけあってバトルには慣れている。
シングルバトルもいいが、できればダブルバトルやトリプルバトルでソロやハーディがどのように戦うのか、傍で見られる機会があればいいが……考えながら歩くうち、ポケモンセンターにたどり着いた。

「あたしは外でグルーミングしてるね」
「分かった。ナナの部屋、一緒に押さえておくよ」
「ありがとう」

グルーミングはポケモンの体調管理に欠かせない……ブリーダーとしての考えを察してアカツキが申し出ると、ナナは笑顔で頷き返しポケモンセンターの敷地に繰り出していった。
揚々としたその背中を見送り、アカツキとチェレンは中へ。
ロビーは吹き抜けになっており、陽光に照らし出された屋内は開放感すら漂わせている。
居心地の良さを感じながら、ロビーの中央にあるカウンターへ向かう。

「ジョーイさん、ポケモンの回復をお願いします」
「はい、分かりました。少々お待ちくださいね」

ジョーイは見慣れた笑顔で差し出されたボールを受け取り、背後の回復装置にセットした。
併せて一泊したいことを告げると、すぐに手続きを済ませてくれた。
カードキーを受け取り、前面ランプの点滅を合図に装置が稼働したのを見届けて、カウンターに程近いベンチに腰を下ろす。
ポケモンたちの回復が終わるまで、少しゆっくりするか……そう思って深く背をもたれたところで、チェレンが話しかけてきた。

「明日にはサンヨウシティに到着できると思うけど、ジムに挑戦する気持ちは変わらないのかい?」
「もちろん。最強のジムリーダーといきなりバトルできるんだから、楽しみで楽しみで。
それはそうと、サンヨウジムのジムリーダーってどんな人なんだ?」
「そうだね……一言で言うのは難しいかな。『人たち』って言った方が正しいから」
「人……たち?」

目睫に迫ったジム戦に息巻くアカツキだったが、チェレンの言葉に引っかかりを覚え、首を傾げた。
ジムリーダーを『人たち』と呼ぶことがあるのか……ジムの関係者だけに、なおさら疑問に思うのだろう。

「あれ、知らなかったのかい? サンヨウシティのジムリーダーは……あっ」

敵を知り、己を知れば百戦危うからず――すでに調べがついていると思ったのだが、ぶっつけ本番で挑むつもりだったらしい。
先入観を持たずにバトルに臨みたいと考えているのだろう。真正面から戦いを挑もうとするあたり、アカツキらしい。
ただ、ジムリーダー『たち』について話すくらいなら大丈夫か。聞きたくなければ耳を塞ぐなり言葉を遮れば済む話だ。
続きを話そうとした矢先、チェレンは息を呑んだ。

「…………?」

入口に顔を向け、ハッとしたような表情を浮かべるチェレンを見て、アカツキは彼の視線を追った。

(……誰だろう。なんか、変わった格好だけど……)

左右に開かれた自動ドアを抜け、ロビーに入ってきたのは変わった格好をした女性だった。
年の頃は二十歳すぎか。顔立ちは端正で、眼鏡も相まってどこか知的な雰囲気すら感じられる。
しかし、短く切り揃えた紫の髪はおかっぱ頭と、暗い色彩の服に身を包んでいるせいで、どこか『変わった人』という印象を与えてしまう。
そんな彼女は肩から小さなバッグを提げ、左右の腰に三つずつモンスターボールを差している。
変わった格好ながら、トレーナーと考えれば珍しくもない気はするが……
アカツキとチェレン、二人の視線に気づいたようで、女性の顔に笑みが浮かぶ。

「あら、チェレン君じゃないですか。久しぶりですねえ、元気してました?」

どうやら、チェレンの知り合いらしい。
人懐っこい笑みを浮かべる彼女に向けた表情は、いつにも増して柔和なものだった。
歩み寄ってきた女性に小さく会釈して、言葉を返す。

「お久しぶりです。シキミさんもお元気そうでなによりです」
「アララギ博士から旅に出たと聞いてましたけど、こんなところでお会いするなんて奇遇ですねえ。
ところで、そちらの子はチェレン君のお友達ですか?」
「アカツキっていいます。初めまして」

話しかけられ、アカツキは立ち上がって自己紹介した。
親しき仲にも礼儀ありとは言うが、初対面の相手にこそ礼を失することがあってはならない。第一印象、とはよく言ったものだ。
礼儀正しい少年に好印象を抱いたのか、彼女――シキミは口元の笑みを深めた。

「シキミです。トレーナーと小説家をやってます。よろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします」

どちらが本業かは分からないが、トレーナーとして各地を旅して回りながら、旅の中で見聞きしたことや感じたことを書き綴っているのだろう……シキミの自己紹介を受け、アカツキはそう思った。
互いに名乗ったところで、チェレンが問いかけた。

「ところで、シキミさんはどうしてここに?」
「今は特に忙しくもないから、あちこち旅してるんです。
旅の合間に、トレーナーとポケモンのふれあいを小説にしてるんです」
「トレーナーとポケモンのふれあい?」
「ええ。冒険モノも嫌いじゃないですけど、やっぱりトレーナーとポケモンが助け合う話の方が好きなんですよね」

曰く、これまでに出版した十数冊の小説のうち、大半は旅先で目の当たりにしたトレーナーとポケモンのふれあいをもとにしているそうだ。
夢を信じて疑わない純真無垢な子供を思わせる、輝いた表情。
アカツキは彼女が本当に好きなことを仕事にしているのだと感じて、羨ましいと思った。

(好きなことを仕事にできるのって、いいなあ。
でも、二つ一緒にって難しいよな……本当にすごい)

トレーナーとしては、自身とポケモンの鍛錬を怠るわけにはいかない。
小説家としては、旅先で仕入れたネタを元に執筆しなければならない。
二足の草鞋を履く――それが口にするほど簡単でないことはアカツキにも理解できていたが、シキミの表情を見る限り、大変だとは思っていないようだ。

「……って、そんな感じに旅をしてたんですけど、道端で一休みしてたらチョロネコに万年筆を取られちゃいまして。
あの万年筆がないと仕事が捗らないんですよね……でも、そのチョロネコったらとてもすばやくて。あっという間に逃げられちゃいました。
それで、ジョーイさんならこの辺りのポケモンのことを知ってるんじゃないかと思って立ち寄ったんですよ」

大事な商売道具を取られて、悠長にしていられる状況ではないだろう……チェレンはそう思いながらも、心配に及ばないであろうことも同時に理解していた。
一方、アカツキは聞いたことのないポケモンの名前を受けて、すぐにポケモン図鑑で検索を始めた。

『チョロネコ。性悪(しょうわる)ポケモン。
相手を可愛い仕草で油断させ、その隙に持ち物を奪う。
気に入らないことがあると爪を立てるなど、気性の激しいポケモンでもある』

画面に映し出されたのは、紫の毛並みが鮮やかな猫に似たポケモンだった。
分類では『性悪』などと言われているが、見た目の可愛さを武器に相手を誘惑するのだろう……人もポケモンも見た目にはよらないと言うことか。
アカツキがポケモン図鑑と睨めっこしているのを尻目に、チェレンはシキミに訊ねた。

「でも、シキミさんがその気になれば、チョロネコなんかに後れを取ることなんてないと思うんですけど……」
「そうですねえ。
私のポケモンたちもそうしたいみたいんですけど……辺りのポケモンたちをびっくりさせちゃいますから。
ここは穏便に済ませた方がいいかなあ、って思って」
「なるほど……」
「それに、他の人が被害を受ける前に、ジョーイさんに相談しておいた方がいいと思うんですよ。
そうしておけば、少しは対処もしやすいでしょう?」
「確かに……」
「そういうわけですから、少し待っていてくださいね」

追い詰めすぎるほどに事を荒立てれば、余計に被害が大きくなりかねない……そう考えているのだろう。
力づくでさっさと解決したがっているポケモンたちを宥めているのだろうから、彼女なりに苦心しているに違いない。
カウンターでジョーイに話しかけるシキミ。
……と、アカツキはそこでようやく図鑑を閉じ、顔を上げた。
シキミはジョーイと親しげに話しているが、チェレンとも似たような調子で談笑していたような気がする。

「シキミさんとは知り合い? 結構親しげだったけど」
「ああ。カノコタウン出身で、ナナのお母さんとも仲がいいんだ。僕たちも子供の頃から良くしてもらっていたよ」
「そうなんだ……」

カノコタウンは『タウン』と名を冠していても、規模としては村に近い。同郷ともなれば、親しげに話ができる間柄であっても不思議ではない。
もしかしたら、カノコタウンに住んでいた頃に自分も会ったことがあるのかもしれない……思案するアカツキに、チェレンがシキミと話した内容を伝えた。

「シキミさんはチョロネコに取られた万年筆をどうにかして取り返したいらしい。
悪くは言ってなかったけど、可愛さ余って憎さ百倍……くらいには思ってるのかもしれないね」
「さっき図鑑で調べたけど、実際どんなポケモンなんだろう。チェレンは会ったこととかあるのか?」
「いや、ないよ。カノコタウンの周辺には棲息していないから。
付け加えるなら、おばさんの研究所にもいないんだ」
「そっか……」

イッシュ地方のポケモンに関する知識をもっと深めたい……先ほどのバトルで知識不足を痛感したアカツキが、そのように考えるのは至極当然と言える。
強い意志の光を視線から感じ取り、チェレンは小さく息を吐いた。

「アカツキ。もしかして、シキミさんについていきたいなんて考えてないよね?」
「そうだけど……どうかした?」
「シキミさんなら一人で解決できるよ。むしろ、僕たちじゃ足手まといになるのが関の山だよ」
「……? なんかよく分かんないけど、足手まといにならないようにすればいいじゃん。
シキミさんがどんなポケモンと一緒にいるのかも気になるしさ」
「…………まあ、それもそうか」

訊ねるだけ野暮だったか。チェレンの口調は苦々しげながら、アカツキの返答に納得した様子だった。
彼女が『どんな』トレーナーか知らないとはいえ――いや、知らないからこそあっさりと『足手まといにならなければいい』と言ってのけるのだ。
それも、シキミがどんなポケモンとどんな戦い方をするのか見てみたいという理由が一番だろう。
確かに、今の自分たちには勉強になることが多いかもしれない……その話に乗ってみるのも一興か。
胸中で打算を働かせていると、シキミが戻ってきた。

「チョロネコの行き先が分かったんですか?」
「西に三十分ほど向かった森の中に棲んでるみたいですよ。
早速、万年筆を取り返してきますね。使い慣れたものじゃないと、なんだか落ち着かないんですよねえ」

アカツキの問いに、笑顔で頷き返すシキミ。
居場所さえ分かれば、万年筆を取り戻すなど造作もないという自信が滲んでいる。
それなら、邪魔にならないよう気をつければ同行させてもらえるかもしれないと思い、アカツキは切り出した。

「シキミさん、オレたちも一緒に行っていいですか? 邪魔にならないようにしますから」
「ええ、いいですよ」
「あ……ありがとうございます!!」

断られたら、仕方がない……無理についていくわけにもいかないと思っていたが、シキミはあっさりと承諾してくれた。
多少は渋るのではと考えていただけに唖然としたものの、一転、アカツキの表情がぱっと輝いた。
彼の明るい表情に満足げな笑みを向けるシキミだったが、チェレンにも話を振った。

「チェレン君はどうします?」
「シキミさんさえ良ければ、ぜひお願いします。
……そういえば、ナナも一緒なんですよ。三人で旅に出たんです」
「あら、そうなんですか。じゃあ、三人一緒に行きましょう」
「分かりました。ありがとうございます」

目の前の二人だけでなく、ナナも一緒とは……カノコタウンの二人とは久々の再会である。
積もる話もあるが、それよりもシキミには初対面のアカツキが気になっていた。

「アカツキ君でしたね。あなたとは初対面ですし、いろいろとお話しさせてくださいね」
「はい、よろしくお願いします」
「それじゃあ、ナナちゃんも誘って行きま……」
『ちょっと、なにすんのよーっ!! あ、こら、逃げるなーっ!!』

期待に胸を膨らませつつも話を切り上げ、三人でポケモンセンターを出ようとした矢先。
自動ドアを突き抜けて、ナナの悲鳴が響いた。

「ナナ……!?」

慌ててポケモンセンターを飛び出した彼らが目の当たりにしたのは、いきり立ち地団太を踏むナナと、彼女の傍でぐったりしているブータとラミー。
そして――ポケモンセンターに背を向けて走り去っていくチョロネコの姿だった。






To Be Continued…

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